全国群馬県人図鑑-グンマーズ-vol.7 石村大輔さん×樺澤まどかさん【後編】

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全国群馬県人図鑑(-グンマーズ-)は、県外に住む県ゆかりの先輩方をペアでお招きし、おふたりの母校の現役高校生も交え、学生生活と現在の仕事とのつながりや故郷への熱い思いを聞き出していくトークセッションです。

ラストの後編は、群馬の魅力の話から。「ミーハー気質が群馬県人のあったかさにつながる」説は、アイドルを経験した樺澤さんならではの考察?  専門性の高い理系から柔軟性のある進路選択をしてきたおふたりのお話も、クライマックスへ。

ミーハー精神は群馬県人の魅力?

西部 おふたりは群馬県外に暮らしていますけど、今、群馬の価値や魅力をどんなふうに感じていますか? 

石村 そうですね。すばらしいのは、人間の力を使わなくても楽しめるレジャーがめちゃくちゃある。温泉とか山とか川とか湖とか。やっぱり東京って人間が作らないと場所にならないから。

西部 表現が面白い!

石村 だってそうじゃないですか。自然の力で形成されたものを、地元の人間がちょっと整えて観光地ができたりするってすごいことだと、東京にいると思うんですよね。僕の住んでいるまちは物価が高くて、コンポストをやる時も土をいじる場所が必要なんだけど、チャリンコで20分くらいの隣町まで行ってやっているんですよ。群馬はそういう場所がたくさんあるし、それが東京にはない豊かさなんだなぁって。

西部 たまには(群馬に)帰ります? 

石村 帰りますね。やっぱり自然をたまに吸いたくなるんでね。

西部 まどかさんはどうですか?

樺澤 これは私の個人的な主観でしかないんですけど、群馬の人は意外とあったかい人が多くて、偏見かもしれないんですけど、良い意味でミーハーな人が多い気がしています。群馬に住んでいる時は実家の親とかおじいちゃん、おばあちゃんの方言がきつくて、家庭内の会話が常にキレ気味のテンションで聞こえていたんです。

でも、一度アイドル時代に前橋のイベントで歌を歌わせていただいたことがあって、多分会場にいたお客さんは、ほとんど私のこと知らなかったんですけど、まるで我が子を見守るような目で応援してくれて、「え? 群馬の人ってこんなにあったかいの?」って思ったんですよ。多分自分もそうだと思うのですが、群馬の人は有名人がいると、「この人、人気なの? 何?」みたいなミーハー精神で見に行って、一度見ると「応援し続けるわよ、がんばって!」みたいに言ってくれる人が多い気がしています。

ポーズをとっている女の子

中程度の精度で自動的に生成された説明

これは私の勝手な考察なんですけど、群馬ってイオンとかけやきウォークによくタレントさんが来るし、東京が近いから応援しに行こうと思えば行きやすい。そういう環境がミーハー精神を作っているのではないかと。ミーハーって良い意味で言っているんですが、東京の人たちほど周りに干渉しない感じでもなく、だからと言って超熱狂的に応援するわけでもなく、幅広く、誰でも応援します、みたいな。そこがめっちゃ魅力的だと群馬出てから気づきました。

西部 ありがとうございます。「嫌よ嫌よも好きのうち」みたいなね(笑)。群馬県人の特徴として、本当は好きなのに素直になれなくて、ちょっと群馬のことをディスってしまう一時期もあるんだけど、1周、2周回って「やっぱりええとこやん」ってなる傾向は北関東全般に言えるかもしれないですね。ちょうど東京がチラ見できる距離ですし。まどかさんの話を聞いていて、確かにミーハー精神はあるなって思いました。

メガネを掛けた男の子

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西部 ところで石村さん、今すぐでなくても将来的に、群馬でこんなことやってみたいなって妄想ありますか?

人, 屋内, テーブル, 食品 が含まれている画像

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石村 やりたいことは…、そうですね。僕が一時期勤めていた東京の設計事務所のボスが今、前橋工科大で教授をやっていて、建築で何かできたらいいかなと思っています。でも、僕は設計者が何かを作って、去っていくってやり方がちょっとできない。だから「やります」とは気軽に言えないんですよ。今日はいずれ関わりたいと思っている、という気持ちがあることだけ、まずお伝えしておきます。

西部 ありがとうございます(笑)。

石村 僕は足立区でご近所のクリエーターや職人さんたちと一緒にさまざまな設計やプロジェクトをやっているんだけど、それを今、東京に住みながら群馬でもやったらどっちつかずになっちゃいますよね。だから将来的な話ですが、例えば夏の気候が良い時だけ群馬を拠点にして活動する、とかね。

西部 群馬の夏は過酷ですが(笑)。

石村 そうなんですよね…。でも、中之条は標高高いから涼しいんですよ。僕は高校時代、エアコン使ったことなかったですもん。

西部 もしまどかさんもあれば。

樺澤 いずれ県外から群馬に、私のファンを集めたオフ会みたいなイベントができたらなぁと思っています。シドニーで出会った海外出身の方も、群馬は温泉があって、雪山もあって、スノボができるって言うと超うらやましいって言われるんですよ。だからこっちで出会った友だちも呼べたらいいなぁみたいな感じで妄想してます。

ラジコンを野球に活かした山本昌さん

西部 松本さん、これまでのご感想でも、ご自身の今の悩みでも何でもOKなのでお願いします。

白いシャツを着ている男性

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松本 私は自分で何かやると決めた時、1週間、2週間と続けていくうちにモチベーションが下がってきて、最後までやりきれないことが多々あります。そういう時、おふたりはどういうふうにモチベーションを保っているのかを聞きたいです。

西部 石村さん、どうでしょう? また深い質問が来ました。

石村 大変良い質問ですね。多分皆さん知らないと思うんですけど、中日ドラゴンズにいた山本昌さんって50歳までプロ野球選手をやっていたんですけど、現役時代リハビリ中にラジコンにのめり込んで、全日本選手権で入賞するほどめちゃくちゃ速くなって、その時使ったデータ分析やらを野球の方にも活かして、柔軟な発想で野球を長く続けてきた人なんです。

僕もゆるやかに長くやることを目標にしています。一気にがんばりすぎない。短距離走はできるけど、長距離走ができる人って意外とこの分野にいないんですよね。だから山本昌さんのラジコンの話と根本的なところは通じていて、違うことが本業を引きのばしてくれるみたいなことはあるので、息継ぎしながら自分の興味をどうやって引きのばせるか。モチベーションを保つためにも最初にがんばりすぎず、いろんなことをやりながら自分のやりたいことにつなげていくみたいなのが良いのかなぁ。

西部 ありがとうございます。まどかさん、どうでしょう?

樺澤 私も(松本さんと)全く同じ悩みを抱えています。モチベーションの保ち方がわからないです。ただ多分、モチベーションを保とうと思わないと続かないことって、あまり好きではないことだから続けなくて良いような気もしていて…個人的な意見ですよ、完全に。

石村さんがおっしゃった通りで、一気にがんばると嫌になってしまうから、続けられるギリギリのラインを保ってゆるいペースで続けていく。今、私はYouTubeをがんばって続けているんですけど、更新は月一ペースの超ゆる〜い継続です。モチベーションを上げなきゃと「考えない」ことが一番大事なのかなって、個人的には思います。答えになっていませんが。

松本 ありがとうございます。

西部 差し支えなかったら、どんなことを続けたいんですか?

松本 勉強のことなんですけど、1年生の時に学校の行事で東大を見に行って、その後2週間ぐらいはすごくやる気出てガァーッて勉強できたんですけど、その後プツッて切れてさぼりがちになってしまって、どうやったら続けられるのかなぁと考えていたんです。

でも、先ほどのお話では続けられないことはそんなに興味がないとか、あと、モチベーションを上げるのではなくて、ゆるく自分のペースを保ってやっていくという部分が心に残りました。

死を意識して変わったこと

西部 最後の質問です。群馬県が“始動人”と言って、新しい領域を開拓する若い人をどんどん増やしていこうとしています。そういう意味では、おふたりはまさに“始動人”だと思うのですが、何かを始める時に心の壁を越えて踏み出す秘訣、コツがあれば聞かせていただけませんか? 

石村 すごく難しい質問。僕自身、高校時代の話を思い出してもらえればわかるように「やります!」みたいな感じのタイプではないのですが、何か言えるとすれば、自分が感じる違和感にきちんと向き合うことかな? 

僕は徹夜ができないんですよ。設計をやっている人は徹夜したり、時間外で働くことが多い。でも、僕は大学の時から「徹夜しません」って決めて、一番忙しかった卒業設計の時すら、朝7時に行って夜10時に帰る毎日を過ごしていました。それでも、無事に設計で一番になって卒業できました。周りがやっているから自分もがんばろうと言ってしまうと、それがずっと続くことになってしまう。

あと、うちみたいに職人さんと一緒にやっている設計事務所も周りにないです。「設計者は先生だから、先生の言った通りに職人さんにやってもらわないといけない」みたいな教えがあるわけですね。現場と設計は距離をとらないといけない、と。でも、僕らはただの絵描きだし、作ってくれるのは彼らだから、一緒にやらないとおかしいよねって。そういう違和感を僕は忘れたくない。その感じが重要かなと思います。

西部 確かに違和感を大事にするのは、すごく大事だと思います。ありがとうございます。まどかさんはどうですか?

樺澤 私は始動人というより、「始めの一歩を踏み出してずっと一人で行く人」みたいな(笑)。私が常に意識しているのは「死」ですね。いつか自分は死ぬということ。数年前コロナにかかって、そんな重症ではなかったんですけど、めっちゃ苦しくって「ヤバい、死ぬかも…。海外に住んでみたかったのにできていない」って突然思って。それでワーホリ(ワーキングホリデー※)に行かなきゃって思い立ちました。

※日本と協定を結んでいる国や地域で休暇を楽しみつつ、滞在資金を稼ぐために就労も認める制度。若者同士の交流や異文化理解を主な目的としている。

年齢が上がってくると、周りの大切な人が亡くなったりして、死がリアルに感じられる経験が多くなります。コロナにかかって死を意識してから、迷ったり怖くなった時も、やりたいことやらなきゃ損でしょって考えられるようになりました。誰が何と言おうとやりたいことやっちゃえ! と考えられたら、始めの一歩踏み出しやすいじゃないかなって思います。

西部 おふたりとも良い答えをありがとうございます。ここで視聴者からの質問にも一つ、お答えいただけたらと思います。

高校3年生の方からです。

—今、自分の好きなことを仕事にする進路を選ぼうとしています。周りからは好きを仕事にするべきじゃないと言われますが、好きを仕事にしたら、好きが好きでなくなってしまうものなのでしょうか?

石村 難しいけど、大丈夫だよ。僕なんか20歳で大学入ってなんやらかんやらやっているし、やっぱり失敗をすることを恐れちゃいかんのではないでしょうか? みんなが進学しているからって進学しなくていい。まぁ僕は結局しているんだけど(笑)。やりたいことをやってみていいんじゃないかな。それで好きか嫌いかもわかると思うし。

西部 本当にそうよね。人生は1回で白黒決まるものではないし、試してみるのは私もおすすめします。まどかさんはどうですか?

樺澤 はい。私はお笑い大好きで、お笑いの会社に入って、好きじゃなくなったかと言われれば、好きは好きです。ただ、その好きの種類は仕事になったことで変わりましたね。テレビも仕事として別の視点から見るようになって、もっと深い部分で好きになった。

好きを仕事にしたら嫌いになることもあるかもしれませんが、もしそうなったら、「嫌いになったことがわかった」ってことが大事な気がします。それを知る前に挑戦しない方が、将来後悔しちゃいそうな気はします。

西部 同感です。最後に一言ずつ感想などいただきながら、この場を締めていければと思います。では、まず高校生のおふたりから。続いてゲストのおふたりの順でお願いします。

茂木 今日はこのような場をありがとうございました。自分の将来のビジョンが少し見えたような気がして、失敗を恐れることなく、プラスに変えていけるように何事も挑戦していきたいなと前向きな気持ちになりました。ありがとうございました。

松本 今回はこのような場をありがとうございました。来年の大学受験に向けて一つひとつできること、やらなければいけないことを自分のペースでコツコツやっていくことを目標に、一日一日を大切に過ごしていこうと思います。ありがとうございました。

石村 今日はありがとうございました。群馬のことを考え直せて、話せてすごく良かったなと思っているし、高校生の考えも聞けて感慨深かったです。今後皆さんが大人になった時、一緒に何かできたらうれしいなぁと思いました。ありがとうございました。

樺澤 本日はありがとうございました。私が前女生だった時の感じと、おふたりのしっかり度合いが全然違いすぎてびっくりしました(笑)。感動しました。OGとしても、とてもうれしく思います。これから進路について悩む時もあると思うんですけど、その時楽しいと思ったことに一生懸命取り組んでいたら何かにつながると思うので、無理しすぎず、今のJK生活を楽しんでください。ありがとうございました!

ライター・岩井光子

登壇者

石村 大輔 建築家

中之条高校卒業後、都内の測量会社に就職。その後、東京理科大学工学部第二部建築学科で学び、設計事務所勤務を経て、2017年に根市拓氏と2人で建築ユニット「Ishimura  +Neichi」設立。足立区を拠点に地元の職人さん、クリエイターと「Senju Motomachi Souko」を運営。生ゴミを循環させるしくみづくりとコミュニティ醸成を目的とした住民有志によるプロジェクト「あだちシティコンポスト」にも携わる。購入したマンションの部屋を自身で設計、リノベーションして暮らしている。2022年から日本工業大学、2024年から東京理科大学で非常勤講師を務める。

樺澤 まどか インフルエンサー

前橋市出身。実家はオクラ農家。早稲田大学先進理工学部を経て、同大大学院基幹理工学研究科ではロボット研究や科学技術を使ったアート作品制作を行う。2019年修了。吉本興業に入社し、マネジャーとしてかまいたち、とろサーモンを担当しながら同社のアイドルグループ・吉本坂46でも活動。2023年に退社後はワーキング・ホリデー制度でオーストラリアへ。インスタグラムフォロワー14万人超のインフルエンサー、人気YouTuberとして現地生活を紹介。海の向こうから上毛新聞のコラム執筆も担当。

西部 沙緒里 株式会社ライフサカス CEO

前橋女子高、早稲田大学卒。博報堂を経て2016年創業。「働く人の健康と生きる力を応援する」をミッションに、働き盛りの人が抱える生きづらさ・働きづらさを社会全体で支える環境づくりを進める。研修・講演事業、コンサルティング・アドバイザリー事業、Webメディア・オンラインコミュニティ事業の3領域で、全国の企業・行政・学校などとさまざまな協業や伴走支援を行う。 NPO女性医療ネットワーク理事、(独)中小企業基盤整備機構・中小企業アドバイザー。2020年東京からUターンし、新たに(一社)かぞくのあしたを設立。高崎市在住。

茂木 梓鶴 前橋女子高校2年

松本 咲 前橋女子高校2年