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映画の湯へ いらっしゃい 【第2部】 熱源の湯

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 ここは極上の湯がある群馬県。熱源から湧き出る力強いコンテンツが魅力の湯けむりフォーラムで、映画にまつわる2つの湯をお届け。

 映画を届けるのが映画館。映画館がなければ映画は届きませんが、そもそも映画が作られなければお店は開かないことになります。豊かな自然と、心温まる人情と、沸々と湧き立つ熱源があるこの群馬の地で、面白おかしい映画ができないはずはありません。
また、群馬県には映画・映像の撮影を強力サポートするフィルムコミッション(FC)が各所にあります。FCの活動を紹介しながら、これから更に、映画のために何ができるのか、熱源のマグマを覗き込んでみたいと思います。

志尾 睦子(以下 志尾):今回、第一部はミニシアターということで映画を届ける人たちのお話を聞いていただきました。で、第二部の方はですね、映画を届けるというのは映画が作られないと当然届けられないので、作り手のみなさんのお話を伺っていく予定です。

志尾 睦子

志尾:第二部に対して「熱源の湯」というタイトルを付けさせていただきました。映画館というのは銭湯につかりに行くという感覚もありまして、もともと映画館というのは日本の歴史の中では銭湯の文化と共に栄えたと言われているんですね。ご家族が、まだテレビがなかった時代に娯楽が映画しかないと。でおうちにお風呂がなかった時代に銭湯に家族で出かけていって、その帰りに映画を観て帰ってくるとか。そういうことですごく密接に結びついていたというお話がありまして私の中でもすごく印象深く残っています。第二部に関しては「熱源の湯」。これは草津温泉の熱源の湯気が上がってくる、そんな熱いパワーと、映画を作る作り手達のパワーっていうものも一緒に表現できるんじゃないかなということで、この名を付けました。まずお一人ずつご発声いただきたいと思います。群馬と言えば〇〇というのを入れて自己紹介をお願いします。

山藤 堅志(以下 山藤):「高崎フィルム・コミッション」の山藤と申します。よろしくお願いします。群馬と言えば・・あまり思いつかないんですけどね、やっぱり焼きまんじゅうですね。よろしくお願いします。

山藤 堅志

戸田 彬弘(以下 戸田):映画監督させていただいています。戸田彬弘と言います今日はよろしくお願いします。群馬と言えば・・僕は今日並んでいる方々の中で一番群馬にゆかりがないんですが、昨日食べたので、登利平弁当です。美味しかったです。よろしくお願いします。

戸田 彬弘

手島 実優(以下 手島):お集まりいただいてありがとうございます。手島実優と申します。俳優をやっています。私は前橋市出身なんですけど、地元なので、群馬と言えば・・からっ風ですかね。中学校バトミントン部で部活帰りにからっ風の洗礼を受けて、田んぼに自転車のまま転げ落ちたことがありました。よろしくお願いします。

手島 実優

東かほり(以下 東):グラフィックデザイナーと映画監督をしています東かほりです。はじめての長編映画を桐生で撮らせていただいて、手島さんが今おっしゃっていたように風がとにかく強かったんですけど、乾燥がつらいなと思ったり、でも大好きなところです。今日はよろしくお願いします。

東 かほり

周藤 史郎(以下 周藤):桐生市とみどり市を担当しています「わたらせフィルムコミッション」の周藤と申しますよろしくお願いします。群馬と言えば・・桐生と言えばでもあるんですけどソースカツ丼。ちょっとつまんない答えになっちゃいますけど、ソースカツ丼でお願いします。

周藤史朗

都内で、群馬で、映画を撮ること

志尾: ありがとうございます。先ほど戸田監督が僕は群馬出身じゃないと言われましたが、戸田監督をなぜお呼びしたかと言いますと、ぜひ戸田さんに群馬で映画を撮ってもらいたいというプレゼンをみんなでしようと。戸田監督は長編の作品も何本も撮られていますけれども、(今回の湯けむりフォーラムには)最近の監督で私が一押しの2人をお呼びしておりまして、そのお一方が戸田監督ということになります。

戸田:ありがとうございます。

志尾: 戸田監督の作品で、あの雰囲気と、そこにいる人が気持ちをどう変化させていくかというのをすごく丁寧に撮られている、それがものすごく好きなところなんですけど、どこでどういうシチュエーションを撮るかって、映画を撮る上ですごく大事だと思うんです。条件によって色々あると思うので思い出されることをお話いただけますか?2021年の『僕たちは変わらない朝を迎える』は監督が脚本を書かれた?

戸田: そうです。「MOOSIC LAB」っていう音楽×映画の作品を毎年やってるんですけど、脚本自体の主人公が映画監督ってのもあって下北沢を舞台に書かせてもらったんで、ロケーションのやり方としてはまずほぼ全編下北沢で選んだというか。

志尾: (会場で流れる予告編を見ながら、男女2人が通りを歩いているシーン)私、このシーン好きなんですよ。

戸田: このシーンは長回しでやらせてもらって。下北沢では結構有名な一番街っていう商店街で、どうしてもそこが良いって言って制作部大変だったんですけど。すべての道の横道に制作を配置させて、酔っ払いも犬も全部停めて4分~5分くらいの長回しをずっと引っ張っていくということをやらせてもらって。テイク5くらいやらせてもらって。どうしても1本道で撮りたかったというのがありました。

志尾: 道に人を配置して、というところでフィルムコミッションの2人が頷いてましたが、生活しているところで撮るってすごく難しいと思うんですけど、コロナ過の中で条件が決められた中で物語を作っていくとか、撮影をしていくという場面に遭遇したと思うんですが、そこの難しさと、逆に新しい発見みたいなのはあったりしました?

戸田: 新しい発見毎回ありますね。やっぱり僕はスタジオよりはロケーションが好きで、その町の雰囲気もそうですし、そこで生活している人の雰囲気だったり文化だったりが町に根付いているというか、色が出てるというか、そこに俳優が役として入って町に溶け込んでいくというか、それがすごく映画を豊かにしているなと思って。イレギュラーなことも起こって、さっきの長回しのところだと全部配置してるんですけど深夜に撮っていて、突然シャッターを開けてる人がいて音が入ってたりするんですけど、それがすごい生っぽくて効果的だったりとか。そういうの演出では思いつかなかったり、タイミングでやると嘘っぽくなるんですけど、そういうものが入ってくるのがロケでやる醍醐味かなって思ったりしてます。

志尾: ありがとうございます。では続きまして手島さん。手島さんは群馬と都内を行き来して、「私は群馬を背負う女優になります」って言ったのを私はよく覚えているんですけど、今本当にご活躍で。手島さんは高崎で『高崎物語』という、私が初めてプロデュースをやらせていただいた作品にも出ていただいて。その頃からのお付き合いだったりするんですけど、一番最初に俳優を目指すきっかけは何だったんですか?

手島:10歳くらいの時に地元の前橋にアクティブトレーナーの先生がワークショップで来てくださっていて、それを受けに行ったのがきっかけです。習い事くらいの感覚で最初は飛び込んだので、まさか仕事になるとは思ってなかったんですけど、それが初めてお芝居した時です。

志尾: 私がお会いしたのは、手島さんが二十歳くらいだったと思うんだけど。

手島: 私がヒロインを演じた『赤色彗星倶楽部』っていう映画があるんですけど、それをどうしてもシネマテークたかさきでかけて欲しくて。当時フリーランスだったんですけどツイッターのDMで観てくれませんかとお願いをして、それで志尾さんに繋いでいただいたのが初めてで、19歳とかですね。

志尾: その時から、東京行っちゃうんでしょ?って言ったら、私群馬から通います!って。行く必要ないと思うんですよね、っておっしゃってましたけど、群馬と東京とか、全国で活躍していく時の距離感はどんな事になっていますか?

手島: なんかその・・住まないとできないってことはない、って当時から思っていて。自分のお芝居を積み重ねていくスタイルに、東京と群馬を2時間半かけて通って、その中で反省したりとかシュミレーションしたりとか、そういう自分の時間を持てることが、自分が一番しっくりくる俳優としての働き方だなって思っていたので。自然体、東京に行きたくないっていうよりかは、色々ハマる必要はないだろうなっていう感じでやっていました。

志尾: 全国いろんなところで撮影をされていると思います。客観的に感じたことを教えていただければと思うんですけど、他の地域と比べて群馬県の映画・映像環境ってどんな風に思いますか?

手島: 私、地元が群馬だったので、かなり小さい時から映画が町に馴染んでるっていう・・「高崎映画祭」を開催している時の実際の高崎駅前だったりとか、そういうものにかなり馴染んでいたので・・これ本当の話なんですけど、業界の人とお話する時に自分は群馬県出身なんですっていう話をすると、温泉っていうイメージももちろんあるんですけど、その次に「高崎映画祭」ねとか「高崎フィルム・コミッション」ねって本当に言われるんです。自分が誇りに思っていたことを、私以外の人も共鳴してるんだなっていうのをすごく嬉しく思います。色々な場所に行って撮影する中で、自分が初めてお世話になったフィルムコミッションが「高崎フィルム・コミッション」だったから、それが当たり前だと思っていると違うみたいで。繋がりの深さだったり、全然感覚が違うなっていうのは自分が俳優として参加してても思いますね。

志尾: ありがとうございます。山藤さん褒められてますよ。

山藤:いやぁもうね、恥ずかしいですよ。

手島: 「高崎映画祭」の志尾さんと、「高崎フィルム・コミッション」の山藤さん、必ず出てきますね。

山藤: あまり褒められ慣れてないので、小さくなってます。

フィルムコミッションの役割

志尾: 「高崎フィルム・コミッション」という名前を出していただきましたが、群馬県はフィルムコミッションたくさんありますけど、オール群馬の体制でね、連携をとってるんですよね。

山藤: そうですね。今日も周藤さんも来てらっしゃいますけど、問い合わせが高崎に来る場合、多々あるんですけど、高崎だけで収まらないものがあるんです。前橋だったり桐生であったり、他の地域でこういうものがあるんじゃないかっていう問いは必ずして、群馬県内で全部一本にまとまっちゃえば良いなってのは常に思ってます。自分の町だけってことじゃなくて、群馬県内で収めてもらいたいということは考えますね。

志尾: 周藤さんもお名前出ましたけど、「わたらせフィルムコミッション」というのは群馬で一番最初に出来たフィルムコミッション?

周藤:そうですね。始めの組ですね。わたらせと、高崎と、あと嬬恋が一番最初に出来て、全国の中では民間のボランティアで始まったのは「わたらせフィルムコミッション」が日本で一番最初で、ちゃんと総務大臣に表彰されました。

志尾: 素晴らしい。そんな「わたらせフィルムコミッション」さんの力を借りて本当に素敵な『ほとぼりメルトサウンズ』という作品を作ったのが東かほりさんですね。東監督はこの作品を撮る時に、その前のきっかけになったのは「きりゅう映画祭」。若い力でやっている映画祭がありましたが、そちらに応募されてグランプリを撮ったんですよね?それがきっかけで次の作品に繋がったりしてるんですけど、まず「きりゅう映画祭」にはどうして応募したんですか?

東:本当に感謝しているのは、「きりゅう映画祭」があって映画撮ろうと長編撮った感じなんですけど、そもそも今もそうなんですけど、グラフィックデザイナーをやっていまして。27歳の時にこのままデザインの仕事だけで死んでいくのは嫌だなって思ったんです。なんか違うな、本当に好きなのは映画だよな。で思い立って映画学校に通っていたんですけど27歳の時、その時に撮った映画があってそれが25分くらいの映画なんですけど。まずは映画祭を探すっていうところから始めて。各地に映画祭があるんだってことをその時初めて知って、群馬、桐生、どこだ?って正直わからなかったんですけど、群馬にも映画祭がある、って思ってそれでちょうどタイミング良く募集しているタイミングで私が応募したかったのがあったので、色々な所に応募したというよりはピンポイントで、たまたま見つけて、で応募して、そうしたらグランプリをいただけたってのがあって、それで何もなかったら辞めようかなと思っていたので、本当に感謝ですね。

志尾: すごい御縁ですね。それでグランプリを撮った後に、長編を撮ろうかというので周藤さんにお願いに行った。『ほとぼりメルトサウンズ』は桐生で全編撮られているんですよね?

東: 一部東京ですけど、ほとんど桐生です。

志尾: この作品がですね、東監督がグラフィックデザインをやられているっていうところで、私は衣装がすごい印象深かったという話をさせていただいたんですけど、キャラクターをすごく豊かに表現されるというところと、あと境界の話であるなと、境界線の境界。山と町とか、内側にいる人と外側にいる人みたいな。そのバランスが非常に面白い作品だなと見入ってしまった作品なんですが、撮る時に周藤さんには色々な要望が飛んできた?

周藤: そうですね。一番最初に色んな音が録りたいと。正直、何がしたいんだろうこの子、エアコンの室外機の音を録りたいとか、どこを紹介すれば良いんだって(笑)。その状態では陥ったんですけど、話をしていくうちに段々わかってきて、あーなるほど、でどんどん色々なシチュエーションを・・ここエアコンの古い室外機あるよとか、そういうところを探しまして。そもそもが、「きりゅう映画祭」の時に、桐生でまた撮りたいって言ってくれてたんですよね。グランプリ獲った時に。打ち上げで。でそっから1年後くらいに行きますっていう返事が来て。で来ていただいて、その時色々なところを回ってね。

東: はい。

周藤: 母屋で使った建物は元々空いてた建物で。オーナーさんが、わたらせさんこれ使って、って言ってくれた建物なんですけど。結構協力的な人も多いから、やりやすい町だって自分でも思っているんですけど、色々なところに言えば、良いよ、良いよ、って承諾をしてくれて。でもやっぱりコロナ過で行政関係だけはちょっと厳しくて、やむを得ず変更をした場合はあったけども。それはそれでまたうまい具合に繋いでくれたというか。桐生市に僕は激怒しちゃってですね、そこまで進んでた話でっていうのにコロナになって、一般にも開放してるのに撮影には貸さないって言いだしたんで揉めたことはあります。でも新しく変わったロケーション良い風にまとめてもらったんで感動しましたね。

志尾: 「シネマテークたかさき」で9月23日から上映した時に周藤さん駆けつけてくださって。観てなかったんですよね?

周藤: 観てなかったんです。試写会とか行けなかったんで初めてだったんですけど想像以上に素晴らしい作品になって。

志尾: 東さんは、桐生ありきで物語を作ってということですよね?

東: そうですね。元々は違う所も想定してたんですけど、戸田さんが撮られてた「MOOSIC LAB」の同じ企画で、なので音を集めるっていう設定にしていたんですけど。元々原案があって、主役をやってる子がアーティストなんですけど、xiangyu (シャンユー)ちゃんていう。その子がコラムを書かれていてその設定では横浜のドヤ街、寿町という場所だったんですけど、さすがにその場所は使えないってなった時に、どこで撮ろうって思った時に、やっぱり桐生はどうしても撮りたかったのですぐに連絡をしてっていう、そこからは桐生っていうベースで考えてました。

志尾: 周藤さんて頼もしいなって思ったことを聞こうか。

東: 本当にいっぱいあるんですけど、決まっていたロケ地が明日使えないみたいな状況もあったりして。その時に私はもうロケ地決まらないイコール撮れないっていう感じになってパニックになったんですけど、諦めようとか、そのシーンはカットしようとか言ってたところを、周藤さんが何時間か後に、ここやっぱ使えるかもとか、例えば病院のシーンで、病院なんて絶対使えなかったんですよコロナ過で。そうしたらすぐ機転を利かせて、焼き鳥屋さん?

周藤: うなぎ屋さん。宴会場の奥のスペース。

東: うなぎ屋さんの待合スペースが病院に見えるかもしれないっていう機転を利かせて、行ったら病院に見えたんですよね。だから機転の利き方がすごいし、桐生を全部わかってらっしゃると思って。スタッフがおお!病院だ!ってうなぎ屋さんで言ってましたね。

志尾: すごい。私も映画の世界に入って、自分が観てる時は全然気づかないんですけど、作るっていうことを少し知っていくと、全然違うところを継ぎ接ぎして一つの町にしていくとか。群馬音楽センターが30年前の新宿のバスターミナルになるとか、そんなことあるの?ってことがいっぱいあって、すごく驚いた記憶があるんですけど。山藤さんもそうですよね?場所を探す時に全然違う所とか、こういうシチュエーションでどうだとか、よく提案されますよね?

山藤: 良くやってますね。結局、病院・学校・警察っていうのはもう3本柱で必ず出てくるところなんだけど、なかなかコロナの関係で難しくなったところで、じゃあそれに見えるところはどこなのか、っていうのは常に考えてます。何かに見えるっていう、それをそのまま捉えるんじゃなくて、これは何かで撮れるよねっていうのをどっか心の片隅に持って歩いているので。だから町を歩く時もシチュエーションを考えながら町を見ているんで、全然目線が違うんですよね。大きい建物とかそういうのは覚えていないけど、この路地裏が良いとか、あの店の裏とか良いんじゃないとか、そういう見方をしちゃいますね。

志尾: そういうのは監督も同じ目線で見ている気がするんですけど、戸田監督どうですか?

戸田: そうですね、見ますね。それこそ裏路地とかは行きます。

映画に映る土地のにおい

志尾: やっぱり私たちは群馬県にいてね、群馬の地でここをクリエイティブ拠点にしたいという群馬県全体の思いもあるんで、群馬発信のコンテンツを作っていきたいってのがあるんですけど、私たちがここで受け入れて作ったからこそこんな作品が出来ましたっていうのをすごく大事にやっていきたいなと思っているわけです。それで監督から見てね、シチュエーションでこういうところが撮れるよ、っていうよりは群馬っていうと人情っていうかみんなでバックアップするよっていう方がすごく強いんじゃないかっていう感じもするんです。戸田監督例えば、これから群馬で撮るかもしれない、撮ってもらいたいということでお連れもしてるんですが、こんなシーンがあったらとか、こんなバックアップがあったらありがたいってありますか?

戸田: 僕は結構地方で撮る事が多くて、デビューさせてもらったのは和歌山県のみかんの産地で企画を考えようっていうので有田みかんの産地に行ったんですけど、まずそこにどういう物語を作るも関係なく入り込んで、土地を見てやってみたりとか。やっぱり土地柄とか文化、生活のリズムとかにおいとか、そういうのが僕は好きで、地方で撮る時に。フィルムコミッションの協力体制は充実していると監督もそうですけど制作部が一番喜ぶかなとは思っていて。僕としてはシナハンとかを考えるとその土地の子どもとか、業界側ではない一般に住まわれている中学生とか高校生とかの話を聞きたかったりするというか、地元をどう感じてるかとか、どういうリズムで毎日を過ごしてるかとかっていうのは土地柄で違ったりとか、価値観が違ったりとか、そういうところにすごい興味がある。なので一般の人の話を取材ができるのは嬉しいなとか。シナハンの時かもしれないんですけど。和歌山でやった時も女子高生の話を聞きに行ったり、繋いでもらったりとかしました。

志尾: なかなか監督でご自身でぽーんと行ってちょっとすいませんお話を、って言ったら怪しい人ですもんね。でもそういうところで地元のワンクッションっていうのかな、橋渡しがあって声が聞けて、それが作品の方へ帰ってくるというか・・

戸田: そうですね。フィードバックされたりするなっていう事とか、あとその土地にしかない・・名所になるとちょっと違うんですけど、地元の人しか知らない場所みたいなところとかに行きたかったりします。次、鹿児島でやるかもしれなくて、桜島がでかくあるんですけど、桜島があるから小学生が偶然休み時間に黄色い帽子かぶってたんですよ。それが、火山灰(対策)か、と思って。そういう発見が結構大事だったりする。町に住まわれている人たちと出来る限り関わりたいというか。それをしないと結局東京の人が地方に来て地方で映画を撮ってるだけになってしまって、土地のにおいが出てこない気がして。

志尾: 確かにそうですね。地元で暮らしていると当たり前、を違和感と捉えて終わることもあると思うんですけど、そうじゃなくてそこに一歩、二歩、三歩入っていくと、その土地の風合いだったりとか、そこで生きているっていう空間が生まれてくる。クリエイターが入って行くと、そこにあるものが出てくる感じがすごくしますね。それは東さんも体験されていますか?

東: そうですね。おっしゃっていたように土地の人の声ってすごく聞きたいなって。やっぱ映画を撮ることのハードルが高いというか、特にインディーズ系って予算もない中で許可もすごく大変なので、もう少し、住んでいる方とかに映画はもっとハードルが低いものだよっていうことを話し合える場があると本当に良いなって思ったりしますね。

志尾: 手島さんは、演者として俳優部っていう立ち位置でいますけど、俳優部として地域に入っていく感覚とか、逆にご自身群馬県なので群馬に他の俳優部を迎え入れる感覚についてお話いただきたいんですけど。

手島: 私、俳優っていう職業をやらせていただいているんですけど、現場に入ると、現場に入る前もオーディションを受ける時もそうかもしれないんですけど、一緒に作っていくっていう気持ちが一番強いです。自分に振られた役割は俳優なんですけど、作り手っていう目線では一緒に話し合えて共有できる人、関係性が一番大事だなって思っているので。自分で住んでいる地元のバックアップがかなり素晴らしいので、呼び込めるような機会があったらぜひ感じて欲しいなと思います。そういう目線で、俳優というよりかはそういう映像作りをする上ですごく良い環境だよっていうのを私が都内の人にプレゼン出来たら、良く回るんじゃないかなとか最近は思っています。

志尾: これからもぜひこの土地に多くの方を連れて来ていただき、そして手島さんが主演でザ・群馬映画というのをぜひ撮りたいと思うんですけど戸田さんどうですか?

戸田: 一回やりたいですよねって僕からも言ってて、実現させたいですけど。群馬で撮れると良いですよね?

手島: 私、戸田さんの作品出たことないんで。ぜひお願いします。

戸田: ぜひお願いします。

志尾: 東さんどうですか?2本目群馬で?

東: あ、もちろん撮りたいです。

山藤: 無理やり言わせちゃ駄目だよ。

会場:(笑)

映画の熱源を燃やし続ける

志尾: お話まだまだお聞きしたいんですが時間になります。今日外にチラシを置かせていただいているんですけども、群馬県の映画ではね、色んな作品をフィルムコミッションがサポートしてまして、数々の作品をこうやって撮ってるんですけども、オール群馬、ザ・群馬映画っていうのもありまして、そういう作品がどんどん増えていくと良いなと思っています。今日ご登壇いただいた5名のみなさんはここで強い繋がりができたと思いますし、映画が作られた後は先ほどのミニシアターの「前橋シネマハウス」、「シネマテークたかさき」という映画館がありますし、高崎映画祭もありますので、出口があるということで安心して映画を撮っていただきたいと思います。最後にお一言ずついただいて終わりにしたいと思います。

周藤: ここ最近本当に山藤さん、フィルムコミッションの関係がすごく近くなりましたよね。

山藤: そうね。

周藤: 特にここのラインがめちゃくちゃ強くなったから、みんなも入ってきたのかもしれないけど、「ぐんまフィルムコミッション」もすごく一生懸命やっていただいているので、桐生にないな、じゃあ山藤さんに連絡するからちょっとアテンドしてあげてとか、そういうのをお互いに、そういう関係もとれるので、撮影場所があるってことを覚えておいていただいて。色々迷惑かける時も絶対あると思うんですよね。道路を止めちゃったりとか。そこらへんは寛大な心で見守っていただければと思います。ありがとうございました。

山藤: フィルムコミッションって、撮影隊と地域との緩衝材であり、通訳であり、コーディネーターでありっていうものだと思うんですよ。だからあまり前面に出ないようにってのはすごい気を付けているんですけど。バックアップをどこまで出来るかっていう事を考えながらやっているので一見すごい華やかな仕事に見られがちで、良い仕事してるねとは言われるんですけど、実は日雇い労働者みたいな事でやってますので、そこのところをね、若い人たちにも理解してもらって。今後の育成というか次世代に繋げていくような形で若い人を育てたいとは非常に思ってます。監督も含め俳優さんも含め信頼を損なわないように気を付けて日々生活していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

東:さっき言い忘れちゃったんですけど、『ほとぼりメルトサウンズ』っていう映画は桐生と東京と、あと高崎でも電気館の方で撮らせていただいて、すいませんお世話になって。色んな所を紹介していただきありがとうございました。繋がりっていうのを感じるなって、群馬で撮影してて思って、戸田さんの『散歩時間』で出てくるTシャツのデザインをやっていたりとか、手島さんが出ている『猫は逃げた』でもエンドロールのデザインをやっていたりとか。実は繋がりがたまたまあったりして。今日みなさんと話して繋がりを感じたのでまた群馬で映画撮れたら嬉しいなと思っていますので、見守っていただけたら嬉しいです。今日はありがとうございました。

戸田: コロナになってより、映画の未来が不安になっていってるなって業界全体が感じているなと思っていて。僕自身もそうなんですが、そういうわけにはいかないなと仲間たちとか映画業界で何とかしないといけないなとは思っていて。どんどんデジタルで、ある意味iPhoneでも作品作れるようになってきている分、教育にも入れていって欲しいなとか、ダンスも教育に入りましたけど、映像とか制作する表現するみたいなのがもう少し入っていくと映画だったり色んなことに対して興味を持ったり関わることが増えていくのかなとか考えたりして。なんとか映画人口を増やしていかなければいけないなと思いつつ、映画を絶やさないために作り続けなければいけないなと日々思っております。なかなか映画1本作るのも大変で色々な人の協力が本当に必要で人に迷惑をかけながら作っていくもんだなと思っている分、観ていただいた人に何か返していけたらなと、返していけるものだなとも思っています。群馬でもぜひ撮りたいなとは思っていまして、もっと色んな群馬の魅力を知っていけたら良いなと思っていますので、プライベートで草津も来たことあるんですけど、また来ようかなと思っていますのでご協力いただければと思います。よろしくお願いします。

手島: 私は俳優っていう仕事をしてるんですけど、お芝居を作品の中でして映画館で上映していただいてお客様とお話してっていうその一連の流れももちろんすごく好きなんですけど、俳優っていう立場でこういう機会をいただいて、色んな関係者の方だったり関係者じゃない方とこういう時間を持ってお話ができる。こういう機会をいただけるっていうのが同じくらい好きというか同じくらい自分の中でとても楽しい事なんですけど、毎回志尾さんに機会をいただいて本当にありがとうございます。今回のイベントなんですけど、前日から温泉に入らせていただいたりすごく良いなと思えるイベントでした。今後も群馬の魅力を色々お伝えできるように俳優という立場で頑張ってまいりますので、応援していただけると嬉しいです。ありがとうございました。

志尾: それではですね、「映画の湯へいらっしゃい」の第二部の「熱源の湯」をこれで終了させていただきます。ありがとうございました。

  第1部登壇者と合同の記念写真

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ライター: 合同会社岡安映像デザイン 岡安 賢一

群馬県中之条町生まれ・在住。日本映画学校映像ジャーナルゼミ卒。伊参スタジオ映画祭実行委員長。群馬県の「ぐんま狩猟フェスティバル」のドキュメンタリー映像や、中之条ビエンナーレの映像アーカイブ等に関わり、デザインやライティングも行う。https://note.com/oka

撮影: 薄井 良隆

群馬県草津温泉に在る「ミヤマ写真館」の次男として生まれる。小学校でスキージャンプと出会い、大学卒業までノルディック複合の選手として過ごす。その後写真館業の傍ら「café Uusi」をオープン、数年間の海外放浪、旅館経営を経てフリーカメラマンとして現在に至る。

登壇者

志尾 睦子 NPO 法人たかさきコミュニティシネマ 代表理事/シネマテークたかさき総支配人/高崎フィルム・コミッション代表/高崎映画祭プロデューサー/一般社団法人コミュニティシネマセンター 理事

大学在学中に高崎映画祭ボランティア活動に参加する。2004年NPO法人たかさきコミュニティシネマの設立に関わり、群馬県内初のミニシアター、シネマテークたかさきを開館。支配人となる。2008年前代表の逝去に伴い、後を受け継ぐ形で現職となる。

山藤 堅志 高崎フィルム・コミッション

第20回高崎映画祭よりボランティアスタッフとして参加、映画業界の仕組みを学ぶ。2014年FC業務移管を機に、会社員を辞め高崎フィルム・コミッションの専属となり以後毎年50本以上の撮影支援をおこなっている。

戸田 彬弘 映画監督/脚本家/演出家

チーズfilm代表取締役。チーズtheater主宰。

代表作は「名前」「13月の女の子」「僕たちは変わらない朝を迎える」などがあり、国内外の映画祭で受賞。映画「散歩時間〜その日を待ちながら〜」が22年12月9日より劇場公開。

手島 実優 女優/モデル

1997年生まれ。群馬県出身。2019年度キネマ旬報新⼈⼥優賞ノミネート。インド・マドラスインディペンデント映画祭最優秀主演⼥優賞受賞。映画や舞台、CMなど幅広く活躍。

東 かほり グラフィックデザイナー/映画監督

監督作『湯沸かしサナ子、29歳』第9回きりゅう映画祭グランプリを受賞。初長編映画『ほとぼりメルトサウンズ』は、第17回大阪アジアン映画祭、第22回ニッポン・コネクション、第14回ソウル国際シニア映画祭(韓国)、第6回JAPANNUALに選出。

周藤 史朗 わたらせフィルムコミッション

桐生市出身・在住。わたらせフィルムコミッションの代表を務める。