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「U19eスポーツ選手権 2021」レポート&プロインタビュー
学校の枠にとらわれず、19歳以下の国内最強チームを決定する「U19eスポーツ選手権」。2021年11月14日に、「U19eスポーツ選手権 2021」決勝大会が開催されました。まずは当日のレポートをご覧ください。
会場となったのは、去年に引き続き群馬コンベンションセンター「Gメッセ群馬」。ゲームタイトルは、世界のプレイ人口が1億人を超える「リーグ・オブ・レジェンド(通称LoL)」。
マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)と呼ばれる5人vs5人の対戦型PCゲームで、それぞれのプレイヤーが「チャンピオン(=キャラクター)」を操作して相手陣地の攻略を競うものです。1試合にかかる時間は平均30分程度といわれており、比較的長時間の試合の中で連携を取りながらバトルを進めていきます。
大会への参加資格は13歳〜19歳であることのみで、学校の枠にとらわれない自由なチーム編成が可能。総勢71チームの中から勝ち進んだ精鋭のプレイヤーたちが、この日のために日本全国から集結します。
司会を務めるのは、eスポーツキャスターの岸大河氏。自身もFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム:一人称視点のシューティングゲーム)を得意とするeスポーツプレイヤーであり、数々の大会でタイトルを獲得してこられました。
今回決勝大会に勝ち進んだのは、「スターダスト田村」と「OTP」の2チーム。「スターダスト田村」には去年の優勝チーム「KGP N1」のメンバーだったvann選手ともんちゅい選手、準優勝チーム「Pi-Po-DA!YOEEOOOON!Gaming」のメンバーだったrre選手とshakespeare選手の姿もありました。
また、試合の様子はYouTubeライブにて生配信。eyes氏の実況とRevol氏の解説のもと、多くの視聴者が勝負の行く末を見届けます。
両チームともに、まずは全プレイヤーが「チャンピオン」というキャラクターを選びます。LoLには150種類以上のチャンピオンが存在し、それぞれ異なる能力や技を持つ、要素の多いゲーム。この試合開始前の選択から戦略が始まっていると言っても過言ではありません。
LoLの勝利条件は、相手陣地の本拠地にある「ネクサス」というオブジェクトを破壊すること。1試合は約30分間にも及びますが、一瞬も目を離せないスピーディーな展開もLoLの特徴のひとつです。高等なテクニックと判断のもと連続で相手キャラクターを撃破する瞬間はライブ配信のコメント欄にも書き込みがあるなど、大きく盛り上がっていました。
両チームともに、真剣な表情で試合に集中。ゲーム内でのプレイヤーの視界は非常に狭いため、仲間とボイスチャットで連携を取りながら相手の裏をかいたり意表をついたりすることも重要です。
大会は陣営カラーを入れ替えながら最大3試合、2試合先取で勝敗が決まります。
長い戦いの末、「U19eスポーツ選手権 2021」決勝大会の勝利をおさめたのは「スターダスト田村」!
「OTP」も健闘しましたが、後半に生まれた隙を突いて囲むようにして有利を取った「スターダスト田村」に軍配が上がりました。
優勝チームには、山本知事から優勝メダルとブーケが授与され、副賞としてゲーミンググッズ・ファッションを展開する「RAZER」「GRAPHT」製品30万円相当、ゲーミングチェア「STRIKER」とツーリスト旅行券2万円相当が全員に贈られました。
また、各チームで最も印象に残ったプレイヤーに贈られるMIP賞について、「スターダスト田村」からは、献身的なプレーでチームの有利を広げたrre選手に贈呈。ゲーミングモニターの「ギガクリスタ」が贈られました。
最後は、「スターダスト田村」チームリーダー、shakespeare選手の言葉で選手権は締めくくられました。
「去年もrre選手とともにこの大会に出場し、たくさん練習してきたのですが準優勝に終わってしまいました。だからこそ、今年はこのメンバーで優勝できて嬉しかったです」
19歳以下の頂点を決める、U19eスポーツ選手権。実際の大会の様子はYouTubeでアーカイブ配信されていますので、ぜひご覧ください。
インタビュー:選手から見た「群馬とeスポーツ」
またこの度、今大会に取材に来ていた、前年の「第1回 U19eスポーツ選手権」の優勝チーム「KGP N1」のチームリーダーぷりも氏と、友人でeスポーツプレイヤーのMarimo氏にインタビューを実施しました。ぷりも氏は前年の大会を経て、現在はプロチームへ所属して活動しています。
若者にとって、またプロのeスポーツ選手にとって、この選手権はどのような意味を持つ大会なのでしょうか。
-プロになった決め手は?
ぷりも氏 もともとプロになろうと思ってゲームを始めたわけではないんです。ゲームで遊んでいるうちに大会へ出場させていただけた経験があり、それをきっかけにプロの道を考え出しました。
実は、プレイヤーとして活動する中で「自分なんかがプロになれるのかな」という不安も大きくなってきて、少し前のインタビューでは「プロになるか分からない」と答えたこともありました。
でも、U19eスポーツ選手権などの大きな大会に出るようになり、知名度もついてきたタイミングで、LoL国内リーグ「League of Legends Japan League(通称:LJL)」の「アカデミーリーグ」が誕生し、あるチームからお話をいただき、プロになったという次第です。
-去年の選手権はどうでしたか?
ぷりも氏 「U19eスポーツ選手権」という目的があったからこそ集中的に練習し、成長することができたと思っています。また、このような大会がなければもともと縁のない群馬県に来ることはなかったので、群馬に来る機会になって嬉しいですね。今回も2日前に群馬に入って、草津温泉を楽しみました。
-「U19eスポーツ選手権」という大会について、どう思いますか?
ぷりも氏 大会としての規模がすごく大きいですよね。今回は無観客ということで寂しいですけど、会場もかなり広いですし。音や光の演出もこだわっているなと感じました。また特に驚いたのは、賞品の多さですかね。たくさんのゲーミング製品に加えて旅行券などもあり、地域と業界が一緒になって盛り上げようとしていることが伝わってきました。
Marimo氏 スポンサー企業もすごく多いですよね。他の大会は企業が母体になることが多いので、企業名がズラっと並ぶことってあんまりないんです。県が主体になるからこそ多くの人が関わることができると思いますし、「みんなでeスポーツを盛り上げたい」という一体感を感じました。
-群馬のeスポーツ環境の課題はなんでしょうか?
ぷりも氏 仕方のないことですが、立地の問題はありますね。もろもろの施設が駅から遠いので、県外からの参加に若干ハードルがあるように感じています。また、eスポーツプレイヤーは深夜帯に活動する人も多いので、やはり時間を気にせずにプレイできる場所が増えたら良いなと思います。
-将来はどのようなキャリアを目指していますか?
ぷりも氏 まだ具体的に決まっているわけではないんですけど、これからも仕事としてeスポーツに携わっていたいと思っています。選手、コーチ、裏方、またはeスポーツを学べる学校の先生かもしれないですが、プレイするだけでなく色々な現場に足を運んで、eスポーツに関係することを学んでいきたいです。
-eスポーツの現状と未来について、どのように考えていますか?
ぷりも氏 日本のeスポーツプレイヤーは海外に比べて入れ替わりが少なく、少数の選手がずっと第一線で活躍しつづけている現状があるので、若い選手が育つ環境を整えて新しいプレイヤーを発掘していく必要があると思います。
そして、そんな環境を作るためには、姿勢を変えていかなければいけないですよね。まだまだ出る杭は打たれるというか、日本全体として新しいものや人に対して抵抗がある気がしています。
Marimo氏 「サラリーマンになったら将来こうなるよ」っていうのは学校や周りの大人が教えてくれると思うんですけど、eスポーツに関わっていったらどうなるのかは、まだ選択肢として確立されていないから誰も知らないんですよね。
楽しむためにゲームすることに関しては理解が広がっているとしても、プロとしてeスポーツを生業にすることへの理解はまだまだ、という印象です。
ぷりも氏 海外ではeスポーツに関する経済体系ができていますが、日本ではトッププロ以外がeスポーツの活動だけで生活していくのは難しいんですよね。ですから、eスポーツ選手がお金を得られる方法として、「賞金」以外のものが増えるといいですね。
Marimo氏 たとえばスポンサー収入や動画・ライブ配信などが分かりやすいですが、いろんな施設で子どもたちにゲームをレクチャーすることなども考えられますね。子どもたちにとっては家と学校以外の居場所になりますし、選手が地域と関わるきっかけにもなるんじゃないでしょうか。
-「群馬県×eスポーツについて」最後に一言ずつお願いします。
ぷりも氏 僕としては、ここまで県としてeスポーツを盛り上げようとしてくれているところは少ないと思うので、今後も「U19eスポーツ選手権」に限らずに選手の活躍の場を増やしてくれたら嬉しいですね。
Marimo氏 僕もそう思います。群馬県のeスポーツは間違いなく盛り上がっていると思うので、今はとにかく色々な「入り口」を作ることが大切なのかなと思っています。