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全国群馬県人図鑑-グンマーズ–vol.3国井健輔さん×高橋史好さん【前編】

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全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、さまざまなフィールドで活躍する県ゆかりの皆さんをお招きして、県内で過ごした学生時代の思い出、地元への熱い思いなどを丸ごとインタビューする湯けむりフォーラムの新企画。

2月10日に開催された第3回は、出身地の社会人サッカークラブ「邑楽ユナイテッドFC」の企画運営を支える国井健輔さんと、桐生で東南アジアの三輪タクシーを走らせる事業「TUKTUKing」を始めた高橋史好(ふみこ)さんが登場。県外に住みながら群馬のユニークなプロジェクトにかかわることになったお二人の思いを、高校生ゲストと一緒に深掘りしていきます! 当日Zoomで繰り広げられたトークのダイジェスト版を前・中・後編に分けてお届けします。

新生サッカークラブが結んだ地元との縁

司会・西部沙緒里(以降、西部) 今日はゲストのお二人の母校である中央中等教育学校と太田高校から参加してくれた6人の高校生の皆さんも交えて大所帯でお届けしていきます。ゲストのお二方、ご用意いただいた資料を元にこれまでの経歴をお話いただけますか? まずは国井さん、お願いします。

国井さん(以降、国井) はい。私は太田高校出身で、当時は野球部に所属していました。今日は野球部の学生さんが来てくれているとのことで、すごく楽しみにしております。群馬に住んでいたのは高校までと社会人の最初の3年間で、現在は東京の練馬区に住んでいます。

今、邑楽ユナイテッドFCという社会人サッカークラブにかかわらせてもらっていますが、東京に住みながら群馬のチームにどういうかかわり方をしているのか、どういうきっかけで活動しているかをお話したいと思います。

今日は母校の硬式野球部の皆さんも参加してくださっているので、私の高校時代は大体想像がつくと思いますが、平日は野球、土日もシーズン中は毎週試合でした。勉強も自分なりにがんばっていました。右下の「4STEP」は、私が使っていた数学の参考書です。今でもあるのかな? 部活と勉強しかやっていないような高校時代でした。

大学卒業後、JTBに就職してすぐ前橋支店に配属されました。旅行に関する事業をいろいろ企画していましたが、思い出深い仕事の一つが「早慶戦日帰り観戦ツアー」です。

2006年に早稲田実業学校の斎藤佑樹投手が甲子園で優勝しましたが、彼は太田市出身なんですね。その後、早稲田大学に進学した彼を応援する機運が盛り上がっていたので、県内の野球少年に東京六大学野球を見てもらい、群馬県出身の選手と交流できる機会を作りました。

高校生の頃は全く大学野球のことを知らなかったのですが、大学入学後に初めて早慶戦を見て、レベルの高さや華やかな応援に魅力を感じました。調べてみると、当時の六大学野球には群県出身の選手も多く在籍していたこともあり、県内の子どもたちに大学野球に興味を持ってもらいたいと思ったのです。

ここから少し飛んで、今私が取り組んでいるプロジェクトの話です。今日の話の中心でもある「邑楽ユナイテッドFC」は2019年に設立され、10年かけてJリーグを目指す目標を立てています。

(上の図の)右の三角形を見てください。J2にザスパクサツ群馬のマークがあります。邑楽ユナイテッドFCは今、一番下の群馬県社会人リーグの1部にいます。3部から参入して2部、1部と上がってきました。各カテゴリーで優勝すると上に上がれるので、邑楽町のような小さい町からでもJリーグを目指せる、非常に夢のあるシステムになっています。

 

私が邑楽ユナイテッドFCを知ったのはインターネットでした。たまたま別の理由でチームのスポンサーになっている企業のホームページを見ていて、その存在に気づきました。地元なのですぐピンと来てクラブのサイトを見始めたら、どんどん引き込まれていきました。

特に社長の中村和也さんが動画で「スポーツの連帯感を醸成して地元を活性化させたい。邑楽町から本気でJリーグを目指したい」と語っていて、地元にこんな人がいるんだと驚いて、感銘を受けたんですね。それで「もしかしたら自分の経験からお役に立てることもあるかもしれない」と思い連絡し、1週間後に地元で中村さんにお会いしました。

チームの遠征費やトレーニング費用等の資金的な課題があるだろうということは理解していましたので、企業連携とかこちらからもいろいろ提案する中で、クラウドファンディングをやってみようという話になり、新たに運営メンバーを募りました。どのくらいの金額を目標にして、どういったことをPRしていこうとか、支援者へのお返し(リターン)は何にしようとか、いろいろ決めなければいけないことがあるので、週一のZoom会議で企画を詰めていきました。

結果的に100万円を超える資金が集まり、140人の方に応援していただきました。上の右の写真は最終日にみんなで集まった時のものです。コロナ禍でしたので、社長と会うのはこの時2回目で、他のメンバーとは初対面でした。支援者からは非常に熱いコメントもいただいて、私も今でも時折見返してしまうくらいです。クラブにとっても、こうしたサポーターが集まってくださったことは大きな財産になったかなと思っています。

ところで、サッカークラブにはどんな仕事があるのかと言うと、大きく分けて監督業と社長業の二つです。監督の仕事はチームを強くして試合で勝てるようにしていくこと。私はサッカー経験者ではないので監督の仕事はサポートできません。1ファンとして応援しています。一方、社長の仕事は“フロント”とも呼ばれますが、チームの運営ですね。スポンサーやパートナー企業を募ったり、イベントを企画してファンを増やしたりしながら経営していきます。私は主にこちらの仕事をサポートしています。

実際には距離もあるのでなかなか現場に入ったり、地元に帰ったりすることはできないのですが、現在の活動に地元のつながりを活かせるところもあります。今年のお正月には太田高校野球部の同期で集まりましたが、そのメンバーの中に地元でクリニックを開いたお医者さんがいるのでパートナー企業になってもらったり、県内の高校で野球部の監督をしている同期にも相談して、同高の生徒向けに中村社長の講演会を開かせてもらったりしました。

高校時代のインド留学が事業の起点

西部 国井さんありがとうございます。続いて高橋さんお願いしてもいいですか?

高橋さん(以降、高橋) はい。よろしくお願いします。私は慶応大学の新3年生で、大学に在学する傍らで事業やプロジェクトをしています。

2000年に高崎に生まれ、地元の豊岡小学校から中央中等教育学校という公立の中高一貫校に入学しました。英語教育に特色があり、プロジェクトワークがカリキュラムに含まれている、かなりユニークな学校です。

ただ、当時の私が優秀で真面目な生徒だったかというとそうでもなく、両親や学校の先生に突っかかるような、反骨心がメラメラしているような生徒でした。そして、「とにかくここではない、外の世界を見てみたい」という思いが募り、高校2年生の春、単身でインドに飛び立ちました。

紆余曲折あり、大きな目標ができ帰国。高校を一つ下の学年と一緒に卒業しました。現在22歳ですが、インドで起業家という新しいロールモデルを見たことが現在進行中の自分のプロジェクトや目標と大きく関係があるので、インド留学の選択は良かったと思っています。

ここからが、今取り組んでいるプロジェクトや事業のお話になります。主な事業は3本柱で、一つ目がTikTokの運用です。実は高校時代から「群馬の女子高生がインドに行ったら」という視点でコンテンツを作ったら面白いのでは? と思っていくつかアカウントを運用しておりましたが、3カ月半くらいで1万人弱のフォロワーを獲得することができました。

二つ目が今日のメインテーマになる群馬のプロジェクトです。インドの高校時代にほれ込んだ三輪ローカルタクシー“トゥクトゥク”を、群馬で走らせてみたいという発想から始まった事業です。トゥクトゥクは中央中等時代に私が選んだ課外活動のテーマでもあったので、それを3年越しで実現させたような感じでしょうか。桐生市で2年以内に10台以上のトゥクトゥクを走らせる、トゥクトゥク特区プロジェクト「TUKTUKing」を行っています。去年の冬に3台目の納車が行われまして、桐生市に行くとトゥクトゥクが走る光景を見ることができます。

三つ目のプロジェクトはYouTubeチャンネルの運用です。インドに滞在した経験のある学生を集めて「日本人がインド文化を学ぶ」というコンセプトでコンテンツを作っています。運用開始から2週間ほどで収益化のラインを越え、現在登録者約15万人の大きなチャンネルに成長しました。インドのZ世代に訴求するチャンネルとしては国内最大のメディアとなっています。優秀なエンジニアさんを輩出したり、名だたる企業のCEOの出身校であるインド工科大学がメディアパートナーで、現地のベンチャー企業とのタイアップも行わせていただいております。

視聴者からは「自分たちの文化を学んでくれたのがうれしい」「日本のことが大好きになった」と非常に温かいコメントが寄せられるチャンネルです。日本国内のクリエーターさんでもなかなかコメントが1万件つくのは珍しいのですが、熱狂的なファンの方がたくさんコメントを書いてくださり、シェアしてくださったおかげでどんどんアカウントが成長しています。インドの若者の消費動向調査やプロモーションなど日本企業向けのサービスも展開しております。

実は3カ月ほど前、日本のITスタートアップにこのメディアは売却しまして、次はインドのジュエリーブランドの販売をメイン事業にしようと奮闘しているところです。インド×日本の軸の中で、自分に合う領域を模索しながらがんばっております。

西部 ありがとうございます。お二人のお話、面白いですね! 今日は「県外に住みながら群馬のプロジェクトにかかわる実践者」のゲストとして出ていただいていますが、そこにとどまらない活動領域、活動範囲があって、聞きたいことがたくさん浮かんできますね。

(中編に続く)

次回はいよいよクロストークに突入!

(ライター:岩井光子)

登壇者

国井 健輔

1980 年生まれ。太田市出身。高校時代は野球部に所属。都内の大学卒業後に㈱JTB に入社。群馬県内の支店に配属され、法人営業や地域活性化に関する企画営業を担当。その後、本社およびグループ会社で事業開発・事業管理を経験。現在は都内IT企業に勤務。2020年より、地元・邑楽町からJリーグを目指すサッカークラブ「邑楽ユナイテッドFC」の運営をサポート。
クラウドファンディング企画やスポンサー営業等のビジネス面を中心に支援。クラブの目標は、2029 年までにJ リーグに加盟すること。
3 男児の父。

高橋 史好

2000年生まれ。高校在学中に単身でインドへ。16歳の時、インド人起業家との出会いがきっかけで起業を志す。在学中に「インドJKの日常」というテーマでTikTok の運用を開始。慶應大学に進学後、群馬県でトゥクトゥク( 東南アジアの三輪タクシー) の走行を目指し” TUKTUKing” プロジェクトを開始。桐生市で3台が導入され、2年以内に10台の走行を目指している。
2020年に開設したインド向けYouTubeチャンネルは2週間で収益化達成、現在登録者15 万人。2022年、同YouTube 事業を日本のスタートアップに売却。次の事業に向け準備中。

西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO

前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。

布川 大翔 県立太田高校2年生(当時)

宮下 誉生 県立太田高校2年生(当時)

石倉 希実 県立太田高校2年生(当時)

丸山 大輝 県立太田高校2年生(当時)

𠮷澤 慶彦 中央中等教育学校5年生(当時)

原 隆太 中央中等教育学校5年生(当時)