全国群馬県人図鑑-グンマーズ-vol.8 淵澤由樹さん×新井文月さん【後編】

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全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、県外に住む県ゆかりの先輩方をペアでお招きし、おふたりの母校や近隣校の現役高校生も交え、学生生活と現在の仕事とのつながりや故郷への熱い思いを聞き出していくトークセッションです。

後編は、ゲスト高校生の質問タイムから。将来の夢がふたつあっても大丈夫。年齢差を越え、お互いの好きを大事に育んでいこうという気持ちが響き合う最終回です。

なりたい職業がふたつあったら?

MC西部 さて高校生のおふたり、どうですか? 感想でも質問でも大歓迎です。

大谷日咲さん(以降、大谷) 新井さんに質問です。自然が好きっておっしゃってましたが、群馬の自然をテーマにした作品ってありますか?

新井 はい、あります。先ほどの自己紹介で出した榛名(HARUNA)という作品があります。

ダイアグラム が含まれている画像

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群馬には一般にパワースポットと呼ばれるところがあるんですけれども、その中の一つである群馬の榛名湖、榛名山の地面の下から出ている膨大なエネルギーが、スパイラル(螺旋)上に地球の中から上の山までつながっているイメージを描いています。

群馬に来ると良いエネルギーを感じるので、自分も良い気持ちになる、豊かな感情になっていきます。いろいろなスポットでまた描いてみたいなと思います。

西部 素敵ですね。いわゆる「気」が良い場所ってことですよね。

新井 この制作風景は、実はドキュメンタリー映像になっていまして、イギリスBBCのドキュメンタリー番組を作ってるチームに作っていただきました。群馬の風景から始まって、ドローン撮影をして、山に登るシーンですとか、法螺貝を吹いてるシーンとかとても魅力的なので、皆さんにもぜひ後ほど見ていただきたいです。

※映像はこちら

西部 大谷さんが今そう聞いてくれたのは、作品制作に興味があるからですか?

大谷 絵は得意じゃないですけど、すごく興味あります!

西部 そうなんですね! 普段どんなことが好きですか? 絵でなくても、何かを作る趣味があったりしますか?

メガネを掛けた女の子

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大谷 器械体操をやっています。

西部 へぇ、かっこいいですねー! 今日のゲストのおふたりも、体と心がすごくつながっているので、身体性ってすごく大事だなと思って聞いていました。体操も体の状態によって、変わってきますよね? だから、結構通じ合う世界なのかも知れませんね。小板橋さんはいかがですか?

小板橋華帆さん(以降、小板橋) 淵澤さんに聞いてみたいのですが、自分は小さい頃から音楽系の仕事をしてみたいと思っていたのですが、最近は違う仕事にも興味が湧いてきました。これからどうしたらいいでしょうか?

髪を染めた男

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淵澤 はい。あくまでも私の勝手な意見なので、全然こうした方がいいということではないのですが、好きなものは好きでいいと思うんですよ。音楽系の仕事につきたい一方で、別のお仕事にも興味出てきたんですよね。差し支えなければ何ですか?

小板橋 看護師です。

淵澤 看護師さんですか。両方目指してはどうですか?

小板橋 両方でもいけると思いますか?

ピンク色の髪の女性

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淵澤 はい、いけると思います。どちらかを省かなくても、音楽は音楽で好きでいいし、看護師さんは看護師さんになる勉強をしていけばいいですよね。専門学校とか大学に進学する時、学部の選択で考えるところはあると思うんですけど、どちらかを選んだからといってもう一方をあきらめる必要は全然ないと思います。

私は、自分が好きな方に進んでいくと道は開けると思っています。その時、自分がいいなと思うものには、自分の内なる心が出てるんじゃないかと思うので、例えば周りから、「この職業の方が安定してるから、こっちの方がいいよ」とか言われて、「そうか」ってなるより、自分が興味のある方にどんどん寄っていけばいいのではないでしょうか? あくまで私の意見なので、小板橋さんが最終的には決めればいいと思います。でも、好きなことだと続けられますよ! それだけはお伝えしたいです!

小板橋 ありがとうございます。

淵澤 がんばってください!

西部 好きなことが複数あるのは素敵ですね。好きなことが出てくると、そこから興味がどんどん広がるので、きっと小板橋さんの人生の可能性を広げてくれるから、どちらもあきらめなくていいのでは、と私も思いました。

小さな継続が大きな蓄積に

西部 私の方で用意していた最後の質問です。群馬県が今、他人が目指さない領域で動き出す人「始動人(しどうじん)」を育成しようと力を入れていて、率先して新しいことを始めたり、未踏の領域にチャレンジする人や組織、そういう活動を群馬県に関わりのあるところで増やしていきたいと、2040年に向けた大きな戦略(※)の中で考えています。とても素敵なコンセプトだと私も思っています。

新・群馬県総合計画

まさに淵澤さんも、新井さんも、人の歩んでない領域をズシズシとガシガシ、かき分けて生きてきたし、これからも生きていく人たちだと思いますが、高校生だった頃を思い返すと、新しく何かを始めるとか、人がやらないことをやるとか、やっぱり怖いじゃないですか?

大谷さんも、小板橋さんも、新しいことにチャレンジしてみようと思った時、「やっちゃえ!」と思う自分と、「いやいや、私なんか…」と思う自分と、両方いると思います。はじめの一歩を踏み出す時、自分を押し留めてしまうものとどう向き合い、どう恐怖心を取り払って、その抵抗感やハードルを越えていけばいいでしょうか? 一歩前進するための秘訣みたいなものがおふたりの人生経験の中であれば、聞きたいです。新井さん、どうでしょう?

緑のシャツを着た少年

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新井 はい。節操なくやりたいことをやってきたんですけど、すごく大事なコツがありまして、それをお伝えします。皆さん壮大な夢を持ちすぎて、その差に自分がびっくりして臆病になっちゃうことは多々あるんですよ。

例えば、ロックバンドのL’Arc-en-Ciel(ラルク アン シエル)になりたいと思っても、ボーカルのHydeみたいに歌えないとかあると思うんですけれども、まずは1日1分でも1フレーズでもいいから歌ってみるんです。ハミングで今日は終わり、でもいいですし、ハードルをめっちゃ低くするんですよ。筋トレもいいんですけど、腕立てを1日10回でなくて、0.5回で1日分は終わりにする。そうすると、結構長くやっちゃうものなんですよ。

例えば、絵を毎日描けるかと言えば、毎日描くのは大変です。やりたくない日だってある。だけど、1日1秒でもいいからつながるようにやっていくと、いつか身(み)になります。僕が決めているのは1日1回、筆をとって何かしら塗る。それだけ(笑)。筆をとると、さすがに1秒シャッて塗っただけではつまらないから、ここもやろうかな、ここもやろうかな、とだんだんつながっていく。

それを10年も続けていれば、先生とか呼ばれるようになりますよ、本当に(笑)。サッカー選手も、野球の大谷選手もそうだと思うんですけど、続けていくとそれなりの結果が伴うようになるので、そのプロセスを楽しんでください。

淵澤 興味深いですねー。面白く聞きました。

白いシャツを着ている女性

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淵澤 私の場合はですね。本当に皆さんと同じ感覚。高校時代、わりと真面目な方だったので、あまり冒険もしなかったです。では、なぜ今こういう風に変わってきたかを考えると、結局引っ込み思案で得したことがないと、ある時気づくわけですよ。「あ、いいです、いいです」と遠慮して良かったことってあまりないなと、だんだん人生を経験していくとわかってきます。

だからといって、図々しくなるのも奥ゆかしい群馬県民ですし(笑)、できません。それこそ新井さんが言ったように、蓄積が自信になるというか、常にきちんとやっていれば、出しゃばらなくても道が開けてくるみたいなのがなきにしもあらず、だったんです。私の場合かもしれませんが。

映画監督の話でも、桐女の映画を撮った後、商業映画の話が来たと周りの友人に言ったら「私だったら断る」ってみんなに言われました。商業映画なんて撮ったことがないし、そんなの怖いし…みたいな不安は確かにありました。ただ、自分が映画監督になれるとも思っていなかったし、こんな話は一生に一度かもしれないと思って、せっかくお声かけて頂いたので、「やります!」って即答したんです。

それで、自分にできるかどうかもう一度考えてみました。大学でも映像の勉強はしましたし、「大丈夫。できる!」と自己暗示をかけて、引き受けたからにはもちろん100%、120%、200%の力を出そうと覚悟しました。

新しい道に飛び込むのが怖いという皆さんの気持ちはとてもよくわかるんですけど、飛び込んじゃった方が楽しいよって感じでしょうか? もちろん、犯罪的な危ない誘いにはくれぐれも気をつけてほしいのですが、自分が努力した先に出てきたチャンスは逃さない方がいいとは思いますよね。「幸運の女神は前髪しかない」みたいな話もありますよね。出遅れて後ろ髪になるともう行ってしまいますので、チャンスが来た時に「それ、やります!」って自分を奮い立たせて進んでいく感じです。

チャンスに飛び込む勇気を

西部 おふたりともありがとう。大谷さんと小板橋さん、どうでしょう? 今のおふたりのお話を聞いて感じたことなどありますか?

大谷 淵澤さんの話を聞いて、チャンスが来た時にやらないより、やった方が得すると聞いて共感しました。私も高校生になってからいろんなチャンスが来た時、「すぐやろう」と思えるようになってきたので、これからも続けていきたいと改めて感じることができました。

西部 すばらしいですね。まさに今日もその一つですよね。この企画に出演してくれて、すごく丁寧に言葉を選んで話してくれて、ありがとうと言いたいです。大谷さんの言葉に、私たち大人も勇気をもらいました。これからもいろんなことにチャレンジしてもらえたらうれしいです。

大谷 ありがとうございます。

西部 小板橋さんも最後に一言お願いします。

小板橋 先ほどのおふたりの話を聞いて、将来の夢につなげるため、コツコツやり続けることが大切なんだなと思いました。

西部 ありがとうございます! 小板橋さんは音楽も好きで、看護師の夢もあって、今後どんな風に進路を選ばれていくのか、すごく楽しみです。 夢は一つに絞らなくて良いと思いますし、これからの人生を楽しんでくださいね。今日は本当にありがとうございました。

小板橋 ありがとうございました。

西部 では、最後に一言ずつ、ゲストからラストメッセージをいただけますか?

淵澤 はい。私も今回うれしいお話だったので、もうふたつ返事で「やらせていただきます!」ということでお受けしたのですが、何がどう自分の人生にかかわってくるか、開けてくるかはわからないので、私は飛び込んでみる勇気って本当に大事だと思っています。変な話、飛び込んでみて違うと思ったら、そこから方向転換すればいいし、いろんな人に会って、いろんなことを体験して、人生をどんどん豊かにしていってほしいなと思います。

10代のうちは群馬を好きになれなかった自分が、今となっては恥ずかしいです。今は群馬が大好きなので、これからますます群馬と関わっていきたいなと思ってます。人も好きだし、自然も好きだし、群馬のさらなる発展も期待していますので、微力ながらお力になれたらうれしいなぁと思っています。今日はどうもありがとうございました。

西部 ありがとうございました。

新井 群馬県出身で、今は外に出て活躍されている方を呼ぶ企画は本当にすばらしいなと改めて思いました。今日は現役の高校生のおふたりと直接話せたので、言葉がちゃんと伝わっているなと感じられました。よくある政策で、若者とつながろうというような形式的なものでなくて、こうして具体的に人と人とがつながる企画をいただけたことに感謝申し上げます。群馬は自然もあるし、アートは最近前橋が特に盛り上がっていますので、私もいろいろな形で貢献していければと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

西部 おふたりとも本当にありがとうございました。藤岡中央高校のおふたりも本当に改めてありがとうございました。

ライター・岩井光子

登壇者

淵澤 由樹 フリーアナウンサー

桐生市出身。日本大学芸術学部卒業、現ホリプロ所属。富山テレビ放送アナウンサーを経て、現在はテレビ・ラジオのナレーター・パーソナリティとマルチに活動。インタビューした各界著名人は1,000人を超える。113年の歴史を誇る母校の桐生女子高校が男子校と合併し、名前が無くなることから映画制作を決意。2021年、自ら脚本・撮影・監督・プロデューサーを務めたドキュメンタリー映画「さよなら桐女」を制作。その後も「映画が作れるアナウンサー」として映画制作に従事。県内では桐生高校放送部講師・桐生ふるさと大使、県総合文化祭審査員なども歴任する。

新井 文月 芸術家

高崎市出身。芸術家。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。幼少の頃、原因不明の足の病気により1日中絵を描いて過ごす。描き続けることで回復した体験から、肉体と精神は連動していると気づき、修験道の影響を受けた作品を制作。2014 年、ニューヨークにて初個展を開催。15年、Arab Week 2015 Art Exhibition に出展。主催国のオマーン/パレスチナ大使より日本アラブ友好感謝賞を受賞。同年、株式会社アトリエ新井文月設立。23年、世界101人の現代アーティストに選出(ジョージア)。24 年、ペルービエンナーレに出展。ダンサー、書評家としての顔も持つ。

西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO

前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。

大谷日咲 藤岡中央高校1年

小板橋華帆 藤岡中央高校2年