全国群馬県人図鑑-グンマーズ-vol.7 石村大輔さん×樺澤まどかさん【前編】
全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、県外に住む県ゆかりの先輩方をペアでお招きし、おふたりの母校の現役高校生も交え、学生生活と現在の仕事とのつながりや故郷への熱い思いを聞き出していくトークセッションです。
第7回のテーマは、「理系出身者のさまざまな“その後”」。足立区で地域密着型の生ごみ循環プロジェクトなどを進める建築家・石村大輔さん(中之条高校OB)と、理系大学院から吉本芸人のマネジャー&アイドルと異色の経歴をたどり、今はシドニー在住の樺澤まどかさん(前橋女子高校OG)が登場。トークのダイジェストを前編・中編・後編に分けてお届けします。
暮らしの気づきをデザイン
MC西部沙緒里(以降、西部) 今日は理系出身の超スペシャルなおふた方のゲストをお招きしています。建築家でいらして中之条高校、今の吾妻中央高校(※)のOBである石村大輔さんと、前橋女子高校のOGで、吉本興業のお笑い芸人のマネジャーからアイドルまで、さまざまなご経験をなさって今はシドニーに住んでいらっしゃる樺澤まどかさんです。加えて現役高校生のゲストもお招きしています。前橋女子高校、科学部で2年生の茂木梓鶴さんと松本咲さんです。
※県立中之条高校は2018年に閉校。同年に県立吾妻高校と統合し、吾妻中央高校になった。
茂木梓鶴さん&松本咲さん(以降、茂木・松本) よろしくお願いします。
西部 余談となりますが、私も前女ですので、今日は5人中4人が前女出身というすごい状況です(笑)。早速おふたりの自己紹介から。
石村大輔さん(以降、石村) 石村と申します。よろしくお願いします。写真のような設計事務所で仕事をしています。ここには写っていませんが、職人さんとも事務所をシェアしていて、図面を書く人とモノを作る人の距離を近づけながら設計ができないかなという考えのもと、仕事をしてます。
これは施工中の写真です。職人さんとこうやって現場で一緒に事務所を作っていきました。
これは僕の自宅で撮影した写真です。家庭で出た生ごみを燃やすとCO₂が出ますよね。ちょうどこの頃、コロナで暇だったので、何かできないかなって近所の人たちと勉強会をしていて、その時に「生ごみを堆肥化しよう」という話になりました。日本もそれをすると諸外国と同じくらいリサイクル率が上がるんですよね。
生ごみをどうにかしなければならない事態はいずれ起こるので、実験的にやってみようと。生ごみを堆肥化することをコンポストと言いますが、そのコンポストを自宅でやっている風景です。
個人でやっているだけでは広がらないので、僕らが住んでいる足立区の助成金をもらって近所の人たちとコンポストを始めた写真です。販売もしていて、これを観葉植物などにかけると、とても元気になります。
これは僕が飼ってる「琥珀(こはく)」という犬です。犬のゲージに立ち上がりがついてます。建築現場で出た廃材をもらってきて作ったものです。
一般に、建築現場では大体材料を捨てちゃうんですよ。これ不思議な話で、工事現場でモノをリサイクルして転用すればいいじゃんって思うじゃないですか?でも、それをやると交通費だ、人件費だ、なんやらかんやらで高くついてしまう。だから、全部みんな捨ててしまって、現場ごとに新しいモノを買うんですよね。見て見ぬふりすることもできるんですけど、僕はすごい悪いことをしてる気分になってくる。
だから、現場で「これちょっと使えそうなんでもらっていいですか?」ってもらってきて、違う何かに転用していく。微々たることですけど、何かこう自分の生活を良くしていくとか、そういうことをしていくことで、自分が設計する建物のデザインも必ず変わってくると思うんですよね。いろんなものを見て見ぬふりしてしまうと「それってそういうものだから」みたいになるんだけど、なるべくデザインに還元できたらいいなぁなんて思いながら日々設計をしています。
西部 ありがとうございます。続いて、樺澤さんお願いできますか?
受験勉強は県庁昭和庁舎で
樺澤まどかさん(以降、樺澤) はい。前女出身で、大学と大学院は早稲田の漢字がめっちゃ多い学科を卒業した感じです(笑)。その後、吉本興業に就職して4年半ほど働きました。現在はワーキングホリデーでオーストラリアのシドニーに滞在中です。
私は前女がめっちゃ大好きで、創作ダンス部だったんですが、写真はダンスしてる時のもので、上に書いてあるのは前女時代に私が生息していた場所です。ダンス部の活動場所だった第二体育館、“二体”って呼ばれる場所にずっといて、部活が終わったら、ショッピングモールのけやきウォーク前橋に遊びに行って、みんなでフードコートで食べてみたいな日々でした。一応勉強もがんばってたんですけど、勉強は県庁の昭和庁舎。あそこにフリースペースがめちゃくちゃいっぱいあるので、そこでよく一人で勉強してました。
大学時代はほとんど記憶がないんですけど(笑)、単位取るのがやっとでギリギリ卒業しました。大学院に行ってからは専攻を変えたんですよ。そこからは大学の研究も楽しくなって、大学生活も充実していたかなぁ。就活の時にやっぱりお笑い好きだなって思い出して、吉本に就職しようって決めました。
吉本時代はお笑い芸人のマネジャーをさせていただきまして、メインでとろサーモンとかまいたちのマネジャーをしてたんですけど、1年目は見習い的な感じで博多華丸大吉さんとか千鳥さんを担当してる先輩の下についたりもして、豪華な芸人さんの担当をやらせてもらえてラッキーでした。右下の1枚は結構自慢の写真です。
西部 有名人ばっかりですね!
樺澤 はい。楽しく仕事をさせていただいてました。吉本時代はマネジャーをやりつつ、吉本坂46というグループでアイドル活動もしつつ、ソロデビューもさせていただいちゃったりして、ちょっと大暴れしていた感じだったんですけど(笑)。現在はシドニーに住んでアイスクリーム屋さんでバイトしながら生計を立てている感じです。
シドニーでも運良く私のことを知ってくださっている日本人の方に出会えて、雑誌の表紙のモデルの仕事をいただいたり、あとは個人的にYouTubeやインスタで発信をしたり、いろいろやっています。
再放送のドラマに夢中だった
西部 では、そんなおふたりとクロストークをこの後進めていければと思います。今日は視聴者の中にもゲストの高校生のクラスメートや先生がいらっしゃる可能性もありますので、おふたりに記憶をひも解いていただいて、まず高校時代の話から深掘りしていきたいと思います。石村さんはどんな高校生でしたか?
石村 多分、前女は進学する方が多いと思うんですけど、中之条高校、あ、今は吾妻中央高校ですが、就職される方も多い。僕は大学進学を家庭の事情で考えられなかったので、就職すると思っていました。
やっていたことと言えば、当時心がすさんでたのかわからないですけど、放課後はすぐ家に帰ってフジテレビでやってたドラマの再放送をずっとビデオテープに録画してたんですよ。間のCMを削除してツタヤとかで借りられるぐらいのレベルに仕上げてました(笑)。
再放送なので、何年か前にやっていたドラマなんですよ。だから当時の流行りとか、今は主役で出ている俳優さんが、この時は脇役だったみたいなのをひも解くのが好きな高校生でした。
西部 なかなかお若い時にしては、マニアックな趣味でしたね(笑)。
石村 そうですね。純粋に、当時のドラマが面白かったんですよね。でも、それが意外と今、役立ってるかも。建築っていろんなこと知らないといけないんですよ。高校時代、そこで調べる癖がついたのかもしれない。
西部 なるほど。ちなみに、肝心の高校生活自体は他に印象深かったことはないですか?
石村 うーん、友だちがいなかったとか、そういうことではないんですけど(笑)。群馬で高校時代、早く帰って再放送のドラマを録画してCM消して、相関図を調べてたみたいな人だから、高校生活の思い出がそんなに出てこないくらい、僕自身が当時からちょっと変わっていたんだと思います。
東京でも「君、変わってるね」ってよく言われるんですよ。でも、東京は人がいっぱいいるから、変なやつも多いし、そういうところがあるやつなんだねって別に大丈夫なんですよ。今、僕は「明るい建築オタク」を目指そうみたいな感じでやっていますが、高校時代の延長線上で受け入れられてる感じです。
西部 ちなみに、入学当初から就職するつもりでしたか?
石村 そうです。そのさらに前、中学生ぐらいから就職しようかなと思ってましたね。
西部 そうなんですね。この後、続きを聞きますので、また教えてください。ありがとうございます。樺澤さんは?
「超青春」だった高校時代
樺澤 はい、私の場合はもう高校大好きで、前女時代の出来事が今の私を全部形成してるみたいな感じです。
西部 すごい!
樺澤 今の前女はどうかわからないですけど、私がいた頃はもう本当に自由な校風で、誰が何してても誰も気にしない(笑)。なので、本当に居心地が良すぎて、いつも創作ダンス部の友だちとバカ騒ぎして、でも、別に誰も見てない(笑)。そんな感じの日々を過ごしてました。
基本的に部活に没頭してて、自分たちが伝えたいテーマをダンスの動きで表現するみたいなことをやってたんですけど、なかなかいい作品が生まれなくて、顧問の先生にめちゃくちゃ叱られる厳しい指導を受けたり、部員同士でも意見がぶつかりあってけんかしたり、泣いたり、今思い返せば、超青春でした。
で、部活に没頭しながらも、ずっとお笑い好きだったので、年に一度はお笑いコンビ「COWCOW」の単独ライブに家族で行っていました。今思えば当時から、担任の先生にも「将来は吉本興業に入ってCOWCOWのマネジャーやりたいです」みたいなことも言ってましたね。
西部 え! 高校生の時からですか?
樺澤 そうなんです。でも当時の担任の先生に「吉本興業は学歴主義だから、東大とか行かなきゃ無理だよ」みたいなこと言われて、そのためにネームバリューのある大学に行かなきゃなと思って、必死で勉強をがんばっていました。
西部 そこからつながってるんですね、すごいですね!
樺澤 そうですね。最終的にはつながりましたね。
(中編へ続く)
高校卒業後、一度就職した石村さんが大学に入ったのは、電車でたまたま乗り合わせた大学生の一言がきっかけだった? 中編もおふたりのエピソードから目が離せません!
ライター・岩井光子
登壇者
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石村 大輔 建築家
中之条高校卒業後、都内の測量会社に就職。その後、東京理科大学工学部第二部建築学科で学び、設計事務所勤務を経て、2017年に根市拓氏と2人で建築ユニット「Ishimura +Neichi」設立。足立区を拠点に地元の職人さん、クリエイターと「Senju Motomachi Souko」を運営。生ゴミを循環させるしくみづくりとコミュニティ醸成を目的とした住民有志によるプロジェクト「あだちシティコンポスト」にも携わる。購入したマンションの部屋を自身で設計、リノベーションして暮らしている。2022年から日本工業大学、2024年から東京理科大学で非常勤講師を務める。
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樺澤 まどか インフルエンサー
前橋市出身。実家はオクラ農家。早稲田大学先進理工学部を経て、同大大学院基幹理工学研究科ではロボット研究や科学技術を使ったアート作品制作を行う。2019年修了。吉本興業に入社し、マネジャーとしてかまいたち、とろサーモンを担当しながら同社のアイドルグループ・吉本坂46でも活動。2023年に退社後はワーキング・ホリデー制度でオーストラリアへ。インスタグラムフォロワー14万人超のインフルエンサー、人気YouTuberとして現地生活を紹介。海の向こうから上毛新聞のコラム執筆も担当。
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西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO
前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。
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茂木 梓鶴 前橋女子高校2年
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