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全国群馬県人図鑑-グンマーズ–vol.2大澤直美さん×石田陽介さん【後編】
全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、県外在住の県ゆかりの出身者、先輩方をお招きして現在のお仕事の話はもちろん、県内で過ごした学生時代の思い出、地元への熱い思いなどを丸ごとインタビューする新企画。
後編は高女の生徒会長・小林さんの質問から始まります。自分ではどうにもならない壁を乗り越えるには? 視聴者の質問への回答から、お二人の深い群馬愛も垣間見える最終回です。
今の行動は未来のエネルギーになる
西部 お二人から「始めの一歩をどう踏み出すか」というお話を聞きましたが、小林さん自身、こんなことをやってみたいけど、なかなか踏み出せないようなことってありますか?
小林 今、生徒会で投書箱を置いて学校に対する意見や校則に対してみんなが感じていることを話し合ったりしているんですけど、学校を良くしたいと思ってみんなで出した意見でも、実際に実現までつなげるのはなかなか難しいと感じています。
私たちだけではできることに限りがあるのが、すごく悔しいです。任期もあと半年くらいしかないのですが、やりたいことがあっても自分の力ではどうにもできない壁にぶつかってしまった時、お二人はどんなふうにしていたのか聞きたいです。
大澤 私も高女時代のことを思い出しながら二つ思ったことがありまして、一つは今、小林さんは生徒会長の立場だから、自分の思いと生徒みんなの思いを背負って実現させたいと動いているわけですよね。それは、とてもすばらしいこと。もしかしたら、任期中に結果は変わらないかもしれない。それでも一生懸命やっていること自体が必ず次につながると思うので、動いていった方が良いと思います。
二つ目は私自身の高女時代の話で、当時高女には英語のALTの先生がいなかった。先生にお願いしたら「ま、いずれ2、3年後には」とか言われて、「いや、今すぐ必要なんです! これからの時代には」と反論したのですが、やっぱり動いてくれなかったので、校長室の掃除当番だった時に校長先生にも直談判してみたけど、全然動いてもらえなくて。
高高にはALTの先生がいたので、高高の友だちに頼んでそのサムっていうALTの先生に会わせてもらって指導をお願いしたら「水曜の放課後なら行ける」と言ってくれて。それで高女の英語の先生と校長先生に伝えたら「常任は無理だけど、サムが良いのなら来てもらおう」ということで週一回放課後に教えてもらえるようになったんですね。
その時も希望は100%かなわなかったけれど、行動を起こしたことがすごく自分自身のエネルギーにはなったと思うので、失敗も必ず良い経験になります。ぜひぜひがんばってほしいなと思います。
西部 ありがとうございます。もし陽介さんも付け加えることがあれば。
石田 高校時代、私は運動しかしていなくて、具体的な高校時代のアドバイスはないのですが、Aのルートで壁に当たったらBのルートを見つけてみる。それでもダメだったら…悔しいですよね。その悔しさが自分だけの思いの時もあれば、いろんな思いを背負っている時もあるので、そういう悔しさってなかなか消えないですよね。
でも、その悔しさを忘れず、時間はかかってもいつかは成し遂げられると思って前を向く。その繰り返しだと思うんです。世の中で成功している人も絶対に失敗の方が多いはずで、そういうサイクルを繰り返しているうちに、どんどん大きなことや意義深いことができるようになっていくのではないでしょうか?
壁に当たった時のできなかった感覚とか、何ができなかったのかをしっかり認識し続けることが、未来の成長につながると思います。
西部 ありがとうございます。小林さん、どうでしょう?
小林 お二人にとても良い言葉をいただけて、とってもうれしいです!
西部 小林さんと大木さん、良いチームだと思うので、二人で残り少ない期間だけど、やりたいことを進めていってほしいと思いますし、加藤さんとも連携してはいかがでしょうか?
今日つながったのも何かの縁ですし、高高と高女でお互いの生徒会運営の話をしてもらうと何かヒントが見つかるかもしれないと思うので、横のつながりを作ってもらえたらうれしいです。本当に応援しています。
小林 ありがとうございます。
群馬を最も感じるのは高崎駅
西部 ここで視聴者からの質問が届いています。「お二人は群馬で一番好きな場所はどこですか?」 一言ずつお答えいただけますか? 陽介さんから。
石田 桜の時期の観音山です。
西部 いいですね!
大澤 私は高崎駅です。
西部 意外な答え(笑)。なぜですか?
大澤 アメリカから日本に到着すると、成田か羽田で母国に帰ってきた実感は湧きますけど、やっぱり高崎駅に到着してホームに降りた時の、ああ、やっと、これが本当に帰ってきた感覚だよね! とすごく思いますし、松井田町から高女に通っていた時代、高崎駅を毎日2度通過しながら青春を過ごしましたので、そういう意味でも高崎駅、パッと思いつきました。
西部 なるほど〜。ありがとうございます。もう一問、寄せていただきました。「差し支えなければ、お二人が海外で最初にぶつかった壁について教えてください」。陽介さん、覚えていますか?
石田 フランスに行った時、フランス語がほとんどしゃべれなかったので、最初の壁は語学でした。それでも拙い英語にボディランゲージも交えて、一生懸命伝えれば伝わるんですよ。それが通用しない人ももちろんいますけど、それを繰り返していって結果的に海外で非常に良い経験ができ、良いお客さんにもたくさん恵まれました。まだ勉強中ですが、語学の壁はそうやって克服しました。
西部 ありがとうございます。直美さん、お願いします。
大澤 はい、私はホームシックです。世界の反対側に来ているので、帰るにしても遠いし、お金もかかります。だから、すごくホームシックになりました。群馬が恋しいとか、日本を大切にしたいとか、そういう気持ちが募ってきて、群馬県人会をやったり、今の仕事にもつながっているのかなぁと思います。
西部 ありがとうございます。お二人とも柔和なので感じられませんが、多分現地では相当タフなハードシングスを越えているはずなので、いろいろな経験を背負って今のお二人の包容力があると改めて感じる今日の会となりました。
最後に一言ずつ感想をいただいてクロージングしていきたいと思います。まず加藤さんから、最後に今日の感想やお二人へのメッセージなどあればお願いします。
加藤 はい。世界は広いとお二人の話から学ぶことができました。自分も前から海外に挑戦したい気持ちも少しあるのですが、海外に出ると人ってこんなに変われるというか、そんなすばらしさを感じることができて、本当にいい経験になりました。
それから高女のお二人、高高の生徒会もこれからがんばりが必要な感じで共有できることがあるかどうかわかりませんが、何かありましたらお願いします。
西部 ありがとうございます、加藤さん。小林さん、最後に感想をお願いします。
小林 今日お二人の貴重な話を聞けてとてもうれしかったです。お二人が高校時代から歩まれてきた道ってなかなか前例がないことだと思うんですが、勇気を持って行動した道が今後、私たち世代のお手本になるのかなぁと。今の私たちの高校生活に重ね合わせると、チャレンジから伝統が作られていくと感じたので、自分も、お二人からいただいた言葉を胸に残りの生徒会活動をがんばって、伝統をただ重ねるだけじゃなく、新しい伝統を作り上げていくような生活が送れたらいいなぁと思いました。
また、今日の会議で私たちの文化祭、椎樹祭のことで高高を参考にしようという話も出ていましたので、ぜひ参考にさせていただきたいです。よろしくお願いします。
西部 本当に連携してもらえたら企画者冥利に尽きます。ありがとうございます。では、大木さん、お願いします。
大木 今日お二人の貴重な話を聞いて、その行動力に驚かされました。特にALTの話とか、すごいびっくりしました。自分は結構面倒くさがりで、行動起こそうと思っても面倒くさいからいいやとなってしまうことが多いのですが、行動に移すことが自分のやりたいことの実現につながることを学べて良かったです。ありがとうございました。
西部 3人とも本当にありがとうございました。自分の考えをしっかり発言できていて本当にすばらしいなって思いましたし、何よりこうやって時代を越えて縦のつながりが作れたことはかけがえのないことだと思っています。
最後に質問が来ていました。「海外にいて一番食べたくなった群馬のものは?」というご質問が来ています。ですので、お二人は質問の答えをつけ加えてラストコメントとしていただけますでしょうか?
石田 では私から。みそおでんですね。こんにゃくにみそだれつけたあれを食べたくなりました。今日は私のベースというか、すべてを育ててもらった群馬にこういった形でかかわらせていただいて、少しでも若い皆さんの力になれたら本当にうれしいなと思って、幸せな気持ちでこの時間を過ごさせていただきました。
こういった場を作っていただいった西部さん始め、ご一緒いただいた大澤さんもありがとうございました。
西部 ありがとうございました。では、直美さんラストコメントをお願いします。
大澤 そうですね。群馬の食べものは、おっきりこみ、です。平べったいうどんってあんまり世界にないですし、中にいろんな群馬の具材が入っているのもすごくおいしいですよね。今、まさに食べたくなりました。最後の感想としては、私自身も現役の生徒会長さんとこんなふうにお話しさせていただけるなんてすごく刺激になりましたし、あとこの「湯けむりフォーラム」が比較的新しい県の企画で、群馬を挙げてがんばってらっしゃるなぁとニューヨークから拝見させていただいておりました。
湯けむりというのも、群馬はたくさん温泉があるから湯なのでしょうし、またそこに熱もあるので、このままオール群馬でどんどん群馬も日本もいい場所になっていったらいいなぁと思います。本日は貴重な機会をどうもありがとうございました。
西部 お二人ともすばらしいコメントをありがとうございました。そして、忙しい年の瀬にこの場を選んで最後まで聞いてくださったたくさんの方々も、本当に今日はありがとうございました!
登壇者
大澤 直美 ニューヨーク群馬県人会主宰
1983 年生まれ。高崎女子高校卒。
高校卒業後渡米、NY で大学進学。米CCE認定グローバルキャリアカウンセラーとして2万人以上を支援。
(株) マイナビ米国法人代表をへて2016 年、国際人材育成の総合コンサルティング会社・NY キャリアアカデミーを設立、留学支援などを手がける。英語は独学、TOEIC990点満点。絵本やクールジャパン関連の翻訳も多数。「ニューヨーク群馬県人会(会員185 名:2022 年時点)」会長を務め、ふるさと群馬活性活動はライフワーク。
年間約2カ月を群馬で過ごし、県内の若者育成プロジェクトにも多数従事。2013-14 年、上毛新聞オピニオン委員。2018-19 年、「上毛かるた」英語版改定アドバイザーなど。3 児の母。
石田 陽介 ソムリエ
1979 年生まれ。高崎高校卒。
大学卒業後、振付家・ソムリエとして活躍。2010 年よりソムリエに専任し、フォーシーズンズホテル、星野リゾート、オリエンタルランドにてソムリエやマネージャーとして経験を重ねる。星野リゾートのレストラン「ユカワタン」勤務時から日本酒の魅力と可能性を強く感じ、国際唎酒師、WSET Level 3 Sakeの資格を取得。2017 年に欧州の多くの人々に日本酒の魅力を伝えるために渡仏。パリではRestaurant ENYAAにてマネージャーを務め、2021年に帰国。現在は株式会社ノットワークの代表として発酵デパートメントへのコンサルティング等、ガストロノミーや芸術文化に関わる事業を展開。
西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO
前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。