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【レポート】議員と考えよう!私たちの政治 PART1

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2023年10月21日 トークライブ「議員と考えよう!私たちの政治(PART1)」を開催しました。

登壇者は、あべともよ県議会議員、亀山たかし県議会議員、渡辺たかひろ高崎市議会議員。情熱系議員3名とナビゲーターの大学生2名が熱いトークを繰り広げました。

トークテーマは、大学生2人が考えた内容のほか、会場の参加者がSlidoに書き込んだ質問、くじ引きで引き当てたテーマなど来場者も巻き込む形でおこなわれました。

議員さんの日頃の活動のことや、政治に対する思いなどについて語っていただいたトークライブの模様をお届けします。

【登壇者】

 ・あべともよ(群馬県議会議員)

 ・亀山たかし(群馬県議会議員)

 ・渡辺たかひろ(高崎市議会議員)

【ナビゲーター】

 ・山口朔矢(高崎経済大学)

 ・後藤亜由水(お茶の水女子大学)

テーマ:議員活動

――どうして議員になろうと思ったのですか。


あべともよ(以下 あべ):最初の子どもを出産した時に、子育ては喜びもあるけれど、大変なものだと、ひしひしと感じました。少子化は問題だとみんなが感じているのに必要な制度が整わないのは、議会に当事者である女性が少ないからだと思います。自分の思いと皆さんの思いを届けるために、議員になりたいと思いました。

亀山たかし(以下 亀山):私は議員としては4代目です。職人の世界ですと4代目は立派だね、と言われるのですが、議員では批判される立場になります。しかし、小さい時から祖父や父の姿を見て、政治というものを身近に感じてきました。地元の人から相談を受けるようになり、政治から逃げてはいけないなと思い立候補しました。

渡辺たかひろ(以下 渡辺):今年4月の選挙で初当選しました。前職は銀行の営業として、個人宅や企業を訪問しておりました。そんな私に、地域の議員が引退するので、立候補して欲しいと声がかかりました。びっくりしましたが、若い世代にこれからの町づくりを担って欲しいということなので、立候補いたしました。

――議員活動のスケジュールを教えてください。

渡辺:私は議員になってまだ半年です。例会がない時はどのような活動をすればよいのかを、先輩議員に聞いてみると、皆さん、様々に活動されていました。中でも、皆さんが大切にされていることが、地域の声を聴くことです。それぞれの地域には困ったことや問題があり、自分で足を運び、住民の方の声を直接聴かないとなかなかわからないことが多いからです。

平日は市役所で会議等があり、土日は地域のイベント等に参加するため、休みは基本的にはありません。これはどの議員さんも同じだと思います。休日はないのですが、ライフワークバランスも重要ですので、皆さん、時間を有効活用して、自分の時間を作っていると思います。

――今日は地域の活動に参加されてから、こちらに来てくださったそうですね。

亀山はい、小学校の運動会と、その後に公民館の文化祭に参加してきました。お会いすると、参加者の方がいろいろな話をしてくださいます。メールや電話でも話はできますが、顔を見て話をすることが大切です。打ち解けて話をすることで深い話ができます。

――地方議会は一般的に、年に4回開かれるのですが、なぜ群馬県議会は3回なのですか。

あべ:以前は4回開いていたのですが、9月から10月、11月から12月の2回分を続けて開催することにしたので3回になりました。回数は減りましたが、期間は長くなりました。閉会中の緊急案件は、知事が決めて、後から議会への報告でも良いことになっています。閉会期間が長いと、議会を通さず知事が決めることが増えるため、開会期間を長くしました。

議会で質問することは、学校生活でいうと試験のようなものです。試験の時だけが勉強ではなく事前準備に時間がかかります。自分の問題意識もありますが、議会で扱わなければならない課題は幅が広いので、地域の課題を届けることも大切です。そのため、日頃からさまざまな方法で情報を収集します。

テーマ:ジェンダー

――亀山さんは県議会で初めて、男性の育休を宣言されました。


亀山長男が2歳の時に、次男、三男が双子で産まれました。同じタイミングで、国会では小泉進次郎さんが育休に取り組んでいました。様々な立場の方が議員として活躍できる、そんな社会にしていくための、ひとつの投げかけにできればと思い、育休という世界に飛び込みました。育休の宣言には賛否両論の意見をいただきましたが、男女問わず、子育ての相談を受けることも増えましたので、今後の議員活動に活かしていきたいと思っております。

――子育て中、休まなければいけない時はどうされていましたか。

あべ:議員になった時、上の子が小学校で、下の子が保育園でした。活動の初期には、保育園が利用できなかったので、子どもを見てくれる人がいるときは見てもらい、いない時は一緒に連れていきました。子どもにとっては大変なこともあるかもしれませんが、子どもと一緒に活動するところを皆さんに見ていただくことで子育ての現状を少しでも理解してもらえるのではないかと思いました。

職場においても、子どもを見てくれる人が誰もいない時は、職場に連れていくことを可能にすると、子どもと大人の分断が減るのではないかと思います。

――子育て中の父母が議員になるメリットはどういうところですか。

渡辺:私にはまだ子どもがいませんが、実際に子育てをしている人が議会にいるということは、子育て中の方が相談しやすいと思います。2人の子育てをしている同期の議員さんは、保育園の送迎もしており、身近にいるからこそ、切実な話をきくことができると言います。議会の中に多様性があることで、今まで漏れていた意見を吸い上げることができます。

――どの都道府県でも、(議員数は)圧倒的に男性が多いのですが、議会における多様性についてどう思いますか。

亀山:性別だけでなく、子育て中でも障がいがあっても議員になれる。そういうふうに、誰でもチャレンジできることが大切だと思います。私自身は政治家4代目ということで、後援会も受け継ぎました。人のつながりを多く持っているという点ではメリットも若干ありますが、批判も受けます。

――(政治分野における)クオータ制の導入についてどう思いますか(会場からの質問)。

あべ:クオータ制というのは、議席の一定の割合をあるグループ、例えば女性に割り当てることです。女性議員の数が少ない国でこの制度を取り入れた結果、女性議員の数が増え、その後、この制度をなくしても、ある程度バランスの取れるような数字になったそうです。女性議員が実際に増えてみないと、増えることによる効果が実感できないので、まずは試験的にでもやってみることが大切だと思います。

亀山:きっかけとしては効果がある制度であり、国会議員の比例選挙においては有効だと思います。しかし、直接選挙では割合を強制的に決めることはデメリットがありますので、導入は難しいかと思います。

――男性と女性以外の性を持った方々が議員になったら、どういったことがありますか(会場からの質問)。

渡辺:多様性がある社会へと、進もうとしています。このことに、議会の中だけではなく、会社や学校などいろいろな組織が目を向けなければいけない。議会という、社会の仕組みやルールを作る側に当事者の方がいれば、ダイレクトに伝わりやすくなります。民間もそれに倣って、仕組みを変えていくのではないでしょうか。

あべ:トランスジェンダーの方で議員になった方が、最近、全国で増えてきています。トランスジェンダーの方々が議員として表に出てくるようになったことと、学校でジェンダーを学ぶようになったことはリンクしています。議員として表に出る人が増えることで、ほかのトランスジェンダーの方も表に出られる雰囲気ができてくるのだと思います。

テーマ:若者と政治

――渡辺さんは、銀行員の前職が議員に活かされていますか(Slidoでの質問)。


渡辺:すごく活きています。地元の東和銀行で営業をしておりました。その頃も地域を回っていましたが、今も同様に、地元の企業や個人の方と様々なお話をさせていただき、情報提供やあるいは課題解決を一緒に考えています。例えば、企業ならば公的な融資のこと、また東京に行った若者が地元に帰ってくるのにはどうすればよいのかを家族や地域で話し合うなど、銀行員時代も今も、地域密着型で活動しています。

――若者の投票率が低いことについて思うことはありますか(Slidoでの質問)。

亀山:県議会では「GACHi 高校生×県議会議員」という出前講座で、県内の高校を訪問しています。いろいろな話を高校生から聞き、県議会に諮り、学校トイレの洋式化などが実現しました。また群馬県では、山本知事が高校生の意見を聞き、政策に反映しようという「リバースメンター」も行っています。自分が政治に関わることで、社会がどれだけ変わっていくかを感じてもらえることが、投票率をあげる一番の取り組みだと思います。

若い人に限らず、全体の投票率が落ち込んでいます。誰が議員になっても期待できないということではなく、期待してもらえるように、議員ひとり一人が取り組んでいくことが大切だと思います。

――少子高齢化により、高齢者が有権者の中で高い割合を占めることで、政治に影響力を増すと言われています。シルバーデモクラシーに対して、どう考えますか。

あべ:子どもたちに対して使われるお金の額よりも、高齢者に対して使われるお金の額の方が非常に多いです。それが、シルバーデモクラシーの結果だと思います。20年前から少子化が問題だと言われ続けていますが、それが解決できず急速な少子高齢社会となりました。少子化は若い人たちだけの問題ではなくて、私たちの年代が年を取った時に、それを支えてくれる若い人たちがいなくなってしまうということでもあります。この先の若い人の未来を大事にしていくことが、高齢者も含めた私たちの未来を作っていくことだという共感が必要です。私たち政治家は今現在表にでてくる民意だけでなく、この先の世の中の民意を汲み取って政策を作っていかなければいけないし、有権者の方にわかっていただけるようにしなければなりません。

テーマ:やりきれなさ

――やりきれないと思ったことはありますか。

亀山:地域の方の要望と、自分のやりたいと思っている政策が、時間をかけないと実現しないということを議員になって実感しています。直面している課題は、時間との戦いでもあるけれど、しっかりと積み重ねていかなければならないものでもあり、自分でも葛藤しています。これが、やりきれなさに繋がるのかと。例えば、桐生は高速道路のインターがない市ですので、直近のインターへのアクセス道路を作って欲しいという要望があります。その課題に長い間、取り組んでいますが、出来上がるには、まだ10年かかります。桐生は過疎化指定されていますので、市民の皆さんも焦っていまして、どうなっているのかと聞かれます。

――当選した後に、これは違ったな、と思ったことはありますか。

渡辺:予算やいろいろな調整があるため、行政が行うことは時間がかかると思いました。民間ではすぐに決まることもあるのですが、そこが公共の難しいところです。私の地元にはスーパー、ドラッグストアがないので、歩いて買い物ができる場所が欲しいという声がたくさんあります。玉村スマートインター近くに商業施設ができる予定があるのですが、それも時間がかかりますので、もどかしさがあります。

テーマ:会派

――議員の中の先輩後輩はどのような関係ですか。

渡辺:高崎市議会には38人の議員がいて、私が所属する会派である新風会が19人を占めています。議員というと、どんな恐ろしい人がいるのかと思われる方も少なくないと思いますが、思っているよりは威圧的な世界ではありません。20代は私一人ですが、若い議員に育って欲しいという思いがあり、会派独自の研修をはじめ、丁寧に指導してくれます。

――自民党の意見と自分の意見が違った場合は忖度することはありますか。

亀山:地域の代表として議会に出ていますので、それぞれの地域の利益を優先します。自分の地域への予算配分が少ない時は腑に落ちないこともありますが、県議会議員として、群馬県の未来についても考えていかなければならないということで納得をして活動していきます。

基本的政策が同じ考えの人が集まっているのが会派ですので、それぞれの会派内では、大きな方向性の違いはないと思います。

テーマ:選挙活動

――選挙活動で一番大変だったことと、面白かったことは。

あべ:私は選挙を8回、戦っています。県議会議員は1万人の人に、名前を書いてもらわないと当選できませんが、それだけ多くの人に、どうやって会うのかが一番大変です。議員になると話を聞いてもらえる機会は増えるのですが、議員になる前は、話を聞いてもらうことも難しいのです。

選挙活動で面白いことは、人に会うことです。一人一人、違う歴史と悩みと喜びをもち、それを聞かせていただき、地域を変えるところまでもっていくことが仕事です。人と会うことは大変なことですが、やりがいがあって、面白くて楽しいことでもあります。

――選挙活動の中でSNSをどのように活用しましたか。

渡辺:政治家のアカウントでも、SNSはなかなか見てもらえません。選挙前、私は会社員でしたので、もっと見てもらえません。また、公職選挙法では、選挙期間前は選挙をにおわす文言を使ってはいけないため、選挙管理委員会に何回も通い、文言の確認をして検討しました。そこで、プロフィール動画をしっかりと作ることにしました。自分だけにフォーカスを当てるのではなく、自分に関わってきてくれた人たちに出演していただくことで、若者の政治参加にも一役買います。また、出演者の友人にも、広がっていくと思います。チャネルを増やすことで、政治参加への一歩を踏み出しやすいように、SNSを活用しました。

年代によって使うSNSも違うのですが、LINEはどの年代の人も使っていますので、公式アカウントを作り、意見を送ってもらえるようにしています。子育て中のお母さんをはじめ、若い世代の人達から、たくさん意見を寄せてもらっています。

トークライブを終えての感想

山口朔矢:たくさんの方にお集まりいただき、ありがとうございます。2時間という短い時間の会ですが、6月からずっと準備を重ねてきて、zoomでたくさん、ミーティングもしました。10月初旬には、5人の登壇者の方が対面で全員集まってくださったことに、恐縮し、また驚きもありました。


私は政治に対して興味があったほうですが、このイベントでさらに身近に感じるようになりました。政治は国が中心となって動いていると考えていましたが、我々市民から上がっていく政治を実感できたことが、すごく大きな収穫でした。

後藤亜由水:普段は東京の大学に通い、東京で生活しています。東京で、ゼミの仲間などとする政治の話はスケールが大きいものになりすぎたり、理論的なものになりすぎたりします。どこか手が届かない、自分たちではどうにもならないというような空気がありました。群馬に戻ってきて、このイベントを企画したり、ほかの政治参画を促進するイベントに参加すると、こんなに議員さんと近い距離で話をすることができ、ほかの参加者の方と一緒に考えることができます。地方政治に、実践的な民主主義の可能性を感じました。

最初は、参加者の申し込みがなかなか増えず不安になりました。また、イベントの日が近づくにつれ自分自身がナーバスになってくることもありました。上毛新聞にイベントが告知された時に、渡辺議員とLINEで連絡を取らせていただきました。「新聞の反響はあまりなかったようです」とお伝えすると「参加者の人数ではなくて、一人でも心を動かせるなら価値があると思います」と返信をいただけました。議員さんは、そのようにこのイベントに向き合ってくれているのだから、私もがんばろうと思って、この場に立つことができました。


 今日は、来ていただいてありがとうございました。

あべ:参加していただいてありがとうございました。ナビゲーターのおふたりにも長い時間をかけて、素敵な会を作っていただきありがとうございました。

やりきれなさというテーマがでましたが、この子育て環境を変えたいと思って議員になったのですが、なかなか進まなくてやりきれなさを感じることがあります。しかし、何も変わっていないわけではなく、一歩ずつ、変わっているとは思います。時間がかかることですので、皆さんに参加してもらわないと続けていくことができません。皆さんと一緒になって、世の中を一歩でも前に進めていけるように取り組んでいきたいと思います。

私は議員のインターンシップもやっていますので、興味のある方は公式LINE等でメッセージをいただけたらありがたいです。

亀山:今日は本当にありがとうございました。投票率の低下、政治への無関心の何が問題かというと、当選ラインが下がってくると、特定の団体の人しか議員になれなくなってしまうことです。そうすると、皆さんの意見が実際の政治の場に反映されなくなります。投票率を上げるためには、我々議員が、もっと身近に感じていただける活動をしていかなければならないと思いますし、また皆さんに納得のいく結果を出さなければならないと思っています。今日をきっかけに、議員の活動に少しずつ興味を持っていただけるとありがたいです。

渡辺:今日はありがとうございました。また、会を開催するにあたり、大学生2人が努力されていました。特に、学生2人が、議員5人を相手にするのはなかなかできることではないと思います。その裏には、若者に政治を身近に感じて欲しいという、2人の強い気持ちがあり、それが私たちに伝わったからだと思います。私も、議会では若者の代表と言われていますが、同時に、私は下の年代に期待しています。社会や世の中に対して思うところもあるでしょうし、また地元のために働きたい人も出てくると思います。若い人と一緒に、街を作っていきたいです。 

何かアクションをいただければ、我々は120%の力で応えていきます。この会が終わっても、身近に感じ続けていただきたいです。

登壇者

あべ ともよ 群馬県議会議員

 妊娠・出産を経験する中で気づいた様々な生活の課題への取り組みが県議としてのスタートとなった。県民の声を聞くことを政治活動の柱とし、社会的に弱い立場に立たされている方々を支えるため、女性の立場から訴えている。また、働く環境を整えるため、主に中小企業への支援に取り組んでいる。

亀山 貴史 群馬県議会議員

 男性議員初となる「育休」を宣言し、都道府県議会規則改定のきっかけとなった。三児の父親として実感した育児の課題点も政策にも反映しつつ 桐生市が直面する人口減少・少子高齢化等の課題解決に向けた活性化策も提言。「医療・教育・文化スポーツ振興」を軸に、安心して生み育てられる地域づくりに取り組んでいる。

渡辺 隆宏 高崎市議会議員 

 27 歳の元銀行員、今年4 月の高崎市議会議員選挙では、平成生まれとしては初となる当選となった。現在は高崎市議会議員として活動中。銀行員時代に培った靴底を減らす精神のもと、機動力を活かし地域の課題解決に取り組む。現役世代の代表として身近な街づくりと、高崎市の魅力ある地域づくりのため力を入れている。