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既成概念をぶっ飛ばせ!「まちが変わる新しい“公共空間”の使い方」トークセッション

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私たちの身の回りにある公園や学校、行政庁舎などの「公共空間」。人々の憩いの場であり、日々の暮らしを支えるインフラは、人口減少の社会においてどのように維持・活用されるべきでしょうか。

「まちが変わる新しい“公共空間”の使い方」トークセッションでは、第一部に公共空間のマッチング事業「公共R不動産」を立ち上げた、株式会社オープン・エー代表取締役の馬場正尊氏にご講演いただきました。

第二部では群馬県を中心に活動する民間・行政のプレイヤーが登壇し、馬場さんと共に実在する公共空間の活用方法について「妄想トーク」。群馬県内の公共空間を事例に取り上げ、語り合われたアイディアをご紹介致します。

Contents

【第1部】基調講演「既成概念をぶっ飛ばせ!公民連携の構想力と行動力」
【第2部】「妄想トークセッション」
・①ながめ余興場、まちなか交流館周辺エリア(みどり市)
・②小幡公園およびその周辺(甘楽町)
・③県総合スポーツセンター伊香保リンク(渋川市)

【第1部】基調講演
「既成概念をぶっ飛ばせ!公民連携の構想力と行動力」

<登壇者>
・馬場 正尊 (株式会社オープン・エー代表)

こんにちは、馬場です。今日は群馬県庁の最上階にあるスタジオから、僕が今までに「既成概念をぶっ飛ばして」構想・行動した、公共空間に関わる成功や失敗のプロセスをお話していこうと思います。県庁のスタジオにはテレビ局並の設備が整っていて、すでに群馬県は「既成概念をぶっ飛ばした」空間があることを実感しています。公民共に「これから行動したい!」と思う方へヒントをお伝えできれば嬉しいです。

僕の最初の一歩は、20年前に小さな駐車場をリノベーションしたことでした。写真を見ていただくとわかるように、ただ色を塗っただけの空間です。ところがこの小さな場所は、僕に言い表せないほどの仕事を運んできてくれました。何もないより、何かがあること――小さくても実例を作ることの大切さを教えてくれた物件でした。

また、この物件はなかなか面白い空間ですが、普通の不動産屋では探しても見つかりません。僕は「東京R不動産」というメディアを立ち上げ、街中に眠る面白い物件を発掘し、欲しい人に伝える事業を始めました。場の次にメディアを作り、社会に対して空き物件の活用を問題提起したんです。古い建物のリノベーションに携わる「民間×民間」の事業を行う中で、公共性の高い空間に様々な人が集まり、コミュニケーションの頻度が上がることでムーブメント化する経験をしました。

そこから徐々に意識がパブリック空間へ向くようになり『RePUBLIC 公共空間のリノベーション』という本を出すことに繋がります。僕が公共空間に対して「こんな風になればいいんじゃないか」ということをひたすら書いた“妄想企画書”です。日本の公園は禁止事項ばかりで活用する方法がないので、公園や役所のリノベーションを具体的にスケッチにおこしながら、利用者も運営者もハッピーになるような提案を書きました。すると当時の国土交通省係長であり、後にPark-PFIの制度を作る町田さんから連絡があって「国としては公共空間を活用してほしいんだ!」と公園についての熱い想いを語ってくれた。本をきっかけにコミュニケーションが始まって、僕の公共空間へのコミットがスタートしました。

エリアの価値を上げた「南池袋公園」

公共空間に携わるようになって、新たに作ったメディアが「公共R不動産」です。日本中にある面白い公共空間を民間企業へマッチングするサイトは、公共と民間のスケジュール感を“翻訳”して繋ぐ役割も担っています。市民に情報を開示して公共空間を流動化させるべく情報発信を続けるうちに、僕自身も公共空間を活用してみたくなりました。そこでトライしたのが「南池袋公園」の事例。公園の活用者として民間のマネジメント組織・株式会社nestを立ち上げ、使い方のスタディをメディアに載せて、公園を知ってもらう社会実験を繰り返しました。

地元に住む女性が公園で結婚式を挙げてくれた時のエピソードを紹介します。公園内を使った式を申請したところ、公園の占有許可が必要であることがわかり、公園での結婚式開催が難しいかもしれないという事態になりました。そこで南池袋公園内のカフェで結婚式を挙げることにして、「つい盛り上がって外(公園内)に出た」ということにしたんです。どうみても「つい…」ではない規模ですが、皆がハッピーになれる使い方に文句を言う人は誰もいません。

僕たちはこうしたトライ&エラーを繰り返し、許認可関係者と理解を深めていきました。制度やルールは固いものでなく、相互の信頼関係によって上手に使うべき柔軟なものです。南池袋公園の事例では、行政と民間の信頼関係を繋ぐ手段として株式会社nestが必要とされました。東京23区で唯一消滅可能性都市に選ばれてしまった豊島区(池袋)は、今や「子育てしたい街」として人気があります。おそらく、南池袋公園のハッピーな風景がエリアの価値を上げたのでしょう。土地の値段も上がり、豊島区全体として公園都市を目指す都市計画へと発展しています。

椅子を置けば人は座り、芝を敷けば子どもは遊ぶ。そうした風景に対するハッピーな気持ちは市民や企業、行政にも共有されました。最初は株式会社nestという小さい組織で始めた事業は、今や地元企業を巻き込んだタフな連合体として動き出しています。

炭鉱の町・佐賀県江北町「みんなの公園」

先ほどの南池袋公園(東京都)の事例をお話すると、地方で必ず聞かれるのが「小さな町でも、公園で地域の価値が上がるのか?」ということです。九州の佐賀県、人口8500人の地元・江北町での事例を紹介します。

2019年に完成した江北町の「みんなの公園」は、町長が僕に「うちの町にも南池袋公園みたいなやつ、作ってくれない?」とわかりやすいオーダーをくれたことがきっかけでした。僕は見る人の想像力が入り込む余地をもたせた“妄想スケッチ”を書き出し、市民ワークショップをするところから始めました。ワークショップでは「どんな公園にしたいですか?」とは聞きません。「こんな公園ができたら、あなたは何をしますか/してくれますか?」とプレイヤー目線の質問をし、公園にコミットしてくれる市民に集まってもらいました。ハードの設計と同時に運営者のプロポーザルをすることで、ソフトの設計も進めるという仕組みです。

そうしてできた公園は、町の人がワイワイ集まって来る「町のリビング・みんなの庭」といった空間になっています。「公園で何かしたい」と思っている人が、公園の完成した瞬間にいるので、すぐに色んなことが起こる公園となりました。今まではハードの設計が先に進められ、使いにくいものができることも多かった公共空間。運営者の希望を聞きながら設計したことで、公園の活用が盛り上がり、「公園ができたことでエリア一帯が人気」となる池袋と同じような現象が起きました。

公民の連携協定によるパークマネジメント

行政の公共施設を民間が借りて「面白く」した事例も紹介します。沼津市にある泊まれる公園「INN THE PARK」は、少年自然の家を株式会社インザパークが借りて運営する事業モデルをとっています。この少年自然の家は、以前は赤字を何千万と出すかなりぐったりした雰囲気の場所でした。沼津市から公共R不動産へ相談があり見に行くと、建物は厳しいながらも目の前に素晴らしい芝生の公園が広がっている環境がありました。

そこで公園を中心にした“妄想スケッチ”を書いて、少年自然の家をリノベーションしながら公園全体へ影響を及ぼしていくプランを立てました。一番話題になったのは森に吊られた球体テント、これは球体の投影面積分の土地を沼津市から借りています。年間数百円ほどの契約ですが、説明責任を果たしながらオフィシャルにやっていることが重要です。

沼津市(行政)との信頼関係を築く中で、株式会社インザパークは「連携協定」を結び、公園活用の一時窓口として活動するフローを作りました。行政のことを理解した民間が間に入ることで、公園を活用したいという民間の人が増え、沼津市もそれに快く応えてくれたんです。すると映画祭やフェスなど、スケッチに書いた妄想を現実にしたようなことができるようになりました。

沼津市の担当者・臼井さんは「やり方を変えなければならない」と考え、民間を主体にした活動や行政内をワンボイスで調整する方法などを全国へ紹介しています。僕らも行政の担当者も、一緒にこのプロジェクトを作り上げたという実感がある事例です。デザインとマネジメントを一緒に考えることが公共空間の価値創造のために重要だと思います。

地方都市のエリアリノベーション

最後にお話するのは、山形県のエリアリノベーション事例。僕が教えている東北芸術工科大学から始まった、公民連携による空間のデザインとマネジメントの4ステップをご紹介します。まずは民間のゲリラ戦――僕と研究室の学生たちがメディア「山形R不動産」を立ち上げたことから始まりました。山形の街中を調査して、空きビルだらけの地域から学生たちが見つけたのは「三沢旅館」。旅館として使われていた時のまま眠っていた空間を、学生たちの手でシェアハウスにリノベーションしたいと計画し、70代のオーナーを訪ねました。

学生たちが「シェアハウスに住みたい人」を募り、8人が月に3万円ずつの家賃を払うことを決めてからオーナーと交渉。山形銀行からの融資と行政の制度を活用してシェアハウスが実現しました。完成したシェアハウスに旅館の看板を飾ったところ、オーナーさんはとても喜んでくれて、場と共に記憶を継承していくことが大事だと感じましたね。その後、隣の空きビルにもリノベーション活動は広がり、学生運営のカフェや地元企業の出店が行われました。点が繋がり、面となった事例です。

民間でのリノベーションが行われ、次に公民連携の活動が始まります。かつて山形の文化の中心地であった「シネマ通り」でリノベーションスクールを開校し、企業出資と行政の予算を使ったプレイスメイキングが行われました。写真で紹介しているのはギャラリーやカフェ、シェアオフィスなどが入ったクリエイティブ拠点「とんがりビル」です。また、このリノベーションスクールをきっかけに事業を始めた生徒はコーヒー屋を始めました。現在は街のキーマンとして、多能工的な事業をするプレイヤーに成長しています。

そして「郁文堂書店」というシャッターの閉まっていたお店も、学生と店主のおばあちゃんが仲良くなり、120万円の資金を集めたクラウドファンディングを通じてリノベーションが行われました。83歳のおばあちゃんは「人生の終わりにこんなに楽しいことが待っていると思わなかった」と言ってくれて、エリアリノベーションが支持されるきっかけを生み出しました。街のキーマンだったおばあちゃんと学生たちが仲良くなったことで、古いジェネレーションと新しいジェネレーションが融合し、若い世代が町へのアクセス権を手に入れたんです。シネマ通りでは日常的にマルシェも開催されるようになり、今や空き物件は一つもない通りになりました。

続いてのステップは大学を巻き込んだ拠点整備と政策展開です。街中にある小学校の旧校舎をリノベーションする「Q1プロジェクト」は、9月のオープンに向けて現在準備を進めています。「クリエイティブと産業を暮らしで繋ぐ」ことをコンセプトに、地域作家の作品や山形のお酒を扱うお店などを誘致しました。内閣府の地方創生拠点整備交付金を活用し、民間企業によって運営されています。これまで地域の中で培ってきた人材のネットワークと街からの信用力を、公民連携事業で一気に開花させた事例です。これからは大学と連携して、地域の色々な企業を巻き込みながら、山形のクリエイティブ拠点・産業拠点にしていこうと思っています。

最初は小さな民間の拠点づくり、ゲリラ的なリノベーションから始まりました。次に公民連携のエリアリノベーション、そこから公共空間を拠点にしたエリアリノベーションに公民連携事業を掛け合わせ展開していきます。小さな点を面に広げ、最終的に政策へ繋げていくことが、こうした事業の醍醐味かと思います。今回の講演が群馬での新しい動きのきっかけになれば幸いです。ありがとうございました。

【第2部】「妄想トークセッション」

<登壇者>
・馬場 正尊 (株式会社オープン・エー代表)
・林 智浩 (株式会社エーアンドブイ企画代表)
・宮下 智 (群馬県庁官民連携まちづくりチームアドバイザー)
・早川 純 (合同会社本庄デパートメント共同代表)

<コーディネーター>
・飯石 藍 (公共R不動産コーディネーター/株式会社nest取締役)

<公共施設と担当者紹介>
ながめ余興場、まちなか交流館周辺エリア(みどり市)
・みどり市産業観光部観光課 課長 石坂克広  

小幡公園および周辺(甘楽町)
・甘楽町建設課都市計画係 主事 土屋和樹  

県総合スポーツセンター伊香保リンク(渋川市)
・スポーツ振興課企画調査係 主事 原田尚史  

飯石 藍 氏(以下、飯石):前半の馬場さんのトークでは、全国各地の遊休化した公共不動産が民間のアイディアを活用してリノベーションされていく事例が紹介されました。群馬県内でも県立赤城公園ビジターセンターを利用した「HUTTE HAYASHI」、県庁前広場を活用したマーケット「Base on the GREEN」など、県内各所の施設や道路が使われ始めています。後半は群馬県内で眠っている公共不動産について、どんな使い方ができるか皆さんと妄想してみたいと思います。

①ながめ余興場、まちなか交流館周辺エリア(みどり市)

みどり市観光課・石坂さん:「ながめ余興場」は昭和12年に建築された劇場建築の建物で、梅沢富美男さんが初舞台を踏んだといわれる芝居小屋です。平成9年に行政が地元団体と共に改築を進め、今は落語や歌舞伎、狂言がされたり、地元のカラオケ大会に使われています。「まちなか交流館」は江戸中期に近江商人によって奥村酒造が創業された場所で、平成25年に酒造が廃業となってから、市が景観保全のために買い取りました。どちらもハードが先行し、ソフト面がついてきていない場所のため、エリアを広く使ったパブリック空間にしていきたいと思っています。

飯石:実際に現地へ行きましたが、古いものがそのまま残った魅力的なエリアでした。さっそく皆さんに妄想のアイディアをお聞きしてみたいと思います。

林 智浩 氏(以下、林):私は大間々のコンパクトさと歴史ある空間に注目し、街の発展のために文化創意産業を育てる台湾の「文創」と結び付けた風景を想像しました。歩いて一時間掛からず散策できる町には通路に絵が添えられていたりして、まちなか交流館は「大間々1751文創拠点」として活用されていく……。蔵をカフェにリノベーションしている人もいますので、そうした取り組みを気運に、若い人がカフェや本屋、雑貨屋などを起業するマインドを興していくのはいかがでしょうか。古いものと新しいものを結びつけていくことが大事だと思います。

そしてまちなか交流館の活用については、まずみどり市職員が庁舎から出て使ってみる。そして近くには大間々高校があるので、部室として活用してみるのがいいと思います。また、ながめ余興場で観劇した後に「交流点」が欲しいと思い、「ながめ夜市」というイベントも妄想しました。最初は行政が支えながら、徐々に観光に繋がればいいですね。町が盛り上がることで、高校に通いたいという人が増えれば、高校生が下宿することで町を支えるプレイヤーが育っていくのではないでしょうか。

早川 純 氏(以下、早川):僕は町のプレイヤーを探すために、大間々駅を中心に「日常/非日常」の場を分けて妄想しました。視察して感じたことは、みどり市の職員さんに素敵な人が多く、行政の人材に価値があるということ。そこでまちなか交流館を「移住者や余所者」と「先住民」が交流するハブとして、行政が活用していくことを考えました。交流館で空き家のストック情報などを紹介し、非日常でプレイヤーを探しながら、日常に落とし込むような仕掛けを作れればいいなと思います。

ながめ余興場の方では、余興場の前に「菊花大会」で使われている広場がありました。ここは「菊の場所」としての活用しかないそうなので、「聞く」場所としてテストマーケットを開ける空間にしたら面白いのではないかと思っています。周辺には坂が多いので、集客時には別府市役所前の「スライド・ザ・シティ」くらい振り切っても面白そうです。馬場さんの「泊まれる公園」から発想して、「泊まれる劇場」の需要もあるかもしれないと妄想しました。

宮下 智 氏(以下、宮下):もともとこの地域には醸造文化がありますので、まちの人たちが集まって“発酵”するようなイベントができたらいいなと思いました。この地域のみなさんや既に熱量の高いみどり市の職員、私たち群馬県の職員も加わって、皆で“発酵”し熱を発するようなイベントを継続的に起こしていきたいですね。すぐ近くには「近藤酒造」という美味しい日本酒を造る酒造もありますので、お酒を飲みながら熱を高めるイベントも良いと思います。大間々エリアに限定せず、桐生・みどり全域の広いエリアからプレイヤーを巻き込んでいく視点も大事かと思います。

馬場:皆さんの“妄想”レベルが高すぎて、ほとんどプランニングですね!高校を巻き込むのは良いアイディアで、高校時代に良い思い出がある人は地元へ戻ってきますから、新鮮なコラボレーションになると思います。また林さんと早川さんのお話を聞いて妄想したのは、イタリアのアルベルゴ・ディフーゾという“町全体を宿にする制度”です。町のバルでチェックインをして、空き家をリノベーションした所に泊まり、食事は街中のお店で食べるというスタイル。エリア全体を宿と捉えて、大間々エリアをぐるぐる周るシステムも面白いかなと思いました。

②小幡公園および周辺(甘楽町)

甘楽町建設課・土屋さん:「小幡公園」は平成26年度に整備され、遊具がなく駐車場とトイレのある公園です。主にはイベント会場として利用され、周辺には雄川堰や楽山園などの観光地も多く、街歩きの拠点になっています。甘楽町には全域を走る路線バスがなく、最寄り駅から徒歩40分の交通アクセスが課題です。イベントも年に数回のため、普段は閑散としています。活用アイディア・アドバイスをお願いしたいと思います。

飯石:小幡公園は中心部の古い町並みからは少し距離のある立地の公園。大きなイベント時にはたくさんの人が使われるものの、恒常的な利用については課題ということですが……。

早川:小幡公園と周辺地域を視察したところ、公園から200m離れたところに素敵な街路とカフェがありました。町道は雄川堰からのせせらぎが聞こえて、歩くのに心地よい空間。車通りも少なく、非常に価値のある場所だと感じました。また町のインフォメーション機能を持つ古民家カフェ・信州屋の矢島さんは、JICA(国際協力機構)を経験された世界と甘楽町の関係人口を築くキーマンです。甘楽町は世界から農業の研修生が年間80名以上訪れていて、研修をきっかけに移住してきた人もいるそうです。

近くの道の駅には美味しそうな野菜も売られていましたが、非常に低価格で安さを魅力の1つにしている印象でした。せっかく農業研修で「野菜作り」をしているなら、野菜の価値の上げ方や販売方法にも力を入れてみてはどうかと考えました。前菜と思われがちな野菜を“主役”として捉え直し、美味しい野菜の産地・甘楽町として野菜と健康にフォーカスしていく。街路を「ストリートキッチン」として活用し、野菜や作り手、食べ方を知ることができる場づくりができれば面白いと思います。

通りには空き家が点在していたので、シェアキッチンとして空き家活用にも波及させていき、美食家が集う街になったら良いですね。野良営のキッチンができたり、ストリートごとにコンセプトを変えてみたり。街中を歩くハードルが下がれば、小幡公園がメイン会場として活用される日常ができるかもと妄想しました。

林:早川さんのお話を聞きながら、甘楽町の魅力である「野菜」と「雄川堰」を組み合わせると、変わったことができるのかなと妄想していました。例えば街路で野菜のマルシェが開かれていて、自分の好きな野菜を買って雄川堰に流すと、川下で料理人がピックアップして料理してくれるとか。「若手の料理人が、腕試しとして腕を振るいに集まってくる」なんて面白いと思いませんか?農家さんも触発されて新しい野菜を作ってみるなど、広がりのある企画だと感じます。

宮下:私が小幡公園を視察した時には、このエリアをウォーキングしている人がたくさんいました。川沿いの道は景色もきれいだし、まちなかも道路が広くて歩きやすい。甘楽町は全国ここにしかない「こんにゃくパーク」もあるまちなので、「健康」をキーワードにするのは良いと思いました。雄川堰を歩きながら楽山園へ行ってヨガをしたり、農村レストランで野菜料理を食べてから産直で新鮮な野菜を買って帰ったり。「訪れるだけで自然と健康になるまち」として、健康に特化した情報発信で集客したら面白そうです。まずは「健康」で集客し、最終的には信州屋のあるストリートへ色んなオーガニックのお店が連続的に出店するというストーリーを妄想しました。

馬場:「ストリートキッチン」というフレーズに引っかかりました。カッコいいですよね、響きが。「甘くて楽しい甘楽」「野菜」「せせらぎ」「ストリートキッチン」という風景の思い浮かぶようなフレーズや描写が多かったので、それらを上手に編集していくのがいいと思います。甘楽というエリア全体を「野菜によるガストロノミー」としてブランディングしていく、そんな発展性を感じました。

飯石:甘楽町の観光面に着目すると、歴史の深い町として力を入れていることが分かりますが、今日は今の暮らしを見つめた話が多く出ました。一つのカフェを中心に、人がきっかけとなって、町のビジョンがアップデートされていくのも面白いと思います。

③県総合スポーツセンター伊香保リンク(渋川市)

群馬県スポーツ振興課・原田さん:「県総合スポーツセンター伊香保リンク」はスケートやアイスホッケー、フィギュアスケートができる県の施設です。屋外には大きな400mのスケートリンクがあり、屋内にも60m×30mのリンクが2つあります。受付ホールであるリンクハウスホールも大きく、大会の控室で使う競技運営棟もあります。伊香保温泉街からは車で20分、ロープウェイで10分とアクセス面が課題です。

飯石:冬はスケートの大会など利用予定も多く、夏の閑散期にどう使うか・どのように場所の価値を上げていくかを妄想していきたいと思います。もの凄く広い場所で、ロープウェイで伊香保温泉から上がっていくと、何とも言えない非日常感満載の空間が広がります。

林:伊香保リンクの夏の遊び方は、伊香保の温泉旅館と提携した「リゾート施設」としての利用ができると思います。子どもを一日預かって遊ばせるキッズプログラムを用意して、温泉で寛ぎたいパパとママに優しい企画を妄想しました。カフェスペースを作れば、子どもと一緒に過ごすこともできるのではないでしょうか。

また、広いリンクを活かして、スケボーのパークを作るのもいいでしょう。今はオリンピックの金メダル効果で人気が増していて、パークに兄弟で通いたくても枠が取れないほどだと聞いています。ここには充分な広さの施設がありますし、真夏でも伊香保の涼しい環境で遊ぶことができます。さらに周囲の環境は、フリースタイルスキーのオフトレとして“こもる”施設にも使えると思っています。夏にスキーやスノーボード、BMXの練習場所として活用するのも良いと思います。

早川:渋川のスカイランドパークで「ドライブインシアター」をやっているそうなので、すぐにできる「ロープウェイインシアター」を妄想しました。施設がとても広いので4つくらいスクリーンを用意して、FMラジオの周波数を少しずつ変えながら、好きな映画にアクセスできる環境を作ると楽しいのではないでしょうか。スケートリンクにキッチンカーを持ってきて、車でのアクセスが悪い部分をビジネスというインセンティブでカバーする仕組みも考えました。そして上を見上げれば満天の星空が見えて「スクリーンはもう一つある……」みたいな感じにすると面白いかなと思います。

飯石:とてもロマンティックなアイディアですね!「INN THE PARK」でも森の映画祭をやっていますが、すぐにでも実現できそうな妄想だと感じました。

馬場:空間の「ばかデカさ」を利用する、エクストリームやアルティメットという「行き切った感じ」をブランディングするのは良いですよね。一般的には温泉地は夏が難しいといわれるので、温泉地と提携しながらブランディングをしていくのは現実的だと思います。今のアイディアはどれも企業誘致が簡単そうで、投資も掛からず、すぐに実現できそうなプランだと思います。

宮下:以前から伊香保温泉には「滞在している昼間」に楽しめるコンテンツが少ないと思っていたので、ロープウェイで上った先の絶景を見ながら過ごせる場所をつくりたいと妄想しました。屋内リンクの中は常に氷点下なので、「真夏の氷点下レストラン」をオープンし、ここでキンキンに冷えた後にまた温泉に入れたら楽しいなと思います。

飯石:熱さと寒さを交互に感じる、サウナのような楽しみ方ですね。温泉地であることとエクストリームな広さを上手く組み合わせるアイディアが面白そうです。

妄想トークを振り返って

飯石:あっという間に時間になりました。これまでの提案やディスカッションを振り返って、パネラーの皆さんから一言いただきたいと思います。

林:僕は元々妄想好きで、事業の他にNPO法人などの活動もしていますが、何をやるにも居酒屋で話すような「ああでもない、こうでもない」という話を形にしていくことが大事だと思っています。皆がワクワクすること、楽しいと思うことをどう仕掛けていくか。皆が妄想することを持ち寄って話すと、すごく楽しいなと思いました。

早川:僕も妄想するのは楽しかったです。またこういった県主催の妄想トークで振り切った意見が出ることで、自治体の職員が実行しやすくなるのではないかと思いました。今日出た公共空間は、僕が拠点とする本庄から車で1時間程の距離にあります。埼玉と群馬の境界をぼやかす人間として、今後も関わっていきたいと思います。

宮下:今日は楽しい時間をありがとうございました。初めに物件を見たときは心配に思う部分もありましたが、色んなアイディアが出てきて妄想が膨らみ、しかもすぐにできそうなことが多く嬉しく思いました。群馬県としては市町村の皆さんと一緒に公共空間の活用やまちづくりを進めていきたいと思っていますので、妄想してほしい物件や活用したい物件があればぜひ県庁官民連携まちづくりプロジェクトチームへご相談ください。

馬場:本当に妄想のレベルが高く、プロセスまで考えられた提案が多かったと感じます。今日のトークをただの妄想と捉えず、きっかけにすることが大切ですね。実現性が高い提案はたくさんありましたので、県や市の行政担当者は「自分たちが走る」ことよりも「このネタに乗ってくれる民間ってどこにいるだろう?」ということを考え始めた方がいいでしょう。もちろん、いきなり民間のパートナーは見つからないかもしれませんが、町へ出るとか、常に意識して探しながらプランを進めていくことが重要です。

今日のゲストも身近で優秀なパートナーですし、面白い人は面白い人をよく知っているので、人材を繋げながら企画に多くの人を巻き込んでいくことをオススメします。悪ノリの空気感を大事にして、行政が楽しく人を巻き込んで欲しいと思います。今日はそんな「きっかけの日」になればいいと思います。レベルの高い妄想合戦でした、ありがとうございました。

(ライター:西 涼子)

登壇者

馬場 正尊 株式会社オープン・エー代表取締役/建築家
東北芸術工科大学教授

1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年OpenAを設立。建築設計、都市計画、執筆などを行い、同時期に「東京R不動産」を始める。2008年より東北芸術工科大学准教授、2016年より同大学教授。2015年より公共空間のマッチング事業『公共R不動産』立ち上げ。2017年より沼津市都市公園内の宿泊施設『INN THE PARK』を運営。 近作は「Under Construction」(2016)「旧那古野小学校施設活用事業」(2019)など。近著に『民間主導・行政支援の公民連携の教科書』(学芸出版,2019,共著)、『テンポラリーアーキテクチャー:仮設建築と社会実験』(学芸出版,2020,共著)など。

早川 純 合同会社本庄デパートメント共同代表

都会と地方の2つの行政を渡り歩いた元公務員。公務員時代には幸福度研究やリノベーションまちづくりなどに取り組む。退職後、築100年超えの旧料亭をリノベーションして、人とモノと情報が集う拠点「WORK+PARLOR」を仲間と開設。東洋大PPP研究センターリサーチパートナー。2児の父。

林 智浩 株式会社エーアンドブイ企画代表取締役

前橋産の豚の魅力を広めようと「とんとん広場」の経営や各種イベントの開催・参加を行っている。2021年から県営施設であった赤城ビジターセンターのトライアルサウンディング事業として、「HUTTE HAYASHI CAFÉ」を営業。

宮下 智 群馬県庁官民連携まちづくりチームアドバイザー

「県庁職員」という肩書きの傍ら、プライベートでは仲間と公共空間を活用したマーケットを各地に展開。公民連携による持続可能なまちづくりを学ぶ「都市経営プロフェッショナルスクール」第1期生。NPO法人自治経営では公務員をアップデートする事業を担当。群馬県知事戦略部戦略企画課補佐。地方公務員アワード2020受賞。