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ローカルメディアのいまとこれから:地域に必要な「編集」とは?

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テクノロジーの進歩によって、誰もがメディアになれる時代。全国各地でたくさんの『ローカルメディア』が生まれています。国が進める地方創生の政策とも相まって、行政が関わるメディアも少なくありません。長きにわたって地域の面白さを丁寧に発信しているものもあれば、予算の廃止とともに短期間で姿を消すものもあり、続けていくことの難しさも浮き彫りになっています。

このセッションでは、『ソトコト』編集長として日本全国のローカルメディアを継続してウォッチしている指出一正さん、雑誌『Re:S』や秋田県の『のんびり』『なんも大学』の編集長をつとめてこられた藤本智士さん、『ジモコロ』編集長として全国を取材し、近年では長野県の移住総合WEBメディアSuuHaaも手がける徳谷柿次郎さんをお招きし、ローカルメディアのこれまでとこれから、行政の関わり方などについてお話しいただきました。

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指出:『ソトコト』編集長の指出といいます、群馬県出身、高崎市立片岡小学校・片岡中学校の卒業生です。今日は僕が大好きな編集者である藤本智士さんと徳谷柿次郎さんにローカルメディアの話を色々伺います、よろしくお願いします。

徳谷:Huuuuという会社の徳谷柿次郎です。ジモコロというメディアを7年ぐらいやってまして、全国あちこちを取材していて、その流れで長野に移住して4年ですかね。4年経って色々関係性ができて、今年の3月に『SuuHaa』というメディアを長野県と、信濃毎日新聞と立ち上げました。39歳です!よろしくお願いします。

藤本:秋田のメディアをやっていたので秋田の人だと思われがちなんですが普段は兵庫県に住んでいます。東京に住んだことはなくローカルでやり続けています。『のんびり』というフリーマガジンや、今は『なんも大学』というWEBマガジンの編集長をやっていて、どちらも秋田県庁との仕事です。

ローカルメディアのこれまで

指出:まずローカルメディアのこれまでの動向、ここ10年ぐらいのことをざっと総括してくれると嬉しいです。

藤本:僕の実感としては東日本大震災がポイントかなと思ってます。震災の時に、シンプルに遠い東北の人に思いを馳せる、地方の人たちが他の地方の人たちのことを心配して、目を向け始めた。世の中の空気感として、地方に目が向き始め、そこから色々なローカルメディアも出てきたのかなと思います。

指出:『のんびり』はどうやって生まれて育っていったんですか?

『のんびり』第3号表紙

藤本:当時秋田は少子高齢化・人口減少化ナンバーワンと言われてたんですけど、間違いなく日本中がこれからそうなっていくなかで、一番高齢化が進んでるところで何かをやるほうが他の地方に役立つんじゃないか、「秋田で何かやりたい」と思ったんです。秋田で講演をしたときに、「秋田にこれから何が必要だと思います?」と質問されて、県庁の人に「こういうメディアが必要だと思います」ということを書いて送ったのが最初のきっかけです。

指出:『のんびり』って特徴的なタイトルだと思うんですが、ローカルメディアのタイトルについてはどうお考えですか?

藤本:その土地のメディアを作ろうとした時に、タイトルに地名や、秋田だったら「なまはげ」とかわかりやすいものを入れがちですよね。コンペのプレゼンテーションのとき「僕は普段関西に住んでいて、秋田に行ってみたいという話を周りで聞いたことがない。そこで表紙に『秋田』って書いてあるものがあって誰が手に取りますか?」と言ったんです。気になって手に取って読んでみたら全編秋田のことだった、というときに初めて「秋田良いかも」と思ってもらえるんじゃないですかって。それで、都会の人はみんなのんびりしたいと思ってるし、もうひとつ、経済指標的にはかなりビリに近いところに秋田はいたんですけど、そういうランキングの不毛さとか、「幸福度って価値観の差だよね」ということとかも含めて、「ビリじゃないんじゃない?」という趣旨で「NONビリ」っていう、ダブルミーニングで『のんびり』に決めました。

徳谷:あの表紙、毎回ちゃんとディレクションして作り込んでいて、県庁との仕事であそこまでできるんだということがすごくて。僕がSuuHaaをやるときも、「行政の仕事だからここまでにしよう」とは決めないで、自分のやりたいことをちゃんと提案しようと考えるきっかけになってます。

指出:では次は『ジモコロ』の話を聞きたいと思います。『ジモコロ』はどうやって生まれて、どうしてそのタイトルで、こういうスタンスになったんですか?

徳谷:クライアントがアイデムという求人会社さんなんですけど、「地方の仕事・求人みたいな切り口」が面白いんじゃないかということと、当時個人的に地方に旅行する機会が増えていて、「仕事にすれば経費で地方に旅しに行ける」と思って、ローカルメディアに振り切って提案しました。

『ジモコロ』という名前は、当時所属していた会社が『オモコロ』という人気サイトをやっていて、それと「地元」をかけて決めました。意味づけとしては「地元に転がっている文化的なことや仕事という価値を拾っていく」というのがありました。初期段階はお笑い寄り・企画寄りの記事が多かったんですが、やっていくうちにローカルの課題も見えてきて、今は真面目でシリアスなテーマも、間口を広く、わかりやすく、スマートフォンで読めるフォーマットで伝えるというのを目指して7年ぐらいやってます。

指出:最近の、全国のローカルメディアの動向を見て、徳谷さんはどう感じてますか?

徳谷:4,5年前に「ローカルメディアのことを話してください」と頼まれて年に30回ぐらい全国を行脚して、「こんなふうに企画考えて編集してます」と伝える講座をやった時期がありました。当時は「こんな短い時間で何も変わらない」と思ってたんですけど、それを聞いてた子たちが全国でローカルメディアを作り始めている動きがあって、そういう意味で『ジモコロ』がひとつの役割を良い意味で終えていってるというか、タネがちゃんと芽吹いているような、当時僕が「全国どこでもいきます!」ってやってたことが、無駄じゃなかったのかなと思えてますね。

指出:それはもう、のんびりチルドレン、ジモコロチルドレンが開花されていると思うので、すごく功績があると思います。

うまくいくローカルメディアの特徴

指出:次の質問です、ちょっと答えづらいかもしれないですけど、「うまくいくローカルメディア」と「うまくいかないローカルメディア」って、どこが、何が違うんですか?

藤本:今ローカルメディアってスタートしやすいじゃないですか、そのぶん一人でやりがちやと思うんですよ。で、自分で完結しちゃう人って多いんだけど、一人でやってると絶対行き詰まるんですよね。どこかでチームにチェンジできる人はうまくいくと思うんですよ。うまくアウトソーシングしながらチームとしてやっていく体制をつくれるかどうか。

徳谷:オーナーシップをどう意識するかということは大事だと思います。つまり、行政の予算が出ている間は続けられるけれども、予算がなくなった瞬間に「ハイ、終わりです」という状況をどう防ぐか。僕は最初からそこを意識して、もし『ジモコロ』が終わるとしたらどうするかという契約書を初めの段階で作ったんです。サッカーのクラブチームみたいにスポンサーが変わっても『ジモコロ』が残るように。長野県の『SuuHaa』に関してはそういう契約を作ってはいないですけど、もしなにかあったら自分でお金出して続けたいですという意志を最初から持って仕事に取り組んでます。

色んな人を巻き込んだ以上は、インターネット上にアーカイブした、取材させてもらった記事を、どれだけ長く残せるかっていうところも考えておかないといけない。デジタルってサーバーが落ちたら終わりっていう儚さも抱えているので。一方で、WEBメディアで始めたことを紙にまとめさせてくださいっていう提案もしたりとか。それぐらいの気概がないとローカルメディア、オウンドメディアっていうのは続かないと思います。メディアが無くなった時のライターの悲しそうな顔を今まで結構見ているので、契約面をちゃんと考えることって結構大事です。

行政とローカルメディア

指出:行政の話が出たのでその話をしたいと思います。行政が主体的にローカルメディアを作る場合、どんな関わり方が良い結果につながると考えていますか?

藤本:僕も『のんびり』を始めるときに契約書を書いてもらったんですよ。「このコンテンツの権利は、受託者である僕達にも半分ある」っていう内容で、書いたことないから県庁の担当者さんにがんばって作ってもらって、ふわ〜っと出してもらったんですけど(笑)。編集する人たち、ライター、カメラマン、みんな本気で、情熱注いで作ろうと思っていて、ただ、県のメディアだと権利が全部県の方にいってしまってそれが宝の持ち腐れになるということも多くて。だから、『のんびり』で特集を組んだものを後でまとめて一冊の本にしたりできるように、最初に契約を交わしたんです。それは結構大きかったと思います。実際『なんも大学』って去年で県の予算は終わったんですけど、そのままやらせてくださいということで、サーバーの管理を引き継いでやってます。これもそのための契約書を書いて、知事のハンコをもらったうえで。

徳谷:県庁の方達が持ってる情報ってすごく大事なんですよ。僕は普段コミュニケーション取っているのが長野県の北部が中心なので、そっち方面のネタに偏りがちになるのをどう分散するかというときに、県庁の方々といろいろな話をして情報を教えてもらってます。

それと人間関係って結局大事だなと思っていて。僕は長野で『SuuHaa』を始めるまでにも3年ぐらい県庁のお仕事をしていて顔見知りだったということもあって、僕がヘンなことを言っても理解してもらえてるというのはあると思います。

指出:お二人の話を聞いていて、行政の方々がそのメディアをどう理解しているか、温度感が同じかどうかは大事だなと思いました。『のんびり』面白いよね『SuuHaa』いいよねみたいな感覚を共有しながら、行政という立ち位置で一緒に作っていく編集部のメンバーである、ということが大事なんだと思います。徳谷さんがおっしゃるように、一人では情報網って少なかったり狭かったりするなかで、実は行政の皆さんが持っている情報は重要で、それを編集者のみなさんと同じような視点で面白がることができると良い事業になっていくのかなと思います。

ローカルメディアの役割とは

指出:ローカルメディアの役割って一体なんだと思いますか?ローカルメディアのターゲットは誰なのか?目的は何か?観光促進なのか、移住促進なのか、地元民の誇りを醸成することなのか。

藤本:群馬のメディアでも秋田のメディアでも、基本的にはよその人に知ってほしいというのがあると思うんですけど、僕はめちゃめちゃ中の人に向けて作ってたんですよ。僕は秋田にはスペシャルなものがたくさんあると思ってたけど、地元の人はなかなかそう思っていなくて。今はだいぶ変わって来ましたけど『のんびり』を始めた頃は特に。だから、『のんびり』の反響を全国で感じれば感じるほど心配だったことがあって、読んでくれた人が秋田に来た時に、駅前で地元の人に「どこ行くと面白いですかね?」と聞いたとして、「もう一回電車乗って青森まで行け」とか言いかねへんなと、これはやばいぞと。地元の人たちが「うちこんなええもんやったんや」って、手のひら返すように誇りを持ってもらいたいということで、比重で言うと7:3ぐらいで内側に向けてメッセージしてました。

徳谷:『SuuHaa』に関しては「移住促進」が主題としてあるので、東京をはじめ他県の人が長野をどう捉えるかというのは意識してます。あとは長野に住んでるとどこに行ってもめちゃくちゃおもしろくて、観光系のメディアとかパンフレット山ほどあるんですけど、そのなかで県庁がもともとやっている取り組みでは追いきれないもの、隙間にあるものを記事にしていきたいというのもありますね。

やってみて一個思ったことがあって、県庁が出しているプレスリリースの情報を噛み砕いて記事にするだけで、めちゃめちゃ大事な情報になるんですよ。一回「移住したら百万円もらえます」という情報があって、それを『SuuHaa』で記事化したんですが、ずーっと読まれてるんです。移住を希望する人にとってある種の「得」となる情報を、行政の人に取材して会話形式で読みやすくするだけで、良い情報になり得るというのはここ半年で気づいたことですね。

指出:ありがとうございます。僕はローカルメディアというと『枚方つーしん』(大阪府枚方市に特化したローカル情報サイト。開店・閉店情報をはじめ、地元の人間にしかわからないけれど、地元では大きな話題になる情報を届ける)がすごく気になってるんですけど、町の閉店情報・開店情報がひたすら上がってくるんですね、これが面白くて若い人の気持ちも捉えていることを考えると、今お二人が言ってくださったように、自分のところにある面白い情報をみんなで共有することが楽しくて、それがローカルメディアが果たしている役割なのかなと思いました。届けるための努力をしないと届かない情報が行政のPDFの中にあったりするので、それを柔らかく翻訳できる編集者がどれだけチームにいるかというのも重要かもしれませんね。

誰とつくる?ローカルメディアの体制づくり

指出:だいぶ話が盛り上がって来ましたね、まだまだ行きますよ(笑)。次はローカルメディアの制作体制について。例えば東京のクリエイティブチームだけで作るのか、それとも地元のクリエイターたちが入ってくるのか、そのあたりお二人のご経験を踏まえてどうですか?

藤本:僕は「半々」ていうのをいつも心がけていて。やっぱりよそ者の人がワーっと来てかっこいいもの作って帰っていくっていうだけだと、どうしても打ち上げ花火っぽくなっちゃう。もう少し長いスパンで、地元の人たちに何を残せるかを考えてます。地元の人たちだけで何かをやると、人間関係や派閥的な何かを超えられないこととか、どこかで頭打ちするところがあったりするんだけど、そこをよそ者は知らん顔して超えて行けたりする。よそ者と土地の人それぞれのメリットがあるから、両輪で走るのが一番良いと思ってます。なので『のんびり』の時は僕だったり、表紙を撮っていた浅田政志っていう写真家だったり、東京で活躍している人たちに声をかけつつ、秋田のメンバーが半分くらいいて、10人ぐらい全員でぞろぞろ取材の現場に行くんですよ。浅田くんがPENTAXのフィルムカメラで表紙の写真を撮っている、そのフィルム交換を地元のカメラマンにお願いする、普段デジタルだけ使っているとなかなかできないことで、そういうのも経験値になるし。

僕の場合、取材であんまりアポ取らないんですよ。それは役所対策っていうのもあって、行政の仕事ってネガティブな地域バランスという意味での「公平性」を求められるじゃないですか、この酒蔵を紹介しますって言うと「なんでそこだけなんですか?」という話が出たりとか。そのときに「いや、歩いてたら偶然出会ったんです」というので全部クリアしていったんですよ。行き当たりばったりでやることをそのまま方法論にするっていう。突然のアポって結構断られるんですけど、それに対して三回ぐらいアプローチしてなんとかOKいただくとか、そういう様子を地元メンバーに見てもらうってことも意識して。僕がいなくてもメディアが立ち上がっていけばいいなと思って。なので「半々」を意識してやってました。

徳谷:『SuuHaa』は信濃毎日新聞っていう歴史ある新聞社とやっているので、新聞記者さんたちのファクトをどう集めるかとか、持ってるネタ元の強さとかこちらとしても学びがあります。逆に会話形式の軽やかさみたいなものをこちらから共有したりしてます。

あと藤本さんの話を聞いていて、今後こう言おうって今決めたのが、「移住者とやってる」ということですね。僕自身も移住者だし、他のスタッフも移住した人やUターンした人が多いし。そう言った方が見栄えもいいなって(笑)。

指出:いいですね(笑)

ネタ集めと取材のコツ

指出:ここからはローカルメディアを作る上での方法論を伺っていきたいと思います。まずはネタ集めのコツや取材のコツについて教えてください。

藤本:『のんびり』のときは、なまはげとかきりたんぽとか、既に経済があるものはよそ者が触れるとややこしそうなので、そういうものはやらないようにしてました。そうじゃないものを盛り上げてそこに経済が生まれるみたいなことをやりたかったので。

『なんも大学』っていうWEBマガジンを始めた時はまた逆で、当時「秋田犬」とか「なまはげ」とか検索したときに、全然良い記事が上がってこなかったんですよ。そこで出てくるようなコンテンツをちゃんと県庁で作っていきましょうという考え方で、『のんびり』では触らなかったようなベタなものもやってました。

指出:王道のものをあらためてちゃんと伝えると。いいですね。徳谷さんはどうですか?

徳谷:事前に下調べをせずにいきなりその場で対峙するというケースが多いです。大体過去の『ジモコロ』の記事で自分が好きだなと思うのは、現地の友達が「ジモコロらしい人」を見つけてくれて、いきなりパァーンと対峙して、ゼロから心をほぐしながら取材するというケース。目の前で人間同士で向き合って、いかにその人に自分が面白い人間であるかということと、素直に好奇心を伝えて、どんどん心をほぐしていくと。

あとは全国でローカルネタを探す時はおもろい友達を見つけてその人に甘えるほうがいいです。「とびきり変な人を見つけてください」と言ってみたりすると、いきなり強い敵出てくるみたいな(笑)。そのときに「『ジモコロ』ってこういうメディアだよね」ということは伝わってないといけないですね。

藤本:「下調べしない」ってことで言うと、『のんびり』の場合は「僕だけ下調べする」っていう状態を作ってたんです。そうするとほんとにメンバーのみんながバカみたいな初歩的な質問したりするんです。でも読者の人たちの知ってることと知らないことのばらつきってすごく大きいので、丁寧に説明しようとすると超初歩的な質問も必要なんですよ。

そもそも編集とは何か?

指出:ではさらに核心に迫ります。二人にとって「編集」ってどういうものなんですか?編集者として「編集」という言葉をどう解釈しているか、それぞれあると思いますが。

徳谷:めちゃめちゃアホな言い方をすると「友達すごい作れる」のが編集者の僕の役割だと思ってます。僕が全国で取材したい人って基本的には仲良くなりたい人なんですね。「友達を作ることで自分の人生を豊かにしていく」ということができる特殊な職能なんじゃないかと思ってます。友達作りたい人におすすめですね、編集者。

藤本:僕自身本も作るし、商品開発もするし、イベントや展覧会も作る。編集といっても雑誌や本だけじゃないなというのはすごく思ってます。あらゆるメディアを編集するという考え方。じゃあ「編集ってなんなの?」っていうと、最近編集の大事な仕事って「空気を作ること」かなと思っていて。例えば、「政治の話ってしにくいよな、Twitterで政治のことつぶやくだけでフォロワー減るし。でももうちょっと政治の話できる空気ってどうやって作ればいいのかな?」とか。そういう時に、テキストメディアだけじゃなく多様なメディアをうまく使って空気を作っていくというのが編集者の大事な仕事かなと、現時点では思っています。

指出:ありがとうございます。僕は大学四年生の時から雑誌の編集者になって、ひたすら雑誌ばかりを作ってきたんですけど、藤本さんと徳谷さんが登場したことで編集という言葉が解放されたなって感じてます。編集というのは雑誌や書籍を作るだけにとどまらない、「社会の気分を編集する」ということをお二人はすごくやっていて、それがローカルメディアの中に形作られている。だから見ていて気持ちがよかったり、「仲間になりたい」と感じさせる、まさにそういう「空気」を作ってくれる良い編集者さんだなと常々思ってます。

これラブレターです(笑)。

藤本徳谷:おお〜

ローカルメディアのこれから

出:ローカルメディアはwithコロナの世界でどうなっていくと思いますか?例えばオンラインのメディアとオフラインのメディアと、どんなバランスになっていくのか。『SuuHaa』がこれからアプローチするとしたらどんな誘いの仕方をしていきますか?

徳谷:今一番大事にしているのは、僕自身が自分の時間を使って移住者を増やすことです。それが結果『SuuHaa』のおかげだったよって言わせる。その「お土産」を県庁の方に渡すことを目標に動いてます。二日ぐらい友達を案内して、面白い街の姿とコミュニティと、あと家まで見せます。一ヶ月前にやったら家族一組その場で移住を決めたんですよ。これは自分が住んでいる街だからこそできる移住の誘い方で、それを補足するように『SuuHaa』の記事がある感じです、移住を検討中の人だけでなく、移住「した」人向けの内容も意識して作っているので。そこは両方やらないと動かないんじゃないかな。その役割を担うのも、僕なりの『SuuHaa』の編集の仕方かなと思ってます。

藤本:最近兵庫県宝塚の清荒神という町や長野県の辰野町をはじめ、各地で建築や設計の人たちが、「町を編集する」という言葉を使いながら編集をやっています。空き家対策などに代表される地方の課題に対して、ストレートに編集の手法を入れられるのって実はそういう、設計や施工をできる人たちなんじゃないかと思ってます。

指出:今日訪れているこの場所は、古い家屋をリノベーションしたNAKAKONYAという場所なんですけど、ここを手がけているまちごと屋さんたちは、信用金庫と一緒に『まちの編集社』という、編集者の視点を持って街に盛り上がりを作るクリエイティブチームを作っているんですね。藤本さんがおっしゃったこととこの場所が非常に共鳴したなと思いました。編集とかローカルメディアの手法は広がっていると思います。

このトークセッションは高崎市の古民家を改装したスペースNAKAKONYAで行なわれた

徳谷:僕は銀行員の方が編集視点を持つとすごくいいなと考えてます。「これやりたいっす!」みたいな声のでかい若者と銀行員とを引き会わせて、若い人のやりたいことをお金や不動産の面でバックアップするということができたらいいですね。

質疑応答

質問者:私は行政職員です。一年間事業をやって、「こういう成果がありましたよ」と言えないと次の年に予算がつかないというケースがあります。藤本さんは秋田県で長い期間お仕事されてきましたが、県庁内を納得させる材料があったのでしょうか?

藤本:結論から言うと、成果出しました(笑)。めちゃめちゃ成果気にしてるんですよ僕。それは(行政の)みなさんの世界がそうだから、みなさんと一緒にやるから、「それは知りません」というのは違うなと思っていて。なので「この人たちがちゃんと評価されるにはどうしたら良いか」ということに関してもめちゃめちゃ頭使います。

メディアって「こういう特集が出来ました」っていうのをゴールにしがちなんですよ、でも僕は「出来上がるのがスタートだから」っていつも言っていて。例えば池田修三さんという秋田出身の木版画家さんがいて、『のんびり』で特集を組んだんです。でもそこがスタート。予算が無いなかなんとか10万円捻出して、出身地の公民館で展覧会やったり、僕自身が絵を自分の車に積んで全国回ったりして。特集作っただけでは終わらせないんですよ。めちゃめちゃしんどかったですけど、その結果生前もやれなかった美術館での展示ができて、「9日間で1万2000人来ました」みたいなことにつながって。

『のんびり』でやってるようなことって、僕としては長い目で見てやっていけばいいと思ってますけど、それを1年とか2年で結果出すために必死になってやりました。クリエイティブチームが「行政のみなさんに対して成果を作るんだ」と思ってチームになることが大事だと思います。

指出:今日は藤本さん徳谷さんからたくさんのキーワードが出ました。見た人はその中から大事な言葉を書き出してもらって、そこからもしかしたら「編集ってこういうものかな」みたいなことを感じ取ってくれたらなと思います。あらためまして藤本さん徳谷さんありがとうございました。

藤本徳谷:ありがとうございました。

(ライター:REBEL BOOKS 荻原貴男、撮影:合同会社ユザメ 市根井 直規)

登壇者

指出 一正 未来をつくるSDGsマガジン『ソトコト』編集長
株式会社ソトコト・プラネット代表取締役

『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。
群馬県「群馬県過疎有識者会議」委員、上毛新聞「オピニオン21」委員をはじめ、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」委員。内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員。環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員。国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」委員。総務省「過疎地域自立活性化優良事例表彰委員会」委員。農林水産省「新しい農村政策の在り方検討会」委員。UR都市機構URまちづくり支援専門家。一般財団法人地域活性化センターシニアフェロー。内閣官房「ふるさと活性化支援チーム」委員。内閣官房水循環アドバイザー。林野庁「森林空間を活用した教育イノベーション検討委員会」委員。BS朝日「バトンタッチ SDGsはじめてます」監修。経済産業省「2025年大阪・関西万博日本館」クリエイター。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「地方創生有識者懇談会」委員。
著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。趣味はフライフィッシング。

藤本 智士 地域編集者、有限会社りす代表

1974年生。兵庫県在住。編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』(2006~09)『のんびり』(2012~16)WEBマガジン『なんも大学』(2016〜)編集長。自著に『魔法をかける編集』(インプレス)『風と土の秋田』(リトルモア)、共著に『Babybook』(イラストレーター福田利之)、『アルバムのチカラ』(写真家浅田政志)など。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん熊本へ』など手がけた書籍多数。

徳谷 柿次郎 地元メディア『ジモコロ』編集長
株式会社Huuuu代表取締役

1982年大阪生まれ。長野県在住。新聞配達と松屋のシフトリーダーを経て、26歳のときに背水の陣で上京し、コンテンツメーカー「有限会社ノオト」へ潜り込む。2011年に「株式会社バーグハンバーグバーグ」入社。バックオフィス、広報、WEBディレクター、ライター編集職を経て2017年に満を持して独立し、「株式会社Huuuu」を設立。全国47都道府県のローカル領域を軸に活動している。どこでも地元メディア『ジモコロ』編集長7年目。長野県の移住総合メディア『SuuHaa』を立ち上げたり、善光寺近くでお土産屋『シンカイ』を運営したり、自然と都会の価値を反復横とびしている。