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群馬県×eスポーツの可能性。全国初の「U19 eスポーツ選手権」開催と、広がる未来の教育

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2020年11月22日、学校の枠にとらわれない、19歳以下の国内最強チームを決定する全国初となる「第1回 U19eスポーツ選手権」決勝大会が開催されました。そのタイトルは、世界のプレイ人口が1億人を超える「リーグ・オブ・レジェンド」。

日本全国から19歳以下の強豪プレイヤーたちが群馬コンベンションセンター「Gメッセ群馬」へと集合し、白熱の攻防に会場は大いに盛り上がりました。同時に配信されたYouTubeライブにも多くの視聴者が訪れるなど、日本のeスポーツの将来を牽引する若者たちに視線が集まった記念すべき1日だったといえます。

今、群馬県がここまで力を注いでeスポーツを推進しているのはどうしてなのでしょうか。北米教育eスポーツ連盟(NASEF)eスポーツ戦略チーフであり、「湯けむりフォーラム」内のカンファレンスにも登壇した内藤裕志さんと、群馬県産業経済部戦略セールス局eスポーツ・新コンテンツ創出課 齊藤課長にお話を伺いました。

内藤裕志さん(写真左)、齋藤課長(写真右)

より複雑になる社会。「ソフトスキル」を育てるために

─eスポーツと教育の関係を教えてください。eスポーツを通すことで、どんな能力が身につくのでしょうか。

内藤さん:eスポーツで身につくスキルは大きく4つに分けられます。1つ目は、戦略的思考能力です。目的から逆算してアクションを考える力です。例えば、指定時間に集合場所へ到着するためには何時に家を出なければならないか、などです。2つ目は社会的な適応能力です。対戦相手や協力する仲間がいるということは、自分ではコントロールできない部分に直面することになりますよね。そして3つ目は身体知です。思考を行動に瞬時に結びつける力です。最後にコミュニケーションスキルです。これは言わずもがな、目的を達成するための共感力といったところでしょうか。

これからの時代は、いままで以上に予測不能で先が見えません。未来のプレイヤーとなる若者たちに必要なのは、自分で判断しながら共感を得て、同じ目的意識の中で協働して未来を切り開いていく力です。こういったソフトスキルは、新型コロナウイルスの感染拡大により状況がより複雑になり、さらにその能力の重要性を明らかにしたと考えています。

優勝チーム「KGP N1」代表・ぷりも選手(写真左)と、準優勝チーム「Pi-Po-DA!YOEEOOOON!Gaming」代表・rre選手(写真右)。SNS等で集めたメンバーは初対面も多かったそうだが、両チームとも見事なチームワークを見せた

齊藤課長:群馬県としても、eスポーツの特性は「ひとづくり」に貢献する可能性があると考えています。この点について、北米教育eスポーツ連盟(NASEF)さんでは、eスポーツを学習や教育を促進するための効果的ツールとして活用する「Scholastic Esoprts」という考え方による取り組みが進められており、この中で、eスポーツがコミュニケーション能力やSTEM能力の向上に貢献することが、eスポーツ先進国であるアメリカの大学で報告されています。こうしたことから、この秋には北米教育eスポーツ連盟さんと連携し、eスポーツのひとづくり面からの活用をテーマとしたカンファレンスも実施し、この中でさらに議論を深めたところです。

群馬県では新・総合計画ビジョンで「始動人」の育成を掲げたところですし、eスポーツを教育のツールとして活用する取り組みとは合致していると考えています。

子どもたちの可能性を開く「ゲーム」というコンテンツ

─先進的な教育ツールとしては「プログラミング」もありますが、ゲーム依存症を危惧する声もある中、eスポーツの利点はどのようなところにあるのでしょうか。

内藤さん:大きな理由は、ゲームというコンテンツの圧倒的な訴求力の高さです。ソフトスキルを向上させるためには興味を持って取り組むことが大前提なので、子どもたちが自ら情熱を持って学びを獲得していくことができるゲームは非常に効果的なツールであると考えています。

また、eスポーツとは言っても強さを競うだけではありません。たとえば「マインクラフト」というゲームを使った競技では、お題に沿った建築物をゲーム内で建てることが目的になります。目的達成のための協働がソフトスキルを伸ばすという点で「競技」の側面は重要ですが、その一方、「一位になったから凄い」で終わらせてはいけないのです。

人を育成する際は、技術の向上だけでなく広い意味での学びをとらえる必要があります。実はNASEFが目的としていることも、「eスポーツを広めること」ではなく「様々な方法で子どもたちの可能性を開くこと」であり、その教育的ツールとしてeスポーツを利用しているだけなのです。

齊藤課長:eスポーツの推進と併せて、依存対策にもしっかり取り組む必要があると考えています。健康福祉担当部局を中心に各方面と連携しているほか、2020年9月には県の担当者向けに専門家を講師に招いたオンラインセミナーを開催しました。eスポーツはプレイする人も観戦する人も楽しめる魅力的なコンテンツであるからこそ、その教育的効果を最大限発揮できる環境をつくりたいと考えています。

内藤さん:一番単純な対策は規制を作ること、つまりルールを決めることです。ゲームだけでなく一般的なスポーツであっても、ルールがあるから面白いわけですしね。またeスポーツを使って課題解決をする方法を考える時間を持つなど、ただゲームをするだけではなく、取り組みをきちんと社会と繋げることも重要です。

地域や教育機関と連携した展開を

─NASEFとしては、今後どのような事業を展開していく予定ですか。

内藤さん:色々と取り組みを行っている学校、現場もあれば、どうしようかと保留にしているところもあります。ですから、まずはネットワークをつなげてコミュニティをつくることから始めなければなりません。日本で正式な授業として入れ込むことはまだ難しいですが、教育現場の中にもう少しeスポーツを浸透させたいですね。

そのためには、生徒たちの活躍の場を作ることも大切です。今のところ全国規模の大会が多いですが、小規模なリーグをつくったり、コンテスト形式の競技を実施したり、学校や地域とうまく連携して進めていきたいですね。

─事業展開を図る上で、これから連携していく学校や行政に対して期待することは何ですか。

内藤さん:やはり、ゲームを拒絶しないでほしい、ということですね。eスポーツを「プロゲーマー育成」のようなピラミッドを上から引っ張る方向性ではなく、子どもたちの選択肢を増やしたり、可能性を広げたりするためのものとして考えてみてください。

齋藤課長:今後もNASEFさんと連携しながら、群馬県版Scholastic Esportsに取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いします。

決勝大会の様子はこちら

登壇者

内藤 裕志 北米教育eスポーツ連盟日本本部統括ディレクター

スポーツ用品物流企業を経て、渡米。米国大学スポーツ経営修士課程を修了後、ロサンゼルスを拠点にスポーツエージェント企業にて、選手マネジメントや新規事業開発を担当。日本帰国後は、PR会社にてスポーツビジネス事業担当を経て、エンターテイメント産業やエリア開発領域などで、スポーツIPを活用した事業開発に従事。
北米教育eスポーツ連盟に参画、2019年に日本支部設立。長年のスポーツビジネスの知見を活かし、eスポーツを通じた次世代の可能性の拡大と成長の促進に取り組む。