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全国群馬県人図鑑-グンマーズ-vol.6 大塚友広さん×工藤詩織さん【後編】
全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、さまざまな分野で活躍する県ゆかりの先輩方をペアでお招きし、お二人の母校の現役高校生も交え、学生時代の思い出や故郷への熱い思いを聞き出していくトークセッション。
後編は恒例質問&現役高校生たちへの熱いメッセージでクライマックスへ。「レールなき時代は自分の心にもっと素直に生きよう。周りに流されず、自分の好きを突き詰める人生こそ、最も幸福度も高いはず」。大塚さんのシンプルな人生観と工藤さんの「成功を焦らなくていい」というメッセージは、学生にも大人にも力強く響きました。
「上京しても接点持ちやすい」
西部 ぼちぼちクロージングして行きたいんですけど、もう一つどうしても聞きたいのが群馬のことです。二人ともよく帰省していて、詩織さんは地域のお豆腐のことを調べているし、大塚さんは県内でゴルフのパターを作っているので、東京に暮らしながらも群馬と接点持っています。
今日参加してくれている高校生のお三方が群馬をどう感じているかも後で聞きたいのですが、群馬県の高校生は「群馬を誇りに思っています」とあまり言わない気がします。多分私たちの時代が一番群馬のことをディスっていた時代で、今はそこまででもないのでしょうけど、でも、やっぱり我々グンマーって群馬を誇りに思えない時期が長いと思うんです。
お二人は群馬を一度離れて、今改めて接点を持ち始めて、群馬の価値をどう見ていますか? 「群馬ぶっちゃけどうですか?」を聞かせてください。
大塚 難しい質問ですが、すごく思うのは交通アクセスがめちゃくちゃいい。それから住み良さがめちゃくちゃあるのが一番の強みだと思っていて、東京で働くにしても高崎に住んでいたら普通に通えてしまう。あとは自然環境と景色。県庁の辺りから上毛三山がきれいに見えますが、ああいう景色ってなかなかないので、そういうすばらしさはありますね。
あと、私も関わらせていただいた世界遺産の富岡製糸場。これは皆さんが大人になった時、「富岡高校出身です。富岡製糸場って知っていますか?」と切り出すだけで、すぐコミュニケーションがスタートできる。それもすばらしいことだなと私は思います。
西部 ありがとうございます。詩織さんどうですか?
工藤 私も大塚さんと同じで、まずは交通アクセスの良さ。東京から「あ、明日群馬帰ろう」ってすぐ帰れるのはありがたい。九州や北海道出身の子は飛行機を予約するところから帰省準備がスタートするので、彼女たちに比べると自分は気軽に帰って来られるので、上京してからも接点が持ちやすい。
仕事で群馬のラジオに出させてもらう時も「日帰りできます」と言えるし、あと、両親や祖父母にもよく会いに行っていたので、家族との距離感を考えてもちょうど良いというのが私の中で故郷が群馬で良かったなと思うところですかね。
西部 ありがとうございます。
地域の資源をビジネス化したい
西部 今日のゲストはお二人とも夢や構想に向けて実際に踏み出していると思いますが、「×(かける)群馬」でやり始めていること、実現したいことはどんなことですか?
大塚 (ゴルフの)パターを作り始めたのは、まさにそのスタートというか、自分の中ではある意味実証実験的なところがあって、群馬の資源を活かしてビジネス化することにもともと自分はすごく興味があります。
それこそ金属加工の工場と今やりとりしていますけど、もし後継ぎがいなくて困っている工場があるとしたら、事業承継してホールディング化して、例えば製造業とか農業とかいくつかの事業体を持って地域の資源の魅力をいかにビジネス化できるかということにはずっと興味がありますし、すごくやってみたいなと思っています。
富岡製糸場の世界遺産登録に際して観光マネージャーをやらせていただいていた時も、地域のことをどう外に知らせるか意識してやっていましたが、観光資源が顧客が求めるものに正しくアプローチできていなくて、両者の間のギャップが結構あると私は思っています。
顧客が求めるものに資源をきちんとアジャスト(適合)させていくことができれば、その商品は売れ、経済が生まれて会社が成り立つ。このしっかりした経済の原理原則を作っていくことが地域にとってプラスになると思うので、そういうことを僕は引き続きやりたいなと思っていますね。
西部 商品化はいつになりそうですか?
大塚 カバーも今作っていて、その仕上がりが多分今年の6月ぐらいになると思います。カバーなしでパターだけ売るわけにはいかないので。
西部 楽しみです。詩織さんはどうですか?
工藤 私は本当にありきたりですけど、群馬にも全国豆腐品評会で入賞しているお豆腐屋さんや群馬でしか作っていない大豆もあるので、そういうお豆腐屋さんのご紹介がいろんな媒体でできたら良いなということと、あとはまだ群馬でそれほどイベント的なことをやれていないので、お豆腐屋さんと一緒にコラボレーションして何かできたらいいなぁとは思っていますね。
西部 ありがとうございます。では、大変お待たせしました、加庭さん。感想でもコメントでも質問でもぜひお願いします。
加庭 大学の関係の話になるんですけど、自分は小さな頃から自動車を見たり、乗せてもらったりするのが好きで、できれば将来自動車関係の職に就きたいという夢を持っています。そのためには、群馬の大学に行って、それこそスバルとか県内の自動車関係の仕事を目指すべきなのか、それとも県外の大学で、群馬では学べないようなことを学んでからそういう仕事に就いた方がいいのか、二つのルートで迷ってて、大塚さんや工藤さんのように、どうすれば夢がそのまま仕事に結びつくのかをお聞きしたいです。
西部 すばらしい! まだ1年生ですよね?
大塚 いや、もうこれはズバリ群大工学部に行って自動車部でしょう。それ以外ないでしょう。
西部 答え出ちゃった?(笑)
大塚 冗談です(笑)。自動車を作りたいのでしょうか? それとも売りたい? 販売戦略やビジネスサイドに関わりたいのか、作り手になりたいのか、どちらでしょうか?
加庭 今、水素エンジンが出てきていますよね。自分は開発に興味があるので、未来の車を考えるような仕事が一番してみたいです。
大塚 なるほど。そうであれば、これからの車の開発対象になる分野の研究が強い大学に行くのが一番だと思います。そこから就職のルートもしっかりあるはずです。特に理系は。
私の中高の同級生の友人も新潟大学の大学院まで行って、今は日野自動車のトラックの自動運転の研究開発をやっています。彼は新潟大学で機械システム工学系の教授のもとで研究していたので、日野自動車を紹介されて行っています。
理系の場合は目指す研究が強いところに行くのが一番で、そうすると可能性が広がると思います。群大工学部の自動車部からスバルに行けるのなら、もちろんそれでもいいと思いますし。
加庭 ありがとうございます。
西部 学生さん3人とも立派ですね! 現役の学生さんのリアルな今に触れられるだけでも役得だと思っています。ありがとうございます。
人生のピークは作らない
西部 最後の質問です。お二人って心の壁が全然ないなと思っていて、興味がある対象物にすっと飛び込んでハードルを越えていく。それがすごいなぁと思っています。
今日は現役の学生さんもたくさん聴いてくれていますが、高校生の時って怖いもの知らずでもあるし、かたや、そんなに知らないが故に飛び込むことに躊躇(ちゅうちょ)して逡巡してしまうこともあると思うんですよ。
ふっとハードルを越えるっていうか、はじめの一歩を軽々越えていけるお二人だからこそ、はじめの一歩を越えられない時にどうしたらハードルを感じずに先に進めるのかを教えてほしいです。
工藤 私はわりと心の壁は結構ある方だと思っています、今でも。お豆腐に関するいろんなことをやっているので、大体初めての仕事が多いんですよ。だから「私なんかが…」みたいな感じには毎回すごくなっています。
でも常に思っているのは、人生ピークがあるとその後は下降していくような感覚になってしまいますよね。例えば、テレビ露出が人生のハイライトだと言われたら、その後の人生で「なんか出オチ感あるよね」とか言われるのは嫌だなって思っていて——。
だから、人生ちょっとずつ、毎年去年より1ミリでも良くなった。次の年もまた1ミリ楽しかったって、ちょっとずつでも積み重ねていけばいいんだと思っています。最初の一歩で自分の人生のピークを作るみたいなことを言わなくていいと。
西部 なるほど!
工藤 今は10代後半とか20代とかで大成功する事例もSNSではたくさん見かけますが、自分は一歩一歩でいい。それで、40歳になった時、毎年すごく楽しいなって言える人生の方が長い目で見たらもしかしたら幸せかもしれないし、そこを焦らないことはすごく大切なことかなぁと思います。
西部 すごく良いアドバイスをありがとうございます。
大塚 僕の場合は多分、みんなで楽しいことやりたい、夢のあることやりたいと常に思っているんですよ、いまだに(笑)。だからゴルフのパターを作る時もただ作るのでは面白くない。どうせなら世界ナンバー1のパターを作ろうと定義をして、みんなにそう話していきます。工場の方たちにも。それで、みんなでその船に乗って、大きな目標を目指して行こうと。
そういう思いがあるから、その先頭を切っていきたいと常に思っているのかもしれない。だから僕にとっての一歩目は仲間作りだったりするので、何かを始める時は常に、もう仲間作りをしようみたいな感覚になっているんですよ、私(笑)。
だからその分、ハードルは下がっているかもしれないですね、一歩を踏み出すことに関しては。ただ高みを目指さないと面白くない。それだけなんですよ。だからそんなに怖くないというか。
西部 素敵ですねー。
レールなき時代の皆さんへ
西部 最後に一言ずつ感想をいただいて、ぐるっと回して締めたいと思います。
横田 今日は急だったんですけど、こんな有意義な話が聞けるとは思わなくて、緊張せずに楽しい感じで今日お二人の話を聞くことができて、すごい自分でもいい経験になったなって思います。この時間でお二人から聞いた今後の人生で心に留めておきたいなと思います。本当にありがとうございました。
久保 今日は本当にためになるお話をありがとうございました。イラストと勉強の話はずっと迷っていたことでしたし、私は個人的には仕事を決めたら、途中でコロコロ変えたりせずに夢は一つに決めなきゃいけないように思っていたのですが、自分次第で転がり方は変わるし、自分の好きなことを突き詰めたら、だんだん良い方向にも向かっていくと伺って、これからの人生が楽しみになってきました。
加庭 本日はお二方、非常に大切な話を聞かせていただきありがとうございました。自分も大学進学とか、将来のことがあまり明確に思い描けていなくて不安だったことが多々あったんですけど、お二人のこれまでの人生を聞かせていただいて、自分の好きなことでここまで将来を広げることができると身にしみて感じました。本当に今日はありがとうございました。
西部 ありがとうございました。本当にそう思ってくれていたら開催冥利につきます。大塚さん、工藤さん今日は本当にありがとうございました。最後に今日参加して下さっている主に若い方々、そして高校生に対してメッセージをお願いできますか?
大塚 久保さんがおっしゃっていた話は結構本質的な話だと思っていまして、高校生だけでなく、大人も含めてですけど、もっとこう自分の気持ちに素直に生きていいんじゃないかなと思っています。
社会にはレールが敷かれているようで、今の時代固定化されたレールはほとんどなくなっているんですよね。だから自分の好きなことを追求していくっていうことが人生最大の喜びであり、最高な生き方になってきていると思うんです。
私はこういう仕事をやっているので周りにお金持ちもたくさんいるんですよ。ビジネスで何十億、何百億という資産を持っている人が普通に周りにいるんですけど、お金があることだけが幸せではまずないんですね。実はその人たちがだんだん虚しい方向に向かっていくのも生で見ているんですよ。
つまり何が一番幸せかというと、自分の好きなことを突き詰めたり、追求していく。そういう人生が僕は一番幸せな人生なんじゃないかなと思っています。皆さんが自分らしい人生を作っていくことが一番すばらしいことだと私は思っていますので、高校生くらいからそういう考え方を持てたら、人生すごく豊かになるんじゃないでしょうか。
今日は生徒会長の横田さんも来てくれましたし、富岡高校に私を呼んでいただけたらすぐ遊びにいきますのでよろしくお願いします。
西部 ぜひ(笑)先生方、お願いします。
工藤 今回この機会をいただいたおかげで私自身もどんな10代だったんだっけ? どんな20代を過ごしてきた? と写真を見返したりして、これまでを振り返りながらこれからどうやって生きて行こうか考える機会にもなってすごく嬉しかったです。本当にありがとうございます。
好きを仕事にしているということで今回呼んでいただきましたが、皆さんも自分自身の生き方に納得できているかどうかを常に自分と会話しながら、人生の舵を切っていけばいいのかなと。
私も農業をしようかなと悩んだ時期もあったり、正直すごく寄り道が多い人生なんですけど、でも、その時その時納得した方向に進んできたのが、結果的に良かったのかなぁと今回振り返って思いました。
自分の心に正直にという大塚さんの言葉に尽きると思うんですけど、そうやって皆さんが自分で自分を面白がって、どんどん素敵に仕事をしていっていただけたらいいなぁと思います。今日は本当にありがとうございました!
西部 皆さん、本当にありがとうございました。これからも面白がって生きていきましょう!
ライター・岩井光子