- REPORT
知事 × JINS田中仁CEOトークセッション
「湯けむりフォーラム2022」で行われたトークセッション。「伸びしろ無限大!群馬が未来に向かって飛躍するために」をテーマに、山本一太群馬県知事が、群馬県で次々と新しい取組をされているJINS 田中仁CEO にお話を伺います。
山本 一太(以下 山本):ジンズホールディングスの社長、世界一のウェアラブルカンパニーを目指す田中仁社長との対談ということでよろしくお願いします。仁さんとはこれで対談3度目ということで、(今回の)湯けむりフォーラムはリアル開催なんですけど前2回は無観客、オンラインでやってまして、記念すべき最初の湯けむりフォーラムにゲストとして来ていただいたのが仁さんで、私のWEB番組でも対談をさせていただきました。今日はよろしくお願いします。
田中 仁(以下 田中):よろしくお願いします。
山本:仁さんは前橋出身ということで、今相当のエネルギーを割いて前橋のまちづくりに力を入れられている。これは民主導のまちづくりとしてはですね、かなり全国でも注目をされているんです。この前、河野太郎大臣が来た時も前橋のMaaS、デジタルの取り組みを見ていただいて、その後、西村康稔大臣が来た時もやはり前橋の取り組みを見ていただいて、その中で仁さんをはじめとする民主導で県都前橋を復活させようとする人たちとお引き合わせをしたんですけれど、2人ともとっても感銘を受けていました。そこで今日はまちづくりについてお聞きしたいんです。
劣化東京を作らない
山本: いつも毎週一回くらい幹部を集めて庁議をやるんですが、毎回30分くらい大演説をぶちかますんですよ。その時にしつこいほど言っていることがあるんですね。これは群馬県の哲学の一つなんですけど「劣化東京を作らない」ってことなんですよね。劣化東京を作るっていうのがいわゆる地方自治体の長の最大の罠なんですよ。選挙ってことがあるもんですから、だいたい首長になると箱ものみたいなやつを残そうとか、すぐに成果になるようなものを残して有権者にアピールしようと・・どうしてもそういう誘惑にかられるんですけどね。特に良くないのは、ちょっと東京で流行ってるとか、ちょっとグローバルに話題になってるとかいうやつを劣化した形で持ってくる。なんか知らないけど流行っている施設を、東京に比べたら7分目くらいのやつを持ってくると。これ最悪だと思うんですね。こんなことするくらいだったら、地域の特性に合わせた独自のものをやらないと意味がない。田中仁さんはそもそもジンズホールディングス、この業界ではナンバーワンまでこの企業を育ててきたんだけど、全国トップレベルのものを前橋に持ってこようとしている。これがものすごく大事なところなんですが、その哲学は一緒でしょうか?
田中:全く一緒ですね。地域ってなかなか活力を生み出すのが難しいんですよね。何で難しいかっていうと、普段東京に住んでいて地方に行こうとした時に、その地域ならではの光る、ユニークな、オリジナリティ溢れるものがなければ行きたくないわけですよ。ところが今知事がおっしゃったように劣化版東京みたいな街っていっぱいあるんですよね。でもやっぱりそこできらりと光る、世界にもどこにもないようなものを作り出そう、そういうものがあると都内の人間でも、あるいは世界の人間でも行こうと思うじゃないですか。そういうものを作りたいってのはありましたね。
山本: 例えば群馬県は仁さんご存じのように県庁の32階にスタジオを作ったんですよ、「ツルノス」っていうね。動画放送スタジオで、他の県にもこういうスタジオもあるし、そこでウェブ番組を作っているところもあるんですけど、「ツルノス」がなぜオンリーワンなのか、32階にあってオールパノラマで関東平野が見られると、これは群馬県にしかない。仁さんがやってるまちづくりも前橋っていう場所の特性を活かして他にないものを作ろうとしている。これは本当に素晴らしいと思っています。前橋は、残念ながらギリギリ通らなかったんですけど「スーパーシティー(先端技術と規制緩和を組み合わせた未来型都市 )」みたいな構想があって、とにかくデジタル化が注目されているわけですけども、最近仁さんが言っている「デジタルグリーンシティ」、このコンセプトから話していただけますか?
田中: 今政府が「デジタル田園都市国家構想」って言ってるじゃないですか。でも市民はまったくイメージが沸かないんですよね。目的は何なのかっていえば市民、住民のウェルビーイングを高めようっていう話なわけですよ。しかもそれをデジタルによって高めようと。でもそこにはリラックスも必要だということで、「デジタルグリーンシティ」。これがですね、ようは市民が「デジタル田園都市国家構想」を解釈した名前なんじゃないかということで、前橋では使っています。
前橋の街を変える
山本: 前橋市は一昔前まで商店街に人がいないとか・・そもそも地方都市って人があんまりいないんだけど、この前橋を活性化させるってことで仁さんが入ってきて、大変なエネルギーをかけて人脈もフルに活かして、素晴らしい仲間を集めて取り組んできたんですけど、これまでにやってきた事と、その成果を教えてください。
田中: 前橋にハマってしまって今泥沼状況なんですけども。(前橋は)もともとは元気がない、県庁所在地と言われながらも全国で最低クラスの人気とか土地の価格だったんですよね。この街はダメだってみんな言ってたわけです。でも改めてこの街を見てみると、本当にそうなんだろうかと。今日高崎の方もいますけど、前橋の人はみんな高崎を羨ましいって言います。新幹線も停まるわ、建物もいっぱいできるわ、高崎みたいになりたいって言ってるんですけど。私からしてみると高崎は高崎でもちろん素晴らしいんですけど、似たような街って大宮とか幾つかある。で、新幹線が停まることによって実はその街の個性がちょっと薄れてしまっている部分もあるんじゃないかなって考えるとですね、前橋はまったく手つかずな状況で昭和の戦後が残ってるんですよ。開発が全くされてないわけです。一般的には開発っていうとコンクリートで塊作っちゃいますよね。
山本: はい。
田中: でもそれがなくて昭和の建物がずっとあってですね、レトロなわけですよ。この街って周回遅れで逆にトップを走ってるって思ったんですよ。この街は新しい価値、これからの21世紀の新しい価値を作りやすいんじゃないかなと。しかも街はコンパクトなのにそれなりに人口もある。県庁所在地でもある。ということで、これは官民が共に力を合わせて取り組んだら可能性があるなってことで、ホテルだったり、前橋のビジョンだったり、色んなことを官民共創でやってきたっていうのが今の段階なんですね。
山本: なるほどね。
田中: それを現時点でどう評価しているかっていうと・・割りにうまくいってるんじゃないかと思ってます。そのうまくいってるんじゃないかっていうのは、私一人の力はたいしたことないんですが、たくさんの知恵と力のある人たちが前橋に今集まってきてるんですよ。この民のエネルギーが官も動かし一緒になってると。しかも昔は前橋市と群馬県ってあまり仲良くなかったんですよね。あんまり協力してもらえなかったんです。でも山本知事になってから非常に協力をしていただいてですね。これから新しい次世代の街を作れるんじゃないかなって、そういう手ごたえを感じますね。
群馬イノベーションアワードと白井屋ホテル
田中: 具体的にした一番最初は・・起業家が生まれる地域は古今東西活力があるんですよ。そう考えると群馬県は(起業家の数が)全国でも平均以下で最下位に近かった。そこに対して私がロールモデルになれることをやろうってことで「群馬イノベーションアワード(群馬から次世代を担う起業家を発掘、奨励し、起業を通じて地域を元気にしていくプロジェクト)」、そして「イノベーションスクール」を立ち上げたわけです。これをやるうちに前橋に関わる機会が増えて。でも前橋はかなり厳しいわけですよ。私、まちづくりまでやる気はなかったんですけど、たまたまアーツ前橋で出会った若者たちが、自分たちが住む街をなんとかしたいと活動していたわけです。でもその動きは、想いはあるけどもすごくちっちゃいわけですよ。もっとこうしたらいいのに、ああしたらいいのにっていうような思いを持っていたらですね、白井屋旅館っていう300年続いた歴史ある旅館が廃業していると。これを何とかしてもらえないかと言われてですね・・一人に言われたのなら断って終わりだったんですけど、3人に言われてですね。つい・・良い恰好をしてしまってですね、それを買ってしまったんですよ。
山本: つい買っちゃった?
田中: つい。だけど本人やる気ないわけです。で、どこかのホテルのコンサル会社にお願いしてやってもらおうと話に行ったらですね。何言ってるんですかと。今の前橋にホテルなんか無理ですよと。大体誰が行くんですかと。しかも前橋っていうのは全く想像がつかないと。ホテルっていうのは街と共にある。前橋がどんな街かわからない。田中さん、どんな街なんですか?って言われて答えられないんです。それで山本龍(前橋)市長にたまたまお会いした時にですね、市長、前橋の街のビジョンってどんなものですか?って聞いたらですね、色々教育だとか福祉とかそういう数値目標はあるんですけど、まちづくりに対する一言で表すビジョンってないわけですね。じゃあそれを作りましょうっていうことで、前橋で「ビジョン委員会」を作成し、ビジョンを作り、ビジョンが決まったことでホテルの方向性が決まり、街の方向性が決まりっていうことで、ずーっと今に至っている感じですね。
山本: なるほど。仁さんを見ていて、やったことは色々あるんですけど、イノベーションアワードとか、白井屋旅館を買って日本でも有数の他にはないホテルに作り替えたりとかね。一番大きなことは前橋の若い経営者をやる気にさせたっていうことだと思うんですよ。ロールモデルって本当に大事だなって思ってて。やっぱりね、前橋の若い経営陣の仁さんに対する憧れってすごい。誰かロールモデルになる人がリーダーになるとね、地域ってこんなに変わるのかって思うんですけど。
田中: ここ最近の若い人は意識変わってきたなと思うんです。私の仲間もですね、事業で成功した人はたくさんいるんですけど、事業で成功して稼いだお金の使い方って昔から割とオーソドックスなんですよ。節税のためのクルーザーであったり、絵画であったり、あるいは別荘であったり車だったり、わかりやすいんですよ。昔から変わってないんです。それに対して、社会とか地域にインパクトを与えることにお金を使う方が若い人は憧れてくれるみたいで、贅沢にお金を使う起業家にはあまり興味がないらしいんです。社会にとってインパクトを与えたいっていう若者はいるみたいで、そこに対して少しは貢献してるんじゃないかなって思うんですよね。
山本: それは本当に大きく貢献していただいていると思うんですけどね。白井屋旅館は、買っちゃったって言いましたけど、ここも直そうそこも直そうでどんどんお金がかかって大変なお金がかかったと思うんですけど。
田中: 大変なんですよ。
山本: それでも、劣化東京じゃない。全国探してもなかなかないような、デザイナーズホテルっていう言葉じゃ捉えきれないようなホテルにしたってことですよね。
田中: 評価として嬉しかったのは、イギリスのナショナルジオグラフィックが世界で39件、特別な体験ができるホテルを選んだんです。日本から唯一「白井屋ホテル」が選ばれたんですよ。これ別に応募したわけじゃないんですよ。向こうが調べて選んでくれたんです。
山本: 前も仁さんにお話ししたことがあると思うんだけど、みなさんニューヨークに「アルゴンキンホテル」っていうのがあるのをご存じでしょうか?タイムズスクエアの近くにあるんだけど老舗なんですね。ここに「ブルーバー」っていうのがあるんですよ。1920年代くらいが一番盛んだったんだけど、その頃一番最先端をいっていた小説家から劇作家、プロデューサー、音楽関係者、芸術家、こういう人たちが毎日のように出入りしてお酒を飲んでたわけですよね。毎晩お酒を飲んでいるうちに色々なことが起きるわけですよ。そこからものすごくヒットするミュージカルとかお芝居とか映画とかが生まれてくる。ぜひ白井屋でこういう場を作ってほしい。
観光が待つ可能性
山本: 仁さんが白井屋ホテルを作っただけで色々まわりに影響があって。草津町長が湯畑を整備したことをシャンパン効果とおっしゃっているんですけど、一つ拠点ができるとそこから波及していくってのがあるじゃないですか。仁さんは明らかにそういう空間を作ろうとしていて、「白井屋ホテル」を中心に街を変えようとしているわけですよね?
田中: 「白井屋ホテル」は本当にきっかけ、はじまりにすぎなくて、これから大きく街が変わるスタートだと思っています。今も、もともと長崎屋の跡地だった場所を前橋市が一度取得して、その後売っちゃったんですけど、これを前橋市の民間で素敵な街にするためにぜひ活用させてくれということで、また買い戻したんですよ。これが来年(2023年)の5月くらいにオープンするんですけど(「まえばしガレリア」)。白井屋をきっかけにですね、アート関係者が前橋に非常に興味を持ってくれて、東京の日本を代表するギャラリーが何件かまとまってそこに入ってくれるんです。それによって、その一角に東京の三ツ星のミシュランシェフが前橋ならではのフレンチを出したいということで新しいチャレンジをしたり・・そういう動きが最近すごく加速してきました。
山本: 仁さんが徹底してるなと思うのは、「白井屋ホテル」のキッチンに行っても、そこにいるスタッフの人たちを長く修行させている。彼らが一つの料理を出す、一つのドリンクを出すにも非常に面白いストーリーを持ってる。まさに劣化東京とは逆だと思うんだけど、作りこんでるってことですね。
田中: そうですね。地域で何が大切かっていうと、おもてなしの心だと思うんですよね。例えば群馬県は野菜にしても肉にしても良いものをたくさん作っているわけです。でもこれがどういう状況かというと、ほとんど東京に送って流通させているだけなんですね。地元の野菜だとか肉を、本当にお客様に喜んでもらうべく、手をかけて調理をして、調理したものを食べさせる素敵な場を提供しているかっていうと、残念ながらまだまだ少ないんですよ。だから富裕層の方々は東京に行っちゃうんですね。買い物にも、食事にも。多分高崎もそうだと思うんですけどね。そういう事がないように、また上州のキュイジーヌってものをですね、しっかり地域で提供したらもっともっと地元のお客様も喜ぶし、それが全国からお客様を引き付ける効果があるんじゃないかって思うんですよね。
山本: ホテルにこだわって今日お話をしたのは、私、草津温泉出身だって言いましたけど旅館の息子なもんですからね。ちょっと前に河野大臣と西村大臣が群馬に来て、仁さんと話をする機会を設けて、仁さんの仲間も加えてご飯を食べるなかで、日本の勝ち筋は何だろうという話になり色々なことを言っていたんですけど、やっぱり「観光」だと思うんですよね。
田中: これだけ円安になってきて、観光以外に実はあまりなくなってきてる気がするんですよ。知事もお知り合いのデービッド・アトキンソンさん(「新・観光立国論」著者)が言っていることが現実味を帯びてきましたね。
山本: 今思い出してみると、コロナが始まる直前のインバウンドって3,000万人を越えていたと。これすごいことで、5~6年前は900万人くらいで、韓国の1,200万人にも負けていたところから、相当政府も力を入れて、当時の官房長官なんかもビザの大幅緩和をやったり、免税店の拡大をやったりして3,000万人まできたと。コロナがなかったら5,000万人くらいまでいっていたかもしれないと。知事になって改めて思うんですけど、やっぱり地方の産業っていうことで大きな可能性があるのは観光、そして農業だと思うんですけどいかがですか?
田中: 私もそう思います。観光と農業はものすごい可能性がありますよね。しかも、世界からすると日本は安すぎるんですよ。みんな何で日本はこんなに安くて美味しいんだってびっくりしますよね。だからまだまだ価格の許容度もあるし、農業もそうですよね。僕は農業は成熟産業だと思うんですよね。その割に・・関係者がいたら申し訳ないんですけど、変に甘やかしすぎて、実はそんなにやる気がない人も救ってしまうというところが・・日本は全体的に平等主義という名のもとに、やる気のある人が活躍するっていうよりは、どちらかというとやる気のない人も救ってしまうというか、そこが何か競争力の弱さの原因の一つだと思いますね。
山本: 昨今、県庁で「ぐんま未来産業アドバイザリーボード」っていうのを作って、気鋭の方々にメンバーになっていただいて、ゲストスピーカーを呼んで色々産業の話をしてるんですけど、自動車産業は大きな転換を求められている。この産業構造の転換の中でどうやって対応していくかっていうのは特に長にとっては本当に大問題なんだけど、シリコンバレーの某起業家に前回出ていただいて、彼が最後に言ったのは「シリコンバレーにいると、みんな日本大好き。とにかくみんな日本に行きたがっている」。私は自民党のクールジャパンコンテンツ特命委員長を3年やって、エンタメの世界では残念ながら韓国が遥かに先に行ってしまったんですが、でも韓国の人も日本大好き。中国で世論調査をやっても、コロナ明けたらどこに行きたいか・・日本。みんな日本大好きなんですよね。だからこの資源を活かすっていうと、観光戦略は大きなポテンシャルがある。「白井屋ホテル」みたいなところが出来て、これから外国から要人が来た時も泊められるホテルがある。だから白井屋が出来たってのはすごい有難いですね。
田中: ありがとうございます。
開かれた群馬県を目指して
山本: そもそも「湯けむりフォーラム」は、どうやって1つ1つの議論を実際の行動に移していくかっていう事がテーマです。県庁の再活用ってのを今やってまして、県庁前広場にモニュメントがあったんですよね。全部片づけて、相当広いスペースになって。ここで色々なイベントをやっていく、ここに人を集めていく。そこと前橋中心地も繋ぎながら人の流れを作っていく。活用を考えているんですが、何かアイデアないでしょうか?
田中: 知事があそこを広場にすると聞いた時に、広場ってギリシャとかローマで広場に民衆が集まって世論が形成する場所であったり、あるいは政治との接点であったりした。色々な人のコミュニティを作りたいのかなって思ったんですよ。だからそこで青空議会とかしてみんなに見てもらうとかですね。
山本: あーなるほど。青空議会って発想なかったけど面白いですよね。あそこで毎日何かが起こっていると。今日民間企業の方もいっぱい来られていると思うんですけど、すでに県庁職員が2,000人くらいいて、前橋市役所の職員が1,000人以上いて、あそこでどんなビジネスをやっても成立すると思うんですよ。キッチンカーを出したら職員わーって食べに行く。あらゆるイベントをやって、毎日がスペシャルにしてほしい。青空議会もイベントとしては面白いかもしれないし、ストリートバスケットだってできる、サッカーだってできる、そのくらい広いんですからね。あそこから中心街まで歩いたら景色も良い、人全然歩いてない・・人全然歩いてないんですよ前橋。歩いてないんだったら、その道を自動運転にすればいいじゃないかと。あそこに自動運転の仕組みができたら、みんな見に来ると思うんですけどね。
田中: そういうのをやってほしいですよね。EVの自動運転バスとかですね、そういったものを使って公共交通・・公共交通っていえば知事にお願いがあって。私今、国交省の地域交通の研究会にも入ってるんですよ。全国の課題はもうだいたい洗い出されているんですよ。全国の民間事業者も含めた良いソリューションもあるんですよ。でも残念ながら住民目線で本当のモビリティが作れてるとこってないんですよ。この前、前橋市が「デジタル田園都市国家構想推進交付金」の採択を受けたじゃないですか?
山本: ええ。
田中: 特区じゃないですけど色んな規制を緩和して、本当の住民目線の交通の在り方を県と市で一緒になって作りたいなって思うんですよね。
山本: 全く同感で、西村大臣と河野大臣が非常に感銘した「マイタク」。これはマイナンバーカードをMaaSと組み合わせて、障害のある方とか高齢者の方々がより安価に便利に移動できる、マイナンバーカード一枚持っていればずーっと移動できるという話なので、これはぜひ横展開していきたい。
田中: そうですね。バスとかタクシーだけだと賄えないわけですよね、田舎のお年寄りも含めてね、ここをどう解決するかっていうのが一番早く解決したいところですよね。
山本: ウェルカムスピーチでも言ったように、私たちが目指しているのは開かれた群馬県、新しいアイデアをどんどん入れていくと。その先端の実証をやる県になりたいと。そういう実証をやるということで言うと、今言ったMaaSの「マイタク」の仕組み(マイナンバーカードと人の認証とを合わせる仕組み)は全国にもなく、展開したいと思うので、ぜひ知恵も力も貸していただきたいと思います。
田中: ぜひお願いします。
山本: 最後に仁さん、「群馬イノベーションアワード」素晴らしいと思う。最初にやった時は仁さんが私財を投じて田中仁財団を作ってやってね、みんな半信半疑だった。これね、回を重ねるにしたがって、群馬県で起業したい若者の目標になっていると思う。素晴らしいと思います。
田中: 一つ情報なんですけど、この「群馬イノベーションアワード」が日本の役に立つということで、あのデロイト トーマツ(世界最大の会計事務所であり経営コンサルティング企業大手 )が、さらに発展させて「ニッポンイノベーションアワード」をやらないかと。
山本: 良いですね!
田中: 全国で「群馬イノベーションアワード」みたいなことをやっている所はあるんです。そういったものを集約し、全国から前橋に来て起業ピッチ(短いプレゼンテーション)大会をやりたいっていうことでですね。「群馬イノベーションアワード」は予選会のポジションになって、本選が日本全国版みたいな、そんなのも今計画されています。
山本: 素晴らしい。県としても改めて注目して色々連携を強めていければと思っています。「湯けむりフォーラム」はあくまで通過点で、ここからまさに今日の実証実験の始めから進化していくと。今回のフォーラムに来ていただいた方ってみんなファウンダー(創業者)なんだけど、やっぱりみんなが来たいと思うフォーラムにしたい。今、外国の企業もすごく群馬に興味を持っている。群馬県と色々な民間企業との連携を探るだけじゃなくて、そこに外資の色々なところも来て企業同士のマッチメイキングみたいなところで、ここに来る方が色々なきっかけを掴める会にしたいと思うので、仁さんにまた知恵を貸してもらいたいと思うし、ジンズホールディングスにも協力していただきたいと思います。
田中: 頑張ります。
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ライター: 合同会社岡安映像デザイン 岡安 賢一
群馬県中之条町生まれ・在住。日本映画学校映像ジャーナルゼミ卒。伊参スタジオ映画祭実行委員長。群馬県の「ぐんま狩猟フェスティバル」のドキュメンタリー映像や、中之条ビエンナーレの映像アーカイブ等に関わり、デザインやライティングも行う。https://note.com/oka
撮影: WM Photo Design 茂登山 茉希
フォトグラファー&デザイナー。群馬県みなかみ町出身。桑沢デザイン研究所卒。広告代理店→WEB制作会社→写真館経て、7年前にフリーランスとなる。現在、前橋⇆みなかみ2拠点生活。県内外にて活動中。237年の歴史を持つ郷土剣法「神道一心流」師範代を務める。
https://www.instagram.com/wm._.photodesign/
登壇者
山本 一太 群馬県知事
群馬県草津町生まれ。中央大学法学部卒業、米国ジョージタウン大学大学院修了。国際協力機構(JICA)等を経て、1995年、群馬選挙区から参議院議員に初当選。以降、4期連続当選。参院外交防衛委員長、外務副大臣、内閣府特命担当大臣、参院予算委員長等の要職を歴任。2019年から現職。
趣味は音楽活動で、シンガーソングライターとしてこれまで6枚のCDをリリースしている。
田中 仁 株式会社ジンズホールディングス代表取締役CEO 一般財団法人田中仁財団代表理事
1963 年群馬県生まれ。1988 年有限会社ジェイアイエヌ(現:株式会社ジンズホールディングス)を設立し、2001 年アイウエア事業「JINS」を開始。2013 年東京証券取引所第一部に上場。
2014 年群馬県の地域活性化支援のため「田中仁財団」を設立し、起業家支援プロジェクト「群馬イノベーションアワード」「群馬イノベーションスクール」を開始。現在は前橋市中心街の活性化にも携わる。
慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 修士課程修了。