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【いのちのフォーラム2限目】子どもを健やかに育むために

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夫婦で実現する子育てと仕事の両立

看護師・助産師の資格を持つNPO法人「きびる」代表・野口和恵さんをナビゲーターに迎え、3回シリーズで妊娠・出産・育児と自分らしい生き方の両立について考える『いのちのフォーラム』。

2限目のテーマは「はぐくむ」です。子育ては夫婦にとっての一大事業。特に子育てと仕事の両立には、夫婦の協力が不可欠です。そこで野口さんに産後の女性に起こる心身の変化を踏まえ、育児休業から職場復帰に向けての心構えと、男性の育休取得のポイントについて講義していただきました。

野口さんのプロフィールはこちら

Contents

▼職場復帰に向けての心構え
覚悟しておきたい保育園・幼稚園の「洗礼」
慣らし復職期を設定しよう。
限られた時間でも親子の絆は育つ

▼男性の育休取得のポイント
育休は労働者の権利
育休取得におすすめのタイミングとメリット
育休が取りづらい人は
お互いの思いやりで産後クライシスを回避

職場復帰に向けての心構え

子どもの体調不良に悩まされたり、生活のリズムが掴めなかったり。育休明けのママはさまざまな壁に直面します。できるだけスムーズに職場復帰するために、準備しておきたい心構えについてお伝えします。準備万端に整えたつもりでも思い通りにいくとは限りません。あまり気負わず、「なんとかなる」くらいの気持ちでいましょう。

◆覚悟しておきたい保育園・幼稚園の「洗礼」

保育園や幼稚園で初めて集団生活を経験する子どもは免疫力が弱いため、入園するとさまざまなウイルスにさらされ頻繁に熱を出します。
私の娘も毎週のように熱を出し、ほとんど通えない日が続きました。欠勤や早退が重なって、周りの人に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自分はまともに仕事をすることはできないんじゃないかと精神的に追い詰められました。

しかし、「洗礼」は子どもが免疫をつけるための通過儀礼です。何度も風邪を繰り返す内に免疫力が強くなり、風邪をひく頻度は徐々に減ってきますのでご心配なく。「必ず通る道」と心得て、準備をしておくことが大切です。

(1)お迎えルートを夫婦で話し合っておこう
園から急な呼び出しがかかった場合、お迎えをどうするか夫婦で話し合っておきましょう。私は夫を休ませるという感覚がなく、自分しかいないと勝手に抱え込んでいました。今思うと、どうして夫に頼らなかったんだろうと不思議でなりません。

夫婦だけで対応するのは難しい場合もあるので、頼れる選択肢をできるだけ増やしておきましょう。祖父母は頼りやすい一方で、子育ての価値観の違いがストレスやトラブルの原因になることもあります。

(2)「ファミリーサポート制度」・「病児・病後児保育」に登録しておこう。
急な呼び出しに対応できない、何日も続けて仕事を休めないという時に役立つのが「ファミリーサポート制度」と「病児・病後児保育」です。利用方法や料金は市町村によって異なりますが、事前に登録が必要なところが多いので、あらかじめ確認し、登録しておきましょう。

【ファミリーサポート制度】
育児の援助を受けたい人と援助したい人を結ぶ助け合いのシステム。子どもの送迎や預かりなどのサポートが受けられます。 群馬県内では18市町村で実施しています。(令和4年3月現在)
https://smilelife.pref.gunma.jp/childrearing/famisapo/

【病児・病後児保育】
発熱や病気になった子どもを仕事などの都合で看護できない場合、医療機関や保育園に併設された施設でお世話をしてくれるサービスです。病気中の子どもを預かる「病児保育」、回復期にある子どもを預かる「病後児保育」があります。
群馬県内では病児保育は7市、病後児保育は11市町村で実施しています。(令和4年3月現在)https://smilelife.pref.gunma.jp/childrearing/facilities/

(3)洗礼を浴びたときは
子どもの体調が思わしくない日は、潔く園を休ませる判断も必要です。前日夜に発熱した場合、朝になって熱が下がったからと保育園に預けると、午後になって再び発熱してしまうことも。潔く休んだ方が仕事中にやきもきすることもなく、子どもの治りも早くなります。

◆慣らし復職期を設定しよう

子どもに「慣らし保育」が必要なように、ママにも「慣らし復職」が必要です。私は長女を出産後10ヶ月でいきなり全力モードで復帰したため、心身ともに落ち込むことがありました。半年くらいはペースをつかむための期間と捉え、まずは週●日、1日●時間までと決めて少しずつ慣らしていくと良いでしょう。
家事も無理をせず、ママの体を休めることを最優先に考えて。お惣菜や家事代行サービスをうまく活用しましょう。このタイミングでパパが育休を取るのもオススメです。

◆限られた時間でも親子の絆は育つ

子どもを保育園に預けて働くことに、ちょっとした後ろめたさを感じてしまうママは少なくありません。「仕事に復帰したら、子どもと触れ合う時間が少なくなってしまうのでは?」と不安になる人もいるでしょう。

私は帰宅後15分は家事をせず、子どもと触れ合う時間と決めていました。お風呂の準備や食事の支度など気になることはたくさんありますが、帰宅後のルーティンの中にあえて“何もしない”時間を作っておくのです。

ハグをしたり、母乳をあげたり、スキンシップをとるとママと子どもの両方の脳内に「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。別名「愛情ホルモン」とも呼ばれる物質で、仕事で疲れたママにとっては癒しや英気となり、子どもにとっては心の栄養補給になります。短くても濃密な親子時間を過ごすことで、絆はしっかりと育まれていきますのでご安心を。

男性の育児休業取得のポイント

◆育休は労働者の権利

男性の育児休業取得率は2020年に過去最高の12.7%を記録しました。(2020年厚生労働省 雇用均等基本調査)。女性の育休取得率81.6%に比べるとまだまだ差がありますが、今年4月から段階的に施行される「改正育児・介護休業法」では育休を取得しやすい環境整備が企業に義務化され、「産後パパ育休」が新設される(10月より施行)など、男性の育休取得が進むことが期待されます。

「専業主婦だから家事・育児はママにおまかせ」と言う人もいますが、心身の不調を起こしやすい産後は仕事の有無に関わらずパパのサポートが必要です。育休は国が定めた労働者の権利であり、ママが育休中や専業主婦であっても取得できます。

まずは育児休業の制度について正しく理解し、前向きに検討してみましょう。

◆育休取得におすすめのタイミングとメリット

いつ、どのくらいの期間、休みを取れば良いかは、それぞれの家庭や会社の事情によって異なります。「育休を取得した」ことだけで満足してしまう人もいますが、ママがサポートを必要とするタイミングからずれていたり、ただ仕事を休んでいるだけでは、かえってママに負担をかけることにもなりかねません。夫婦で育休を取得する時期や役割分担についてよく話し合い、会社にも早めに相談しておくと良いでしょう。

パパが育休を取るのに特におすすめのタイミングとメリットを紹介します。

(1)出産直後(出生〜8週間)

出産は全治一ヶ月の交通事故に例えられるほど、女性の身体に大きなダメージを与えます。出産後、悪露(子宮内に溜まった血液や分泌物など)の排出がおさまり、子宮の状態やホルモンバランスが妊娠前の状態に回復するまで6~8週間かかります。産後うつのリスクが高い時期でもあります。育児や家事も決して無理をせず、特に退院後2週間は、赤ちゃんが眠っている時にはママも横になり体を休めることを意識してください。

冷えや疲労は産後の回復を鈍くするため、食事の準備や後片付け、洗濯など水回りの仕事は積極的にパパに引き受けて欲しいもの。赤ちゃんのお世話はどうしてもママに比重が重くかかるため、上の子のお世話はパパの出番です。

また、出生後は出生届や出産一時金、健康保険加入など、様々な届け出や手続きが必要となります。こちらもパパが担当してくれるとママは助かります。

メリット
1.母体回復時期にママをサポートできる
2.産後うつの抑制につながる
3.出生に伴う手続きを任せられる
4.新生児のかわいさとお世話の大変さを肌で感じることができる
5.産後8週間は、通常の育休とは別枠で「産後パパ育休」(2022年10月〜)の取得が可能。

(2)ママの職場復帰前後(1歳〜1歳2ヶ月)

出産直後に育休を取る人は多いですが、実は最もパパのサポートが必要なのは、ママが復職する時期です。久々の職場復帰には体力も気力も必要とされるため、パパが育休を取ってくれればママは仕事に集中でき、預けられる時間が短い「慣らし保育」や、入園後の洗礼にも対応できます。

できれば職場復帰の少し前から育休を取ってもらえるとママは助かります。復職に向けては子どもの入園準備だけに目が行きがちですが、ママにも心と体の準備が必要。産後は髪の成長を促進する女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減少し、授乳や育児による睡眠不足やストレスも加わって、多くのママがびっくりするくらいの抜け毛を経験します。また妊娠中や産後はホルモンバランスの変化や生活習慣の変化によってむし歯や歯周病になるリスクも高くなります。子育て中はついつい自分のことが後回しになりがち。復職すればさらに時間を取りづらくなります。このタイミングでパパに育児や家事を任せることができれば、ママは美容室や歯医者など復職に向けてのメンテナンスに時間を取ることができます。

私は復職まで娘とべったり過ごしていたため、入園後に私以外からの食事が進まず苦労しました。ママ以外の人からミルクを飲ませてもらったり、離乳食を食べさせてもらう練習をしておくのがおすすめです。ママと離れる時間を増やすことで卒乳がスムーズにいきやすいというメリットもあります。

メリット
1.ママの復職に向けてメンテナンスや準備ができる
2.慣らし保育や入園後の洗礼に対応できる
3.ママから離れる練習をすることで入園後の生活がスムーズにいきやすい。
4.ママが久しぶりの仕事に集中できる
5.夫婦で子育てと仕事の両立について実践しながら考えることができる

◆育休が取りづらい人は

人手不足で会社の業務が大変、収入が減少してしまうなどの理由で、育休を取りたくても難しい人もいるでしょう。私は育休をとることがすべてだとは思いません。

たとえ両立支援制度を使わなくても。有給休暇や時差出勤、時短勤務などをやりくりしてママをサポートすることは可能です。会社にどのような制度が設けられているのかを確認しておきましょう。

育児休業は原則として休業開始の1か月前に申請が必要ですが、有給休暇であれば比較的柔軟に対応できます。子どもが体調を崩した時やママが疲れているなと感じた時、保育園の見学、出産を機に退社したママの就職活動の際には休暇をとると良いでしょう。

◆お互いの思いやりで産後クライシスを回避

最近よく耳にする「産後クライシス」は、出産を機にお互いへの愛情が落ち込み夫婦仲が悪化する現象のことを言います。
産後クライシスを回避するためには、お互いを思いやる気持ちと、夫婦の会話が必要です。

産後はホルモンの影響で気分が落ち込んだり、怒りっぽくなったりと情緒不安定になりがち。「母親になってから怖くなった」と嘆くパパも多いですが、女性が変わったのではなく「お腹の中で赤ちゃんを守りはぐくむ身体」から「母乳を出し赤ちゃんを育てる身体」に急激にホルモンが変化したからです。ママがイライラしていても、「ホルモンの変化によるもの」と目をつぶり、よく話を聞いてあげてください。ママもパパの家事が普段のやり方と少し違っても、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。

子育ては大変ですが、夫婦で協力して取り組むことによって絆が強まり、より良い家族関係を築くことができます。

「いのちのフォーラム」第3限目は「いきる」をテーマに、女性特有の健康課題についてお話ししていただきます。

(ライター:林 道子)