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全国群馬県人図鑑-グンマーズ–vol.2大澤直美さん×石田陽介さん【前編】

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 全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、県外在住の県ゆかりの出身者、先輩方をお招きして現在のお仕事の話はもちろん、県内で過ごした学生時代の思い出、地元への熱い思いなどを丸ごとインタビューする新企画。昨年12月22日、「グローバル」をテーマにオンライン配信された第2回のゲストは、ニューヨーク群馬県人会を主宰するグローバルキャリアカウンセラー・大澤直美さん(ニューヨーク在住)と、フランスでレストランマネージャーとして働いた経験もあるソムリエの石田陽介さん(鎌倉市在住)。

 お二人の母校である県立高崎女子高校と県立高崎高校両校から生徒会長・副会長を務める3人の現役高校生も参加し、世代や居住地を越え、互いの思いや人生が交錯し合うほのぼのとした会となりました。ダイジェスト版を前編・中編・後編に分けてお届けします。

群馬からNYへ、パリへ

MC・西部沙緒里(以降、西部) クリスマス間近な年の瀬、数多なスケジュールをかき分けてここに集ってくださった皆さん、本当にありがとうございます! ぜひ今夜は盛り上がって楽しく過ごしていただければ、と思います。第2回はグローバルをテーマに、お二人のゲストをお招きしています。県の方からお二人の母校である県立高崎高校、県立高崎女子高校にもお声がけいただき、3人の現役高校生も参加してくださっています。

世代の違う皆さんがこの場に集えていることが本当に尊いですし、こうやって群馬に住んでいてもいなくても、群馬に思いのある人同士が縦に、横につながるきっかけになればいいなと思っています。では、まずはゲストの自己紹介から。石田陽介さんから簡単な自己紹介をお願いできますか?

石田陽介(以降、石田) はい。では、自分の活動を象徴的に伝える写真を使って自己紹介していきます。こちらは2018、19年頃、私がパリの日本料理店の店長兼ソムリエ兼利き酒師をしていた時の写真で、お客さまに日本酒の説明をしているところです。2020年まで3年半ほどの決して長くはないヨーロッパ生活の中で、食にこだわりのあるフランス人や日本料理に興味のあるEU圏内の方々が笑顔で帰っていただけるよう、精一杯務めてきました。

石田 こちらは昨年の写真ですが、とあるご自宅で料理を作って振る舞っているところです。ヨーロッパで日本食やお酒のすばらしさを伝えてきましたが、帰国後はそうした経験を日本にフィードバックすることを目的に、料理を作ったり、ソムリエらしいお酒を提供したりしています。

ヨーロッパで日本食のここがすばらしい、日本酒はこんなふうに進化していくといいのでは、などと教えていただいたことを、たくさんの方に伝える活動をメインに行っています。

西部 ありがとうございます。この2枚の写真だけでも聞きたいことがたくさん出てきましたね。続いて大澤直美さんお願いします。

大澤直美(以降、大澤) はい。私はNYキャリアアカデミーという会社の代表として、簡単に説明すると“グローバルに生きる(生きたい)人々の支援”をしています。今日は高女の学生さんもいらっしゃるということで、左の写真は高女のグローバル研修です。今はコロナで中止になってしまいましたが、毎年高女からニューヨークに40人くらい来ていました。

こんな感じで団体向けの国際研修を提供したり、また真ん中のキャリアフォーラムは、こちらに留学をしている方の就職支援です。留学すると国際的な視点がすごく養われるので、そういった視野の広さを活かした仕事を見つけるサポートをしています。右は個人の学生さんへの留学支援です。

大澤 続きましてこちらはライフワークといいますか、ボランティアで、ニューヨーク群馬県人会という市民団体を15年以上運営しています。左は3年ぶりの総会ですね。コロナの感染拡大でしばらく対面で会うことがかなわなかったのですが、昨年3月に規模を縮小して開催しました。

右は「ジャパン・デー・イン・ニューヨーク」。今年初めて開催されたジャパンパレードで、ニューヨークの総領事館から群馬県人会もぜひ参加してほしいとお声がかかり、みんなでぐんまちゃんTシャツを着て参加しました。沿道に出たらすごい人で、何万人ものニューヨーカーに日本と群馬を応援していただき、とても素敵な経験でした。

大澤  事前の打ち合わせで高校時代の写真をお願いされたのですが、今ニューヨークに住んでいますので、手元にあるのはこれだけでした。左は椎樹祭、高女の文化祭ですね。本部の運営を一生懸命やっていた時の写真で、真ん中で手を挙げているのが私です。写真にマーカーで文字を書くのが流行っていた時代でちょっと恥ずかしいですが(笑)。

右は高校の時からアメリカ留学をしたいなと思っていたので、その時の作文の写真です。以上です。

自転車2台で通った高校時代

西部  ありがとうございます、お二人とも。興味津々です。学生のお三方も聞きたいことが出てきていることと思いますが、いよいよここからクロストーク入っていきたいと思います。

この企画は、群馬にゆかりがあって県外に住んでいる大人と現役の学生さんをつなげることも趣旨の一つですので、まず1問目はお二人が県内で過ごした学生時代の話をそれぞれ聞いてみたいのですが、どうでしょう?

 

石田  私から申し上げます。中学時代はわりと幸せにふわふわ、ぬくぬく過ごしていましたが、高崎高校で入部した柔道部で非常に厳しく鍛えてもらいまして、引退するまでの2年半、柔道に明け暮れました。当時の私は身長163cm、体重60kgほどで、柔道をする人間としては相当小さかったのですが、私はどうも勝敗より、会場の皆さんの笑顔が見たかったようで、あえて身長180cm体重100kgを超えるような方々が出る無差別級に挑戦したりしていました。

小さな私が登場すると、会場が味方になって応援してくださる。そんなふうにスポーツマンというよりエンターテイナーのような感じで高校時代を過ごしていました。引退後は柔道で培った有り余る体力、エネルギーを勉強に集中させたらどこまで伸びるか挑戦をしまして、結果一浪しましたが目標だった京都大学に入れました。

西部  知らなかった、陽介さん。柔道やっていたんですね! 続いて直美さんお願いします。

大澤  私は群馬県の松井田町(現・安中市)というすごく自然豊かな場所で育ちまして、子どもの頃はザリガニを釣ったり、虫を採りに行ったり、自然と一体になって過ごしていました。高崎女子高校時代は、学校まで結構遠かったなぁと今では思うんですけど、自宅から松井田駅までと高崎駅から高校まで、自転車を2台使って通学していました。

もともと勉強でも何でもがんばりたい、楽しみたいと思う性分で勉強も一生懸命やりましたし、部活はダンス愛好会に入っていました。みんなで目標に向かって全力で取り組むことがすごく好きで、文化祭実行委員長として高女を盛り上げました。

西部  2年生の時ですか?

大澤  そうですね。椎樹祭は2年に一度の開催なので2年生の時から本格的に動いていきました。ただ、ずっと留学というのは頭の中にあって、1年の時から海外に視野を向け始めていました。

松井田で虫なんか追いかけていましたから、平凡で幸せな群馬は大好きでしたが、世界には恵まれない環境の人たちもたくさんいる。群馬は大丈夫だから、私は世界に出ようと思って、高校2年の時にアメリカ留学を決意しました。

広い世界で二人が見つけた仕事とは?

西部  なるほど。次の質問につながるお話なので、そのまま直美さんに2問目を聞きたいのですが、そこからお二人共に県外に出て、進学・就職して、今のお仕事に続くまでのヒストリーを教えてもらえますか? 

大澤  その後は留学してニューヨークの大学で国際政治を学んで、今はもう難しいのですが、在学中に国際連合本部でインターンシップも経験できて、実は国連から内定までもらって自分が希望すれば夢がかなう状況までいきました。でも、ニューヨークで過ごした4年の間に心境の変化があって、それまでは群馬から世界を見ていたのですけど、実際に世界の中心とも言われるニューヨークに身を置いてみたら、今度は日本はもっと国際的に強くなれるし、なってほしいと思う気持ちの方が強くなってきたんです。

当時アメリカには3万6000人くらいの日本人留学生がいたのですけど、優秀で、国際的な視野を育んだ彼らが帰国した時、適切な就職先をあっせんするようなブリッジが確立されていないことがすごくもったいないなと思ったんですね。なので、そのシステム作りというと大げさですが、「日本とアメリカをブリッジングするような仕事をすることで日本に貢献したい」という思いをもとに始めたのが、現在の仕事です。

NY研修に来た、群馬の高校生向けの講演会で

西部  何ともすごいドラマですね! 陽介さんは、どんなヒストリーですか?

石田  大澤さんは高校生の頃から信念を持って、ブレずに人生を進まれているのがすごいなと思います。私は一見回り道に見える道をたどっています。大学では地理学を専攻していました。地理学ではいろんな国や地域の風土が育んだ文化や生活様式を学びますが、学生時代に海外に行きまして、音楽のように国境を越えるダンスのすばらしさに目覚めて、20代はほぼ丸々コンテポラリーダンスの振付家兼ダンサーとして、舞台を中心に生活していました。

でも、舞台が大きくなるにつれてお客さんとの関係が希薄になり、舞台と客席の間にガラスの壁でもあるかのような違和感を感じるようになりました。その頃、今の仕事に出合いました。

お客さま一人ひとりの楽しみや喜びのために自分の身を捧げる、ではないですけれど、「自分のすべてを注ぎ込む飲食の仕事は本当に素敵だな」と思って、それからソムリエ兼サービスマンの道をずっと歩いてきました。

西部  お二人とも本当にドラマチックですね〜。スケールが大きい! お二人の共通項は今日のテーマでもある“グローバル”だと思うんですけど、世界をまたにかけて活躍されるまでのお二人の人生の紆余曲折にとても興味をひかれます。加藤さん、小林さん、大木さん、聞いてみたいことが出てきた方はどうぞ。

小林怜奈(以降、小林) 大澤さんが「勉強が好き」とおっしゃっていて、自分とは真逆だなと思ったのですが(笑)、一番苦手な教科はどうやって勉強しましたか?

大澤  なるほど、そうですね、苦手という意味では数学がそんなに好きではなかったですね。こんなに数学をやるのは学生時代だけだから、脳のトレーニングだと思って取り組んでいました。でも、これはあくまで私の考えで、あんまり参考にならないかもしれない(笑)。

ただ、どんな教科も世界の仕組みをいろんな切り口から解いているとは感じていて、私はそういう世界の目に見える姿、目に見えない姿、全部ひっくるめて理解することが好きだったから、勉強好きになったのかなって。

西部  世界をより深く知るためには勉強が大事だと、直美さんの中ではつながったんですね!

大澤  そうですね。学生時代に一生懸命勉強しておくと絶対損はしないと思います。

西部  小林さん、いかがですか?

小林 そういう考え方があるんだって気づきました! いつも受験受験で教科を多面的に見るとかあまり意識したことがなくて…。でもこれからは、勉強に対して違う考え方が持てそうです。

西部  他にもう1問ぐらい質問ありますか? 加藤さんお願いします。

加藤遥大(以降、加藤) 石田さんに質問です。ダンスが国境を越えると確信したきっかけは何だったんですか?

石田  大学1年か2年生の時、トルコに旅行したんですよ。トルコ領の世界地図に載っていない北キプロスという国に行ったのですが、そこで英語も話せない、当然日本語も話せない方たちがダンスをするために集まる場所に行った時、心の底からわかり合える感じがあったんですね。その時にダンスはすごく可能性があると思いました

加藤 あとコンテンポラリーダンスって、どういうダンスですか?

石田  クラシックバレエとか歴史のあるものに対して、現代に入ってモダンダンスが生まれて、さらに現代に近づくほどどんどんルールが壊されて何でもありになったダンスがコンテンポラリーダンスです。コンテンポラリーは「現代」という意味で、モダンより新しいので、何をやって良いですよというような表現ですね。

加藤  ありがとうございます。

西部  加藤さん、ありがとうございます。ゲストお二人とも活動領域が広くていろんな世界を経験しているから、引き出しが多いですね。掘り出しがいがあるなぁと思いながら聞いていました。

(中編へ続く)

 中編では、グローバルな視点から見た群馬の魅力が話題になります。また、お二人の行動力の源泉ともいえる「しなやかなマインドセット」の秘訣とは? 豊かな人生経験を踏まえた回答は、あらゆる世代の心に響くはず!

(ライター:岩井 光子)

登壇者

大澤 直美 ニューヨーク群馬県人会主宰

1983 年生まれ。高崎女子高校卒。
高校卒業後渡米、NY で大学進学。米CCE認定グローバルキャリアカウンセラーとして2万人以上を支援。

(株) マイナビ米国法人代表をへて2016 年、国際人材育成の総合コンサルティング会社・NY キャリアアカデミーを設立、留学支援などを手がける。英語は独学、TOEIC990点満点。絵本やクールジャパン関連の翻訳も多数。「ニューヨーク群馬県人会(会員185 名:2022 年時点)」会長を務め、ふるさと群馬活性活動はライフワーク。

年間約2カ月を群馬で過ごし、県内の若者育成プロジェクトにも多数従事。2013-14 年、上毛新聞オピニオン委員。2018-19 年、「上毛かるた」英語版改定アドバイザーなど。3 児の母。

石田 陽介 ソムリエ

1979 年生まれ。高崎高校卒。
大学卒業後、振付家・ソムリエとして活躍。2010 年よりソムリエに専任し、フォーシーズンズホテル、星野リゾート、オリエンタルランドにてソムリエやマネージャーとして経験を重ねる。星野リゾートのレストラン「ユカワタン」勤務時から日本酒の魅力と可能性を強く感じ、国際唎酒師、WSET Level 3 Sakeの資格を取得。2017 年に欧州の多くの人々に日本酒の魅力を伝えるために渡仏。パリではRestaurant ENYAAにてマネージャーを務め、2021年に帰国。現在は株式会社ノットワークの代表として発酵デパートメントへのコンサルティング等、ガストロノミーや芸術文化に関わる事業を展開。

西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO

前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。

加藤 遥大 高崎高校2年(当時) 生徒会長

小林 怜奈 高崎女子高校2年(当時) 生徒会長

大木 心奏 高崎女子高校2年(当時) 生徒会副会長